王の剣(つるぎ) 〜冷血の雪姫と呼ばれるドS王女に首輪を付けられた主人公の逆転譚〜

リッキー

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燈の婚約者 雲丹亀玄静登場

いざ闘技場へ その4

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 森山を抱えてやってきた応接室は趣味全開の場長室と違い、レトロで落ち着いた雰囲気があった。
 

 部屋の中央にある応接用のソファに森山を寝かせ、その隣に座ってから宗次郎は部屋を見渡した。壁は一面に手触りを確かめたくなるような灰色、床にはえんじ色の絨毯が敷かれ、いくつかの間しきりが置かれていた。


 何より目立つのは壁に所狭しと並べられた本棚だった。ぎっしりと書架が詰まっていて芸術的になっている。


 執務室も兼ねているのか曇りガラスのそばにはデスクが置いてあり、トレーには書類の山が積まれている。


 ━━━最初からこの部屋に集まればよかったじゃないか。


 ギャップによる疲労感が宗次郎の両肩にずっしりとのしかかった。


「疲れてるみたいね。大丈夫?」


「この……」

 
目の前に座っている確信犯|《燈》は悪戯っぽく笑っている。


「知っていたのなら先に言ってくれよ」


「あら、扉の向こうにはSMに彩られた官能の世界があるって言えば伝わったのかしら」


「……むりだな。うん」


 宗次郎は諦めのため息を吐いた。


「椎菜は三塔学院にいたときのルームメイトだったの。ストレスがたまるとああして発散してたわ。今はその権限をいいことに敗北した剣闘士で楽しんでいるみたい」


「あっそう」


 そんな情報を知らせてどうしろというのだろうか。


「お待たせいたしました」


 程なくしてノック音が響き、椎奈がやってきた。


 長かった黒髪は頭の後ろで結い上げられている。衣服もテカテカしたボンデージ服から小豆色の着物に変わっており、丸メガネと相まって品の良さが伺えた。


 ━━━別人じゃないか。


 大和撫子を絵に描いたような女性だった。とてもじゃないが拷問部屋で男をしばき上げていた人と同一人物には見えない。


「第二王女殿下。お久しぶりでございます。学院時代から益々の壮健ぶり、何よりでございます」


「椎菜殿こそ、さらにお綺麗になられたようで。闘技場の盛況ぶりは王城にも轟いておりますわ」


 椎菜と燈は互いににこやかな笑顔を浮かべて、礼を尽くす。


 それが上っ面な茶番であることは側から見ていた宗次郎にもわかった。


「あなたが宗次郎殿ですね。お噂はかねがね。お会いできて光栄でございます」


「は、はぁ。どうも」


 ━━━ついてけねぇぜ、俺。


 お淑やかに頭を下げる椎菜に腰が引ける宗次郎。


「椎菜。もう猫被らなくていいわよ」


「なんだ、もういいのか」


 あーかったるい、と背伸びをする椎菜。


「驚いただろう。ああ、座っていてくれて大丈夫さ」


 棒立ちになっている宗次郎を制して、椎菜はデスクにある椅子に座った。


「私がこの剣爛闘技場を預かる中津椎菜だ。気軽に場長と呼んでくれ。敬語も結構だ」


「……初めまして。穂積宗次郎だ。宗次郎と呼んでほしい」


 ペコリと下げた頭を上げると、椎奈は宗次郎の隣にある木箱に熱い視線を注いでいた。


「それが、例のものか」


「あぁ。天斬剣だ」


 ほう、と椎菜は顔を綻ばせた。


「やはり持つべきものは友だな。こんな逸材を連れてきてくれるとは」


「気にする必要はないわ。こちらの得にもなるから」


 女性同士でにっこりと笑ったあと、椎菜は宗次郎に向き直った。


「宗次郎、君には二週間後に行われる武芸大会に参加してもらう」


 歓迎するよ、と椎菜は宗次郎の今後を告げた。

 
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