貴方とはお好みが合致しないようなので

宇和マチカ

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ちょっとだけ驚愕の事実

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「か、帰ったあ!? じ、じい! 本当に本当なの!? ドッキリサプライズでそこの棚から出てくるとか!」
「有りませんなお嬢様。世話になったと出て行きました」 

 あの婚約者親子という鬼共と対峙するという悍ましい苦行の後、せめてロベルト様のご尊顔を拝見して心を浄化しようと思っていたのに……。
 お怪我の具合が有るから、チラ見で我慢しようとしていたのに!

「あ、あの大怪我でどうして……」
「総出でお止めしたんですが、未婚の令嬢の家にオレのような者がいると名誉が損なわれるし、迷惑は掛かるからと」
「それに、力付くでお止めすると縫ったお怪我が開きますし」

 なんって……紳士!
 物心付いてから、私の名誉とか一切気遣われた事ないわよ! あ、使用人以外! 親にすら気遣われた事多分無いわ!
 何なのよ、私の周りの奴等は……。

「あのロナルド・オヤブロー殿は心根の良いお方ですな」
「まあ、じいもそう思う?」

 厳しい執事長のじいに其処まで言わせるとは、流石私の推し俳優。偉大だわ。偉大すぎますわ。

「まあ、それなりの弁えた青年なようです。
 あの小童と大して歳は変わらんと言うのに」
「……ん? あの小童って誰?」
「ヤヤッカラの四男坊ですよ」

 ……待って。
 ヤヤッカラの四男……つまり私の憎き婚約者。
 さっきまで対峙していた割に、滅茶苦茶他人事面してやがった諸悪の根源かつ怨敵よね?
 あの野郎、私の一つ上……19歳だった筈。
 普通はもう少し早く結婚させられる悲劇だったんだけれど、あの野郎の不甲斐なさは、世界一レベルでしょう?
 瑕疵を見つける為、粘って粘って粘って結婚を引き延ばした甲斐が有ったというものよ。瑕疵は見つからないけれど見つけてみせるわ!
 ……じゃなくてよ。

「まさか、……あのご尊顔で、19歳なの?」
「苦労が祟って老けたようです。境遇も少し聞きましたが、中々の若者ですぞ」
「ななな……」

 じいの方が私より詳しいとか何故! そして滅茶苦茶お労しいエピソード持ちとか!
 悲劇のヒーローを地で行っておられたなんて!

「でも、ボロッサムの公式年齢は32歳だったわ!」

 だからついオッサンとか呼んでしまったけれど、愛情込めた方の呼び方なの……! でも失礼千万だったわ! 今度から素敵紳士とお呼びしなくては。

「サバ読みで御座いますよ、お嬢様」
「普通は若い方にサバ読みするのではないの?」

 前に歌劇で50代の貴婦人がイケメン風味に恋をして、38歳にサバ読みしてアタックした歌劇を観たけれど……。
 アレは中々仰天なチェンジ具合だったわね。女優の施されていた老けメイクって凄いわ。

「あ、老けメイク!」
「劇場ではそうでしょうが、血を拭えばまあまあ幼い顔をしておりましたぞ。
 お嬢様はテンパっておられて、あまり顔を見ておられないようですが」
「幾つでもいいけれど、好き過ぎてガン見出来なかったのよ。乙女心ね……」

 使用人一同、そんな残念そうな目で眺めないで欲しいわ。

「それに、あの怪我では動くのも不自由でしょう」
「執事長、行倒れたお客人を連れ帰ってきました」
「ぎゃあボロッサム! じゃないロベルト様!」

 担架に乗せられたロベルト様から、また! 顔からダラダラ血が吹き出ている!

「何で止めないのよおおお! 滅茶苦茶重症じゃないのよおおお!」
「同世代の美しい女性に庇われて照れ臭くなったのでしょう。青臭い男心で御座いますよ」
「カッコつけたいお年頃なんですよ、お嬢様」

 従僕達までウンウン頷いてるけど、其処は止めなさいよ!
 ああ、突然ヤヤッカラなんかが訪ねてきたからよ! 厄日だわ!

「しかし、何故ヤヤッカラ家はお嬢様が此方に居られることをご存知なのですかね」
「……それはそうね」

 親戚にすら特に何も言わず、タウンハウスへ来たのに……。
 本来ならお父様を放り込んで仕事をさせる予定だったもの。埒が明かないから私が来たけれど。

「あの家、ケチな癖に間諜が居るのかしら……」
「婚約破棄の危機ですからな。揉み消しついでに雇ったのかもしれません」

 ……兎に角、何とかしてあの輩が複数と浮気してる現場を押さえないと……。
 早く推し俳優にアプローチ出来ないじゃない! 何で向こうが浮気してるのにこっちが儘ならないのよ! メンツって大嫌い!



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