10年越しの本当の恋

しろみそ

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クリスマス

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以前からピアスを開けたいと色んな人に言っていた。「今年こそは開けたいんですよねー」そう言ってもう12月下旬。タイムリミットは迫っていた。

茂上さんにも以前同じ話をしたら
「自分の開けたことあるし、開けたろうかー?」
と言ってくれたが、まだそこまで親しくなかったから
「年内まで日があるし、いいです」と言って断った事があった。

どんどん好きになっていくうちに、私は何か形に残るようなものが茂上さんから貰いたいと思っていた。
でも既婚者である以上物をあげたり貰ったりするのは、バレるリスクもあるからしてくれないし、私も迷惑だろうなと思って出来なかった。

今年の正月休みは10日間あり、ハネムーンより長く会えなくなるのは寂しすぎる。
(せめて会えない間心の支えになるような物が欲しい…何かいい手はないか…)

「そうだピアス開けてもらおう」

そう閃いた。


以前彼氏に開けるのをお願いしようとしたら、「失敗して怒られるの嫌だから開けたくない。開けるんなら妹かおかんに頼もうか?それか病院行きー」と言われ

「じゃあ病院探すわ」と言ってもう1年経っていた。



「彼氏には断られた」
「年内には開けたい宣言を周りにしてる」
よし、この2つを理由に開けもらおう。
静かに計画は始動し始めた。

12月24日
茂上さんと帰り道一緒になり、ピアスを本気で開けたいと伝えると
「俺でいいの?人の彼女にピアス開けるなんて恨まれそう(笑)」と言いながらも了承してくれた。
電車の出入り口の横で向かい合って立っていると「どこに開けようかなー」と言いながら私の髪を耳に掛け、耳たぶをじっと見ながら話をしていた。
結局明日あけることになり、この日はこのまま帰った。

次の日
仕事が少し長引いてしまい、急いで部屋を出たら茂上さんが廊下にいた。

「あ、終わったー?」

「ごめんなさい遅くなって…」

「全然かまへんで。じゃあこっちの部屋入って」
そう言われ、休憩室の向かいにある部屋に入った。

「こんなに広い部屋だったんだー。あ、水槽にグッピーいる。」私は初めて入ったので入ってすぐ立ち止まってキョロキョロしていた。

「こっちやでー」
そう奥のほうから呼ばれていくと、カーテンで仕切られた小部屋のようなところに案内された。
「ここなら外から見えないから大丈夫やろ」

「あの、他の方は帰られたんですか?」

「せやでー、そこに座ってて」

「あ、はい」
茂上さんはカーテンを閉めて手際良く私の耳をお尻ふきでふき始めた。
(消毒なんだろうけど、なぜお尻ふき)

ピアッサーを取り出しながら
「俺、実は人のは開けたことがないねん」

「てっきり色んな人に頼まれてるのかと思いました。」
(初めてなの!?え、初めて貰えちゃうの?)

「以外やった?さ、開けるで?」

「は、はい…」

私は注射が嫌いで痛いと目を背けるかつぶってしまい、この時も目をぎゅっとつぶっていた。

耳にピアッサーを当てたとき怖くなり、
「ちょっ、ちょっと待って」

「はい、待つよ、どうしたー?」

「あの、怖いんで…な、なにか掴みたい…」

「あーいいよ。なんなら俺のアレでも…(笑)」

「もーなにいってるんですか(笑)」
冗談を言ってくれて少し緊張が解れた。


「じゃあ服持っててもいいですか?」
腰のあたりの裾を掴んで軽くハグするような形になった。

目を閉じて、まだ緊張しているのが伝わったのか、一旦耳からピアッサーを外してハグしながら私の耳に息を吹きかけて緊張を解そうとしてくれた

「もーびっくりするじゃないですかー…」

「ははっじゃあ本当に開けるで?」

「はい。お願いします。」


ガシャ

「はい。終わり」

「え、終わり?本当に?」

「な、痛くなかったやろ?じゃ次こっちな」

ガシャ

「よし、こっち向いて」
左右のバランスを確認して
「うん、大丈夫やな。明日から腫れるからちょっとの間痛いけどまぁあんま触らんようにな」
その後も真面目に開けた後のケアの仕方を話してくれたけど、茂上さんから初めて物を貰えたことが嬉しくて話は耳に入ってこなかった。

「俺ももう今日は帰るわー。」
テキパキと部屋を閉める準備を始めた茂上さん。私は部屋の出入り口横で立って待っていた。

「お待たせ」
そう言って電気を消して部屋から出ようとしたとき、目の前に腕が。壁ドンだった。
横を見ると茂上さんが近づいてくるのがわかり、キスをした。その後私の両肩を掴み激しいディープキスをした。
ハグをしながら
「っあー押し倒してまいそう」
「浮気になってまうよな…」

「そう…ですね」
(キスは浮気に入ってなかったのか)

「あかんなこれ以上は…もーやめとこ」
「帰ろうか」
そう言って足早に部屋から出た。

部屋の前で別れを告げて、誰かと会わないようにこっそりロッカーに行き、荷物を取って会社を出ようとしたら、屋上からタバコを吸っている茂上さんが手を振って見送ってくれた。
手を振り返しながら
ちょっぴり寂しくも、嬉しいクリスマスプレゼントだった。
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