悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「レナータ、少し時間あるか」

 

 学園の庭園でコンテストに向けた練習をしていたレナータのもとに、兄のラウルがやってきた。今日は剣術の稽古の合間らしく、軍服姿が凛々しい。

「兄さま。どうしたの、こんなところまで」

 

 レナータは練習を中断し、タオルでうっすら浮いた汗を拭う。ウォーキングのフォームを磨こうと、姿勢や歩き方をしっかり意識していたところだ。

「いや、学園内ではおまえのビューティーコンテスト出場が話題になっているからな。……大丈夫なのか。色々と嫌な噂も耳にするぞ」

 

 ラウルの声には心配が滲んでいる。妹が悪意に晒されることを思えば、当然の感情だろう。

「わかってるわ。でも、私は避けるよりも挑戦したいの。みんなが私の美容を認めてくれるなら、それが一番の証になると思うから」

 

 レナータはきっぱりと言い切る。ラウルは少し目を丸くしたあと、苦笑しながら妹の頭を軽く撫でた。

「強くなったな、レナータ。昔はちょっと周囲に言われただけで落ち込んでいたのに、今のおまえは気迫が違う」

 

 その言葉に、レナータは照れながらも微笑む。美容に打ち込み始めてから、自分の心持ちが変わったのは確かだ。

「兄さまがいつも味方でいてくれるから、私も勇気が出るのよ。ありがとう」

 

 レナータが素直に感謝を伝えると、ラウルはわざとらしく照れくさそうに目を逸らす。

「何を……。まあ、おまえが笑っていられれば、それでいいんだ」

 

 二人はしばし庭園を散歩しながら語らう。レナータは普段言えない本音を、兄の前では素直に打ち明けた。

「正直言うと、私がもし負けたら、また悪役令嬢の評判が増すんじゃないかって不安もある。だけど、試してみなきゃわからないし、それに負けると決まったわけじゃない」

 

 しっかりと前を見据える妹の姿に、ラウルは誇らしげな表情を浮かべる。

「それでこそ俺の妹だ。……もし万が一、何かあれば俺が力になる。おまえは思い切り挑戦してこい」

 

 ラウルの頼もしい言葉を背に、レナータは胸を張って歩き出す。ビューティーコンテストという表舞台で、過去の汚名を晴らすためにも。自分を支えてくれる人たちがいるという事実が、何よりも大きな力となっていた。
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