寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

118【交換ついでに合同演習編23】訓練一日目:椅子作りレース番外戦

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【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「〝先生〟も俺たちとの一騎討ちを望んでいたとはな。おまけに、勝負を受けるだけで〝飴ちゃん〟も手に入る。まさに一挙両得! 〝先生〟! ありがとう!」

クルーA
「しかし、音声だけだったので確信が持てませんが、あの〝先生〟は十一班長の例の副長……だったんですよね?」

副長
「まあ、十一班長じゃなかったことだけは確かだな。噂で聞くかぎり、十一班長の代わりに班を代表して話せるのは、例の副長だけだろ」

クルーB
「綺麗な声だったなあ……」

クルーA
「でも、その声でうちを脅してましたよね?」

ラムレイ
「そうまでしてうちと戦いたかったってことだろう! 名誉なことじゃないか! そんな〝先生〟と〝最初から椅子〟で戦うのは失礼すぎるな。さっきはそれで〝先生〟にも負けたし」

クルーA
「じゃあ何で? 〝最初から三・二〟じゃ、たぶん〝先生〟にはかないませんよ?」

ラムレイ
「ああ、だからこそ、俺たちの原点に立ち返る。……〝移動しながら変形〟だ!」

ラムレイ以外
「〝移動しながら変形〟!?」

クルーA
「でも、それじゃ勝てなくなって〝最初から椅子〟にして、それでも最後は負けたんじゃないですか!」

ラムレイ
「こう言ったら何だが、今回は絶対に勝たなきゃならない戦いじゃない! 〝飴ちゃん〟が手に入ることはもう確定してる! それなら俺たちは本当にしたい変形方法で挑んでもいいじゃないか! 俺たちの魂はずっと〝移動しながら変形〟したいと叫んでいた!」

クルーA
「班長……!」

クルーB
「そうです、やっぱり〝移動しながら変形〟です……!」

ラムレイ
「姑息な〝最初から三・二〟じゃなく、一回戦でやったとおり、移動隊形から〝移動しながら変形〟するぞ。〝移動しながら合体〟もしたいんだが、どうしても副班長隊が配置についてからの〝合体〟になっちまってるな」

クルーA
「とにかく〝移動しながら変形〟で、いま俺たちがやれることをやりましょう!」

ラムレイ
「ああ! 〝移動しながら変形〟の魂は永久に不滅だ!」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「黙ってれば、そのまま〝飴ちゃん〟手に入ったのに……」

レラージュ
「たった五個ばかりの飴玉もらってどうするんですか。班員全員に分けられないじゃないですか」

クルーA
「副長が副長らしいことを言っている……!」

クルーB
「何か、すごい感激……」

ロノウェ
「優勝の権利と〝飴ちゃん〟譲ってやってまで、そんなに六班と戦いたかったのか?」

レラージュ
「いえ。特に六班と戦いたかったわけではありません。ただ、勝敗に関係なく戦える機会が欲しかっただけです。ああ言えば、六班も元四班長も絶対乗ってくると思いました」

ロノウェ
「勝敗に関係なく?」

レラージュ
「さっき、一班のあれを見て〝うちもやりてえ〟と言っていましたね。それならうちもやりましょう。移動隊形から〝移動しながら変形〟して〝移動しながら合体〟、配置についたときには〝椅子〟!」

ロノウェ
「何ィ!?」

レラージュ
「うちは一班と六班に挟まれて五回戦やってきました。その間に〝移動しながら変形〟も〝移動しながら合体〟も学習できたでしょう」

ロノウェ
「いや、〝移動しながら合体〟は一班の一度しか見てねえって。それにあっちは〝最初から変形〟はしてたぞ?」

レラージュ
「だから、こっちはあえて一から全部やってやるんです! 六班には負けてもかまいませんが、たとえどんなに時間がかかっても、失敗だけは許さない!」

クルーA
「ひいいっ!」

クルーB
「そっちのがきつい!」

ロノウェ
「でもおまえ、うちは〝移動しながら変形〟の練習は一度もしたことねえのに……」

レラージュ
「一班だって〝移動しながら合体〟の練習はきっとしていなかったでしょう。各艦への指示は俺が全部しますから、班長は隣の六班見ててください」

ロノウェ
「……はい」

クルーA
「副長……本気モードだ……」

クルーB
「別名、裏班長モード……〈オートクレール〉守って一班と直接対決したとき以来だな……」

クルーA
「このモードで絶対失敗は許されない……一班、どうして参加したんだ……!」

クルーB
「何で一班?」

クルーA
「一班さえ参加してなければ、うちが普通に三勝してた」

クルーB
「ああ、なるほど。でも、一班が参加してなかったら、どこも最初から〝椅子〟でスタートしようとは考えなかったな」

クルーA
「……元四班長は最初からそのつもりだったのかねえ……」

クルーB
「何が?」

クルーA
「ここの配置。〝最初から椅子〟にしたくて、実演販売じゃないけど、一班にさせたのかなあと」

クルーB
「あの、最後の〝移動しながら合体〟もか?」

クルーA
「あれは……実験……みたいなもんじゃないか?」

クルーB
「そうか。……いつか、あれで全班配置につかされることになったら恐ろしいな……」

クルーA
「外から眺めてる分には楽しいだろうけどな」

ゲアプ
(逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ……)

 ***

【パラディン大佐隊・第八班第一号ブリッジ】

副長・ウィルスン
「十一班も六班も、最初から完全な移動隊形だ!」

八班長・ブロック
「これは……〝移動しながら変形〟対決!?」

ウィルスン
「すげえ、十一班! 〝移動しながら変形〟して、一班がやった〝移動しながら合体〟まで狙ってるぞ!」

ブロック
「さすが〝先生〟……隣で見てただけで学習してた!」

ウィルスン
「元祖〝移動しながら変形〟と、にわか〝移動しながら変形・合体〟! 勝つのはどっちだ!?」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

ハワード
「十一班まで〝移動しながら変形〟ができるようになったら、俺たちの立場はますますなくなっていく……」

フィリップス
「おまけに〝移動しながら合体〟もする気だぞ……また俺たちの技が奪われていく……」

エリゴール
「まったくあんたらは……最初から〝椅子〟になるって決まってるんだから、待機してる間に〝椅子〟になって、〝空飛ぶ椅子〟で配置につけばいいだろう」

フィリップス
「何て味気ない……」

エリゴール
「実戦でそんなこと言ってられるか」

フィリップス
「そういや、一応、勝敗の判定はするんだよな?」

エリゴール
「これだけ判定員そろってるからな。うちもするぞ」

ハワード
「よかった。二班だけなら判定しやすい」

フィリップス
「残念ながら七班は判定に参加できないな。……元四班長。どうして七班を〝スタートライン〟にしたんだ?」

エリゴール
「十一班、六班以外の〝椅子〟組ならどこでもよかったんだが……あの班が護衛隊形のタイム計測でいちばんタイムが悪かったからな」

フィリップス
「そんな理由!?」

エリゴール
「そんな理由」

ハワード
「妥当だが非情……」




二班長・キャンベル
『ただいま判定結果集計中です! しばらくお待ちください!』

フィリップス
「あ、番外戦でも二班長がやってくれるんだ。偉いな」

エリゴール
「それより判定だ。各艦長に判定結果を急いで訊け」

通信士
「了解!」

フィリップス
「うーん……先に配置についたほうが〝勝ち〟っていうわけでもないからなあ。〝椅子〟で〝砲撃できる状態〟にしなきゃ駄目なんだろ?」

エリゴール
「ああ。だから判定が難しい。できたら実際に砲撃までさせたかったな」

フィリップス
「え、その場合、的は判定員?」

エリゴール
「そのほうがわかりやすいだろう」

ハワード
「確かにわかりやすいが……もし本当にそうしてたら、全班、判定員辞退してたな」

通信士
「班長! うちの集計結果出ました! あと、二班から問い合わせの通信が入ってます!」

ハワード
「おっと、早く答えてやらないと。……多数決すると六班か」

フィリップス
「おとっつぁん的にはどっち?」

ハワード
「タイムも考慮したら、やっぱり六班だろうなあ。移動隊形から〝移動しながら変形・合体〟を成しとげた十一班にも敢闘賞をやりたいが」

フィリップス
「ああ……あれ、うちがやったら、絶対十一班に負けるな……さすが〝先生〟……」

ハワード
「元四班長はどう見る?」

エリゴール
「俺も六班だ。だが、班長のその〝敢闘賞〟というのはいいな。班長、二班にうちの判定結果を伝えるときに、こう付け加えてくれ」

ハワード
「うん?」




二班長・キャンベル
『お待たせしました! 判定結果発表します! 一位・六班、二位・十一班です!』

フィリップス
「二班しかやってなくても、やっぱり順位発表はするんだ……」

ハワード
「〝集計の結果、勝者は六班に決定しました〟でいいと思うけどな」

フィリップス
「その融通のきかなさが二班長」

二班長・キャンベル
『ただし、十一班には敢闘賞として〝飴ちゃん〟三個が進呈されます。……よかったですね……』

フィリップス
「あ、そういえば、二班はまだ〝飴ちゃん〟を一個ももらったことがない」

エリゴール
「そうだったか? じゃあ、あとで手間賃として〝飴ちゃん〟二個やっとくか」

フィリップス
「〝飴ちゃん〟二個……まあ、各班に六回も訊き回るのは大変だっただろうから、それくらいが妥当か」

ハワード
「でも、あそこまで頑張った十一班との差がたった一個と考えると、何か二班のほうが割りがよすぎるような……」

エリゴール
「十一班は自分の好き勝手やって三個だぞ。二班は俺に言われて仕方なく集計して発表してきたんだ。二個以上もらえたっていいくらいだろう」

フィリップス
「そう言われると納得させられてしまう……」

ハワード
「それでも、二班には二個しかやるつもりはないんだな」

 ***

【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「確かに、タイムでは〝先生〟に勝った! しかし、〝先生〟は〝移動しながら変形〟だけでなく、〝移動しながら合体〟までやってのけた……!」

副長
「これは……俺たちの事実上の敗北……!」

クルーA
「班長! まだ裏はとれていませんが、実は五回戦ですでに一班が〝移動しながら合体〟を成功させていた模様です!」

ラムレイ
「何ィ!?」

クルーA
「ただし、それは〝先生〟のような、移動隊形からのスタートではなかったようですが……一班は〝先生〟の隣でしたから、〝先生〟はそれを見てやり方を学習したのかもしれません」

副長
「ええっ、レース中にたった一回、隣で見ていただけで?」

ラムレイ
「あの〝先生〟なら可能かもしれない……何しろ〝先生〟だからな」

クルーA
「言葉としては意味不明ですが、言いたいことはよくわかります」

副長
「くそう! 位置的に一班のチェックまではできなかった! 最後のほうはどの班もタイムは同じくらいになってたしな!」

ラムレイ
「あとで、その一班の〝移動しながら合体〟と、今の十一班の映像を入手しなくては!」

クルーA
「いったいどこから……」

ラムレイ
「こういうときのために、撮影班はもう一つ必要だ!」

クルーA
「異論はありませんが、名乗りをあげてくれる班はあるでしょうか……」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

レラージュ
「敢闘賞……」

ロノウェ
「やった! 三個だけでも〝飴ちゃん〟が手に入る!」

レラージュ
「……三個ばかりもらっても仕方ありませんから、それも六班に譲りましょうか」

ロノウェ
「レラージュ! 今回だけは! この三個だけは!」

クルーA
「そうです、副長! 今はとりあえずもらっておきましょう! 二個は班長と副長とが分けあって、残りの一個は班員全員でジャンケン大会をして獲得者を決めるという手もあります!」

ロノウェ
「……壮絶なジャンケン大会だな……」

レラージュ
「俺はいりませんから、二個は班長と副班長でいいです」

クルーA
「そんな! 副長が今回の敢闘賞の立役者なのに!」

レラージュ
「俺はそんな飴玉一個より、一班や六班みたいな、ちゃんとした一勝が欲しかったです!」

クルーA
「ひいっ! 不甲斐なくてすみません!」

レラージュ
「今回のレース、一班が正式に参加してたら、文句なしの三勝で優勝してたんですよ? それなのに、うちの馬鹿どもはっ……! そんなに飴が欲しけりゃ、俺がスーパー行って買ってきて、おまえらの顔にぶちまけてやるわ!」

クルーA
「あ……副長……それでもいいです……」

ゲアプ
(俺は見ているだけのほうがいい……)
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