宵月の手紙

浅葱 絢瑪

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愛する誰かのために

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『今より何千年も前。

私達は地球離れ、それぞれの惑星に移り住みました。

例えどんな国の出身であれ、性別が何であっても自分が住む惑星を各々で決めたのです。

かつての友達や親族と離れ、寂しい思いをする人々を繋ぐために配達屋が現れました。

彼らは今、様々な星の海の中で誰かの想いを届けるために走り続けていますーー』


何度も聞いたことのあるお話。

何度も母から聞かせてくれたのだ。

時折帰ってくる父の背を見て、自分もまた配達屋になりたいと願った。


何年も経って、あの日願った配達屋になった。いつしか結婚し、愛娘もできた。それでも全てを掴みたいがために、仕事も精を出した。

仕事で暗闇の世界を照らす星屑の中で散りばめられた想いを繋ぐ。
手紙を、言葉を、そして想いを受け取った人々の微笑んだ顔を見ては心が満たされる。

もちろん落ち込むこと、嫌なことは当然ある。でも、その分家族という存在に助けられるのだ。

「ただいま」と言えば、「おかえり」と温かく出迎えてくれる。「パパ」と駆け寄ってくるまだ幼い娘。大好きだと微笑む妻。

やりがいもあり大好きな仕事ではある。だが、仕事に行ってしまえば当分帰れないのもあり、早く家族に帰りたいと常々思っているのだ。


そんなある日、一旦受け持っていた仕事が終わり、本社に戻っては同僚から話しかけられる。

「誠人、お前に手紙届いてんぞ。しかも奥さんと娘さんから。はい、どうぞ」
手渡しで渡され、自分宛てであることを確認する。
「…ありがとう」
何かと職場の方に妻や娘から手紙を送られてくることは初めてなのだ。

急いで封を開ける。開ければ、娘が描いた自分の似顔絵と娘と妻が書いた手紙が入っていた。

しばらく手紙に目を通す。何度も何度も読み直し、全て封の中に入れる。

「……家に帰る」
「えっ、ちょっとー?仕事は~?」
「また後でやる」
「…し、仕事多いのに……?」

それは重々分かっているのだが、手紙を見てしまっては今のままで仕事をしたら確実に足手まといになる。

黙々と帰る用意をする自分に痺れを切らしたのか、その場にいた他の配達員も色々言ってくれる。
「それならもう、一日休め!」
「俺らで仕事を回しとくから」
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