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第七夜 冒険者組合と僕
《07-4》
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††
アリサの魔力放出が止まり、アリサは男たちを無視して奥へと向かっていった。
僕はその後を、何ともいえない顔をして見ていた。
「ったくあの糞アマ、血の気だけはガリオン以上だからな。」
「なぁに、そのうちあの面を……へっへっへ」
なんかヤラシイ顔して笑ってるな。ぶっとばしておこうか?
「おいおい、あのちっこいの、アリサの連れか?」
僕のことか?ちっこい言うな。
「全滅したから早速新しい狩猟団員かぁ?」
ああ、やっぱり知ってるのか。
「違うだろ、あんなちっこい女の子なんてモンスターと戦えるわけ無いだろ。動物と遊んでる位だろうぜ、ギャハハハハハハ」
ちっこい言うな。女の子……この服装だし顔だからそう思うのは許す。
「しっかしよ~、めっちゃくちゃ可愛らしい娘だな~」
ん、褒めるのも許す。可愛いのは自分でも認める。
「団員ってよりアリサの奴隷じゃねぇか?」
奴隷?馬鹿にするなよ、なんならお前ら全員まとめてぶっ飛ばすぞ。
「アリサの奴、男に飽きて女に目覚めたとかかぁ、ははははっ!」
下卑た笑い声が響く中、僕はちょっとムカムカとしながら酒場を通り過ぎていく。しかしムカつく。
それにしてもこれが冒険者なのかな、みんな粗野で汚らしい。
──ネクス、あいつらのレベルってどの位?あまり強そうに見えないんだけど。
《YES、視界の範囲内を検索、LV.20より最大でLV.54と判定します。》
なるほど、山の麓で弱いモンスターを狩っている奴らと、ほぼ同じくらいか。
《先ほどアリサに暴言を吐いていた冒険者は、LV.70からLV.80を少し超えていました。》
へぇ、意外にレベル高い奴らなんだ。だから高レベルのアリサにもあんな事が云えたってことかな。
酒場を抜けると奥にはカウンターがある。アリサはそこで事務員と話をしていた。
アリサの後ろに立ち、少し視線を右にずらすと壁に掲示板のようなものがあり、僕には読めない模様のような文字が書かれた黄色い紙が、壁に沢山貼られていた。
《解析しますか?》
──ああ、お願い。記録しておいてあとで解る様にしといて。
《YES》
しばらく掲示板を見てネクスが記録した後、カウンターへ視線を戻して、その奥に居るローブ姿の事務員達に視線を向けた。冒険者とは違う雰囲気だ。どこか教会に居た"天空の翼人"のような感じもするけど、髪の色が違う。
それに彼等は翼も持ってないし、耳が横に尖っていた。さっき街でも見かけたエルフ族だ。みな一様にスラリと背が高くて、銀色がかった蒼や緑の髪に整った美しい顔、尖った耳。ファンタジーに登場する森の民だ。
やっぱエルフって美男美女揃いなんだね。
ほとんどのエルフ族が"魔術師"や"魔動機弓操士"という職業で、レベルも70前後とかなり高い人達だ。
近くに寄ると背が高いな~。アリサも僕より大きいけど、エルフの女の人もそれと同じ位かそれ以上に背が高い。
「アリサさん……今日は?」
なんか言葉を詰まらせる事務員。ちょっと顔色も良くないというか、伏し目がちだ。もしかしてこの人も噂を耳にしてるのかな。
「何を聞いたか知らんが、私が来た理由は……」
「は、はい。」
何故か知らないけど、アリサが闘気を放っている。ううん、これは闘気というより憤怒だ。それに圧されるように事務員の顔が汗ばんでいる。
「依頼完了だ、ヴェンテゴ討伐の証を持ってきた。」
アリサの言葉に女事務員は一瞬驚いた顔をした。
同時に酒場で飲んでいた連中にも声が通ったのか、さっきまでざわめいていた酒場が、シーンと静まり返った。
烈風狩猟団《ゲイル》がヴェンテゴ討伐の依頼を受けたことは、冒険者達の間にも知られていた。LV.90以上のモンスターだ。それを倒せる冒険者はそれほどは多くない。
しかも場所は魔の山中腹と来ている。普通なら近づきたくもない場所だ。その依頼を受けてから、そう日にちも経っていないはずなのに、もう終わったのかという驚きが彼等にはあった。
それ以前にガリオンが足を失い、狩猟団がほぼ全滅したという噂も流れている。『討伐依頼は失敗した』、誰もがそう思っていた。なのに今此処で、無事な姿のアリサから、討伐完了の報告があったのだから、驚くのも無理はなかった。
静まり返った酒場から、「嘘だろ」「全滅したんじゃねぇのか。」「ヴェンテゴを討伐しただとっ」「あいつら出発したのって、つい3日か4日前だろっ」などなど声が聞こえ、再びざわつき始めた。
「討伐完了、ご苦労様でした……」
女事務員が震える声でいう、その途端にアリサの怒号が奔った。
「てめぇらふざけてんじゃねぇぞ!!!」
ざわめきの中、アリサが事務員たちに向けて怒鳴り、アリサの一撃でぶ厚い一枚板のカウンターがメキメキと崩れ落ちた。
††
アリサの魔力放出が止まり、アリサは男たちを無視して奥へと向かっていった。
僕はその後を、何ともいえない顔をして見ていた。
「ったくあの糞アマ、血の気だけはガリオン以上だからな。」
「なぁに、そのうちあの面を……へっへっへ」
なんかヤラシイ顔して笑ってるな。ぶっとばしておこうか?
「おいおい、あのちっこいの、アリサの連れか?」
僕のことか?ちっこい言うな。
「全滅したから早速新しい狩猟団員かぁ?」
ああ、やっぱり知ってるのか。
「違うだろ、あんなちっこい女の子なんてモンスターと戦えるわけ無いだろ。動物と遊んでる位だろうぜ、ギャハハハハハハ」
ちっこい言うな。女の子……この服装だし顔だからそう思うのは許す。
「しっかしよ~、めっちゃくちゃ可愛らしい娘だな~」
ん、褒めるのも許す。可愛いのは自分でも認める。
「団員ってよりアリサの奴隷じゃねぇか?」
奴隷?馬鹿にするなよ、なんならお前ら全員まとめてぶっ飛ばすぞ。
「アリサの奴、男に飽きて女に目覚めたとかかぁ、ははははっ!」
下卑た笑い声が響く中、僕はちょっとムカムカとしながら酒場を通り過ぎていく。しかしムカつく。
それにしてもこれが冒険者なのかな、みんな粗野で汚らしい。
──ネクス、あいつらのレベルってどの位?あまり強そうに見えないんだけど。
《YES、視界の範囲内を検索、LV.20より最大でLV.54と判定します。》
なるほど、山の麓で弱いモンスターを狩っている奴らと、ほぼ同じくらいか。
《先ほどアリサに暴言を吐いていた冒険者は、LV.70からLV.80を少し超えていました。》
へぇ、意外にレベル高い奴らなんだ。だから高レベルのアリサにもあんな事が云えたってことかな。
酒場を抜けると奥にはカウンターがある。アリサはそこで事務員と話をしていた。
アリサの後ろに立ち、少し視線を右にずらすと壁に掲示板のようなものがあり、僕には読めない模様のような文字が書かれた黄色い紙が、壁に沢山貼られていた。
《解析しますか?》
──ああ、お願い。記録しておいてあとで解る様にしといて。
《YES》
しばらく掲示板を見てネクスが記録した後、カウンターへ視線を戻して、その奥に居るローブ姿の事務員達に視線を向けた。冒険者とは違う雰囲気だ。どこか教会に居た"天空の翼人"のような感じもするけど、髪の色が違う。
それに彼等は翼も持ってないし、耳が横に尖っていた。さっき街でも見かけたエルフ族だ。みな一様にスラリと背が高くて、銀色がかった蒼や緑の髪に整った美しい顔、尖った耳。ファンタジーに登場する森の民だ。
やっぱエルフって美男美女揃いなんだね。
ほとんどのエルフ族が"魔術師"や"魔動機弓操士"という職業で、レベルも70前後とかなり高い人達だ。
近くに寄ると背が高いな~。アリサも僕より大きいけど、エルフの女の人もそれと同じ位かそれ以上に背が高い。
「アリサさん……今日は?」
なんか言葉を詰まらせる事務員。ちょっと顔色も良くないというか、伏し目がちだ。もしかしてこの人も噂を耳にしてるのかな。
「何を聞いたか知らんが、私が来た理由は……」
「は、はい。」
何故か知らないけど、アリサが闘気を放っている。ううん、これは闘気というより憤怒だ。それに圧されるように事務員の顔が汗ばんでいる。
「依頼完了だ、ヴェンテゴ討伐の証を持ってきた。」
アリサの言葉に女事務員は一瞬驚いた顔をした。
同時に酒場で飲んでいた連中にも声が通ったのか、さっきまでざわめいていた酒場が、シーンと静まり返った。
烈風狩猟団《ゲイル》がヴェンテゴ討伐の依頼を受けたことは、冒険者達の間にも知られていた。LV.90以上のモンスターだ。それを倒せる冒険者はそれほどは多くない。
しかも場所は魔の山中腹と来ている。普通なら近づきたくもない場所だ。その依頼を受けてから、そう日にちも経っていないはずなのに、もう終わったのかという驚きが彼等にはあった。
それ以前にガリオンが足を失い、狩猟団がほぼ全滅したという噂も流れている。『討伐依頼は失敗した』、誰もがそう思っていた。なのに今此処で、無事な姿のアリサから、討伐完了の報告があったのだから、驚くのも無理はなかった。
静まり返った酒場から、「嘘だろ」「全滅したんじゃねぇのか。」「ヴェンテゴを討伐しただとっ」「あいつら出発したのって、つい3日か4日前だろっ」などなど声が聞こえ、再びざわつき始めた。
「討伐完了、ご苦労様でした……」
女事務員が震える声でいう、その途端にアリサの怒号が奔った。
「てめぇらふざけてんじゃねぇぞ!!!」
ざわめきの中、アリサが事務員たちに向けて怒鳴り、アリサの一撃でぶ厚い一枚板のカウンターがメキメキと崩れ落ちた。
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