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【01】連合から来た男
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「……何だ?」
〈ワイバーン〉専用画面を見ていたアーウィンが、ふと訝しげに呟いた。
「どうした?」
ヴォルフが訊ねると、スクリーンからは目を離さずに答える。
「〈ワイバーン〉が急に旋回した」
「何か、そうしなきゃならない理由があったんだろ」
「理由……」
「それより、あっちの旗艦のほうはどうするんだよ? おまえ、こっちに夢中で、全然指示してないだろうが」
「今さら私の指示など必要か? 〝全艦殲滅〟。それ以外ない」
「それはそうだが……」
なおもヴォルフは小言を続けようとしたが、急にアーウィンが艦長席から身を乗り出した。
「今度はどうした?」
「〈ワイバーン〉が……」
「え?」
言われてスクリーンを見れば、〈ワイバーン〉が無人砲撃艦を撃ち落とすことができずに、逆に砲撃を受けはじめていた。
「ついに力尽きたか……」
ヴォルフは当然の結果だと思ったが、アーウィンは納得しかねるように眉をひそめている。
「おかしい」
「何が? どだい軍艦一隻で、無人艦一〇〇〇隻撃ち落とすことなんか不可能だろ。おかしいと思うおまえのほうが俺にはおかしく思えるぞ」
「あのとき急旋回などしなければわからなかった。……ブラッドリー少尉。あのときの映像を解析してくれ」
「は、はい!」
いきなり命じられて、ブラッドリー――赤毛を短くカットしている、ブリッジ唯一の女性クルー――は裏返った声を上げたが、すぐに解析作業を始めた。
普段、アーウィンはブリッジクルーに命令はほとんどしない。今回はキャルが遠隔操作中だから、ブラッドリーの手を借りることにしたのだろう。
無人砲撃艦の集中砲火を浴びて、〈ワイバーン〉が小規模な爆発を繰り返していた。
それを見つめながら、アーウィンが独語する。
「〈ワイバーン〉が……沈む……」
この軍艦一隻のために、無人砲撃艦の大半を失った。だが、アーウィンのその声には、まるで自分の船をなくしたかのような、哀惜に似たものが含まれていた。
「殿下、解析終わりました」
明らかに緊張した様子で、ブラッドリーがアーウィンを振り返る。
「お手元の端末に表示いたしますのでご覧ください」
「うむ」
「攻撃を続けながら旋回していますのでわかりにくいですが、右舷後方からレーザー砲撃を受けています。それを回避しようとして左舷に急速旋回したものと思われます。直撃は免れましたが、船体後尾に若干の損傷を受けています」
「いったい何者が? 位置的に我々の艦艇ではないな」
「おそらくですが……『連合』の艦艇ではないかと」
「……なるほど。わかった。ご苦労だった」
「え、いえ」
滅多にかけられない労いの言葉にブラッドリーは赤くなったが、アーウィンは彼女を一顧だにしなかった。それに不安を覚えたのか、視線でヴォルフを呼び、小声で訊ねてくる。
「ヴォルフ様……もしかして、殿下、怒ってらっしゃいます?」
「ああ……何というか……自分の気に入りのおもちゃを壊されて、むしゃくしゃしてる感じだな……」
「まさかそんな、子供みたいな」
「一見冷静沈着なように見えるが、中身は案外子供だ。これから何をするつもりなのかもわかる」
「え、何ですか?」
ブラッドリーの問いに、ヴォルフは苦々しく答えた。
「おもちゃを壊した相手を壊すんだ」
「キャル」
〈フラガラック〉専属オペレータの名を、アーウィンは冷ややかに呼んだ。
「はい、マスター」
遠隔操作中でも、キャルはすぐに応じた。
「この状況にもう飽きた。一気に片をつける。粒子砲で全艦殲滅しろ」
「先ほど〈ワイバーン〉から脱出艇が二隻脱出しましたが、そちらもですか?」
それを聞いて、アーウィンの口元がかすかにゆるむ。
「それは見逃してやれ。あの男に敬意を表して」
「承知しました。有人艦を強制撤収します」
「わかった。……やれ」
「はい、マスター」
従順にキャルが答えた。同時に〈フラガラック〉の粒子砲列は「連合」軍に照準を合わせた。
* * *
副官から〈ワイバーン〉と共にドレイクが戦死したとの報告を受けたとき、モアは自分が撤退するタイミングを逸してしまったことにようやく気づいた。
「帝国」はなぜか〈ワイバーン〉だけに砲撃艦を集中させていた。突撃艦よりも砲撃艦のほうがはるかに厄介だ。〈ワイバーン〉が砲撃艦を引きつけている間に、モアは何とか艦隊を立て直して撤退すればよかったのだ。しかし、ドレイクが死ぬまではというこだわりが、彼をこの戦場に留まらせてしまった。
「提督。……撤退を」
幾度となく繰り返した進言を、副官はまた口にした。
そう、あの男はもう死んだのだ。ここで自分が生きて帰れなかったら、本末転倒だ。
「わかった……」
モアがそう答えかけたとき、白い光が両目を焼いた。
* * *
「ああ……〈ワイバーン〉が……俺たちの軍艦が……」
脱出艇の小さな窓を覗いていた若い隊員が、しゃくりあげながらいかつい肩を震わせる。他の隊員も、涙こそ流していなかったものの、赤い目をして窓の外を見ていた。
これまでどれだけ傷ついても、必ず自分たちを生きて帰してくれた軍艦。その軍艦が爆発しながら崩壊していくのを、ただ見つめていることしかできなかった。
「いい軍艦だった……いい人だった……」
古株の隊員が大きく鼻をすすりあげる。
「『帝国』のあの無人艦相手に、よくあそこまで戦った」
「大佐……無事にたどりつけるかな……」
「そうだな。爆発に巻きこまれたりしなけりゃいいんだが……」
そのとき、窓が光り輝いて、隊員たちは思わず目をつぶった。
「な、何だ?」
「おい、本隊のほう見てみろ!」
一人の隊員の指摘に全員が注目すると、「帝国」の旗艦〈フラガラック〉から幾十本も放たれた光の糸が、〈ウォントリー〉をはじめとする「連合」の艦艇を刺し貫いていた。
「例のやつか……あれをやられちゃ、そりゃあ〝全艦殲滅〟させられるわな。追尾型の粒子砲だろ? 反則だよ、反則」
「あれ……大佐、何て言ってたっけ?」
「確か……〝貴婦人の抱擁〟。狙った獲物は逃がさないからだってさ」
「大佐、変態だったけど、ネーミングセンスは意外とあったよな」
「そうそう。変態だったけど、まともで、有能で、いい人だった。本当に……いい人だった!」
「畜生……大佐以外の下で働きたくねえよ……あの人以外には、絶対使い捨てにされる」
「俺……もう退役しようかな」
バーリーはずっと黙りこんだまま、上官と軍艦を失って嘆く部下たちを眺めていた。
自分の真の上官はエドガー・ドレイク大佐ではなかったはずなのに、なぜ彼らと同じ喪失感に打ちひしがれているのだろう。
(大佐……私たちがこんな思いをしてまで送り出したんですから、絶対〝無駄死に〟だけはしないでくださいよ)
心の中でバーリーは呟き、懸命に涙をこらえた。
* * *
――殿下に言いにくいことはヴォルフに言え。
それが〈フラガラック〉ブリッジクルーの不文律である。
結局、ほとんどのことをヴォルフを通じてアーウィンに伝えていることになるのだが、このときもブラッドリーは迷わずヴォルフに報告することを選んだ。
「ヴォルフ様。今、よろしいですか?」
「ああ? 何かあったのか?」
気軽に歩み寄ってきてくれたヴォルフに、ブラッドリーはほっとして、今さっき上がってきたばかりの情報を伝える。ヴォルフは困惑の表情をし、頭を掻きながら、艦長席にいるアーウィンのそばに戻っていった。
あのヴォルフが困っているのだから、やはり自分の判断は正しかったのだ。
ブラッドリーはそう思って、それ以上その情報について考えることを放棄した。
「アーウィン。妙なことが起こったぞ」
なぜか沈んでいるアーウィンに、ヴォルフは言葉を選びながら声をかけた。
正直、あまり会話もしたくなさそうだったが、さすがに自分の側近が言うことにはアーウィンも耳を貸した。
「妙なこと?」
「ああ。ついさっき、パラディン大佐隊が、救命信号を発信している脱出ポッドを見つけて回収したそうだ」
「それは珍しいが……どこが妙なんだ?」
「その脱出ポッドは、『連合』製だった」
これにはアーウィンも驚いたようだった。
「『連合』の脱出ポッドをわざわざ回収したのか?」
「回収してからわかったらしい。中で眠っている人間が誰かもな」
「脱出ポッドが『連合』製なら、中身も当然『連合』製だったんだろう」
「ああ。……おまえが気に入っている〝変態〟だった」
「……何?」
「〈ワイバーン〉艦長、エドガー・ドレイク大佐だったんだよ」
アーウィンは青い瞳を見開いたまま、長い間、一言も発さなかった。
〈ワイバーン〉専用画面を見ていたアーウィンが、ふと訝しげに呟いた。
「どうした?」
ヴォルフが訊ねると、スクリーンからは目を離さずに答える。
「〈ワイバーン〉が急に旋回した」
「何か、そうしなきゃならない理由があったんだろ」
「理由……」
「それより、あっちの旗艦のほうはどうするんだよ? おまえ、こっちに夢中で、全然指示してないだろうが」
「今さら私の指示など必要か? 〝全艦殲滅〟。それ以外ない」
「それはそうだが……」
なおもヴォルフは小言を続けようとしたが、急にアーウィンが艦長席から身を乗り出した。
「今度はどうした?」
「〈ワイバーン〉が……」
「え?」
言われてスクリーンを見れば、〈ワイバーン〉が無人砲撃艦を撃ち落とすことができずに、逆に砲撃を受けはじめていた。
「ついに力尽きたか……」
ヴォルフは当然の結果だと思ったが、アーウィンは納得しかねるように眉をひそめている。
「おかしい」
「何が? どだい軍艦一隻で、無人艦一〇〇〇隻撃ち落とすことなんか不可能だろ。おかしいと思うおまえのほうが俺にはおかしく思えるぞ」
「あのとき急旋回などしなければわからなかった。……ブラッドリー少尉。あのときの映像を解析してくれ」
「は、はい!」
いきなり命じられて、ブラッドリー――赤毛を短くカットしている、ブリッジ唯一の女性クルー――は裏返った声を上げたが、すぐに解析作業を始めた。
普段、アーウィンはブリッジクルーに命令はほとんどしない。今回はキャルが遠隔操作中だから、ブラッドリーの手を借りることにしたのだろう。
無人砲撃艦の集中砲火を浴びて、〈ワイバーン〉が小規模な爆発を繰り返していた。
それを見つめながら、アーウィンが独語する。
「〈ワイバーン〉が……沈む……」
この軍艦一隻のために、無人砲撃艦の大半を失った。だが、アーウィンのその声には、まるで自分の船をなくしたかのような、哀惜に似たものが含まれていた。
「殿下、解析終わりました」
明らかに緊張した様子で、ブラッドリーがアーウィンを振り返る。
「お手元の端末に表示いたしますのでご覧ください」
「うむ」
「攻撃を続けながら旋回していますのでわかりにくいですが、右舷後方からレーザー砲撃を受けています。それを回避しようとして左舷に急速旋回したものと思われます。直撃は免れましたが、船体後尾に若干の損傷を受けています」
「いったい何者が? 位置的に我々の艦艇ではないな」
「おそらくですが……『連合』の艦艇ではないかと」
「……なるほど。わかった。ご苦労だった」
「え、いえ」
滅多にかけられない労いの言葉にブラッドリーは赤くなったが、アーウィンは彼女を一顧だにしなかった。それに不安を覚えたのか、視線でヴォルフを呼び、小声で訊ねてくる。
「ヴォルフ様……もしかして、殿下、怒ってらっしゃいます?」
「ああ……何というか……自分の気に入りのおもちゃを壊されて、むしゃくしゃしてる感じだな……」
「まさかそんな、子供みたいな」
「一見冷静沈着なように見えるが、中身は案外子供だ。これから何をするつもりなのかもわかる」
「え、何ですか?」
ブラッドリーの問いに、ヴォルフは苦々しく答えた。
「おもちゃを壊した相手を壊すんだ」
「キャル」
〈フラガラック〉専属オペレータの名を、アーウィンは冷ややかに呼んだ。
「はい、マスター」
遠隔操作中でも、キャルはすぐに応じた。
「この状況にもう飽きた。一気に片をつける。粒子砲で全艦殲滅しろ」
「先ほど〈ワイバーン〉から脱出艇が二隻脱出しましたが、そちらもですか?」
それを聞いて、アーウィンの口元がかすかにゆるむ。
「それは見逃してやれ。あの男に敬意を表して」
「承知しました。有人艦を強制撤収します」
「わかった。……やれ」
「はい、マスター」
従順にキャルが答えた。同時に〈フラガラック〉の粒子砲列は「連合」軍に照準を合わせた。
* * *
副官から〈ワイバーン〉と共にドレイクが戦死したとの報告を受けたとき、モアは自分が撤退するタイミングを逸してしまったことにようやく気づいた。
「帝国」はなぜか〈ワイバーン〉だけに砲撃艦を集中させていた。突撃艦よりも砲撃艦のほうがはるかに厄介だ。〈ワイバーン〉が砲撃艦を引きつけている間に、モアは何とか艦隊を立て直して撤退すればよかったのだ。しかし、ドレイクが死ぬまではというこだわりが、彼をこの戦場に留まらせてしまった。
「提督。……撤退を」
幾度となく繰り返した進言を、副官はまた口にした。
そう、あの男はもう死んだのだ。ここで自分が生きて帰れなかったら、本末転倒だ。
「わかった……」
モアがそう答えかけたとき、白い光が両目を焼いた。
* * *
「ああ……〈ワイバーン〉が……俺たちの軍艦が……」
脱出艇の小さな窓を覗いていた若い隊員が、しゃくりあげながらいかつい肩を震わせる。他の隊員も、涙こそ流していなかったものの、赤い目をして窓の外を見ていた。
これまでどれだけ傷ついても、必ず自分たちを生きて帰してくれた軍艦。その軍艦が爆発しながら崩壊していくのを、ただ見つめていることしかできなかった。
「いい軍艦だった……いい人だった……」
古株の隊員が大きく鼻をすすりあげる。
「『帝国』のあの無人艦相手に、よくあそこまで戦った」
「大佐……無事にたどりつけるかな……」
「そうだな。爆発に巻きこまれたりしなけりゃいいんだが……」
そのとき、窓が光り輝いて、隊員たちは思わず目をつぶった。
「な、何だ?」
「おい、本隊のほう見てみろ!」
一人の隊員の指摘に全員が注目すると、「帝国」の旗艦〈フラガラック〉から幾十本も放たれた光の糸が、〈ウォントリー〉をはじめとする「連合」の艦艇を刺し貫いていた。
「例のやつか……あれをやられちゃ、そりゃあ〝全艦殲滅〟させられるわな。追尾型の粒子砲だろ? 反則だよ、反則」
「あれ……大佐、何て言ってたっけ?」
「確か……〝貴婦人の抱擁〟。狙った獲物は逃がさないからだってさ」
「大佐、変態だったけど、ネーミングセンスは意外とあったよな」
「そうそう。変態だったけど、まともで、有能で、いい人だった。本当に……いい人だった!」
「畜生……大佐以外の下で働きたくねえよ……あの人以外には、絶対使い捨てにされる」
「俺……もう退役しようかな」
バーリーはずっと黙りこんだまま、上官と軍艦を失って嘆く部下たちを眺めていた。
自分の真の上官はエドガー・ドレイク大佐ではなかったはずなのに、なぜ彼らと同じ喪失感に打ちひしがれているのだろう。
(大佐……私たちがこんな思いをしてまで送り出したんですから、絶対〝無駄死に〟だけはしないでくださいよ)
心の中でバーリーは呟き、懸命に涙をこらえた。
* * *
――殿下に言いにくいことはヴォルフに言え。
それが〈フラガラック〉ブリッジクルーの不文律である。
結局、ほとんどのことをヴォルフを通じてアーウィンに伝えていることになるのだが、このときもブラッドリーは迷わずヴォルフに報告することを選んだ。
「ヴォルフ様。今、よろしいですか?」
「ああ? 何かあったのか?」
気軽に歩み寄ってきてくれたヴォルフに、ブラッドリーはほっとして、今さっき上がってきたばかりの情報を伝える。ヴォルフは困惑の表情をし、頭を掻きながら、艦長席にいるアーウィンのそばに戻っていった。
あのヴォルフが困っているのだから、やはり自分の判断は正しかったのだ。
ブラッドリーはそう思って、それ以上その情報について考えることを放棄した。
「アーウィン。妙なことが起こったぞ」
なぜか沈んでいるアーウィンに、ヴォルフは言葉を選びながら声をかけた。
正直、あまり会話もしたくなさそうだったが、さすがに自分の側近が言うことにはアーウィンも耳を貸した。
「妙なこと?」
「ああ。ついさっき、パラディン大佐隊が、救命信号を発信している脱出ポッドを見つけて回収したそうだ」
「それは珍しいが……どこが妙なんだ?」
「その脱出ポッドは、『連合』製だった」
これにはアーウィンも驚いたようだった。
「『連合』の脱出ポッドをわざわざ回収したのか?」
「回収してからわかったらしい。中で眠っている人間が誰かもな」
「脱出ポッドが『連合』製なら、中身も当然『連合』製だったんだろう」
「ああ。……おまえが気に入っている〝変態〟だった」
「……何?」
「〈ワイバーン〉艦長、エドガー・ドレイク大佐だったんだよ」
アーウィンは青い瞳を見開いたまま、長い間、一言も発さなかった。
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