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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO
#074:硬直な(あるいは、つちや三兄弟)
しおりを挟む「少年!! 5秒以内なら何でもいいし、それ以上かかってもそれで決着できるならそれでも構わねえっ!! とりあえず先手取ってかましてくれ!!」
アオナギもここに来てコトのやばさに気づいたみたいだ。僕へのご指名。でも「5秒以内」で効果的なDEPって……この漕ぎながらっていうのもじっくり考えるには過酷な状況だけど、そうそう時間を取ってる余裕はない。
ディスプレイに目をやると、僕らのチームは規定速度12kmには何とか達して、ふらつきながらもそれを保てている。ここに来てのこれはもう、おそらく限界を超えているだろう。他二人の頑張りに報いたい。ここはいちかばちか……僕は意を決し、ボタンを押し込みつつ口を開く。
「……『つらかったことー、同じ学科のコに告白して振られ、その結果、学科内グループからお叱りを受けて、SNS上で原稿用紙換算5枚超の反省文を書かされたことー』」
開け、僕の古傷!! 着手時間は5秒超えてしまっただろうけど、あの哀しい現実の後日談を食らわせて、この戦いに終止符を打つ!!
「先手着手ナンバー19!! ナンバー29、30秒以内に着手をお願いします!!」
どう出る? 出来ればまた向こうのリーダーにお願いしたいけど。
「……自分が行く。いいか桂馬?」
「任せる」
しかし対局相手はレーゼさんだ。何というか、その端正な顔に似合わない、にじみ出る威圧感から重い一撃を放ってくるんじゃないか的な予感……僕の渾身のDEPもあっさり跳ね返してしまうかのような……いやいや弱気になるな!! 僕は恐怖で尻穴がきゅっと自然にすぼみ上がるのを自認しながらも、漕ぐ速度を緩めて相手の着手を待つ。
「……」
一方、かなりの回転速でペダルを回していながらも、規則正しい呼吸でブレの無いレーゼさん。その口が初めて大きく開くと、ひと息大きく吸い込んだ。来る!!
「……じ、自分の名前、炎道・ゴッドリーフって、そう言うんだけど、ゴッドリーフは直訳すると『神の葉』イコール『シンバ』、炎道は読みを変えると『ホノ・タオ』って結構なんていうか、勢ぞろいじゃね? っとか、そういう話」
いや同じ轍ー!! 忠村寺以上にくどい自分の名前ネタの語りというか解説に、瞬間、球場内が氷結するんじゃないか級の大寒波が訪れる。
このチーム、今までどうやって勝ち進んできたと言うんだろう……向こうの司令塔、桂馬の顔はすでにこわばりを超えて弛緩状態になっており、僕はこの戦いの勝ちを確信する。貫けー!!
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