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十一
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「あれ、君は·····」
ある日セレリアが邸のサロンにいた時、入ってきた青年が驚いたようにセレリアに声を掛けた。
突然の事でセレリアも驚いたが、シリウスを若くしたようなそっくりな青年に、隣国の学園に留学していると聞いていた大公夫妻の子息だと咄嗟に理解した。
「セレリアと申します」
立ち上がると綺麗にカーテシーをして名を名乗った。
幼い頃に乳母に教わっていた拙いカーテシーは大公家で付けてもらった家庭教師によって綺麗に優雅に出来るようになっていた。
侯爵家から離籍されている為に今のセレリアには名乗る名字はないので名前だけを名乗る。それに関しては今、大公夫妻の間で相談中である。
「レイナルド、帰ってくる時は先に連絡を入れなさいと言っていたでしょう」
入ってきて息子のレイナルドを叱った夫人はセレリアに微笑み掛けると、改めてレイナルドをセレリアに紹介して
「お父様が書斎にいるから、挨拶をしていらっしゃい」
執事に連れられてレイナルドがサロンを出ていくと、驚いて戸惑っているセレリアをソファーに座らせて夫人も隣りに座る。
「驚かせてごめんなさいね。留学のカリキュラムを終わらせたから早目に帰ってきたみたいなの」
「いえ、私の方こそ驚かせてしまったと思いますので、申し訳ございません」
恐縮しているセレリアに気にしなくて良いと夫人は言うと、メイドを呼ぶとお茶の準備をさせて穏やかにお茶の時間になった。
シリウスの書斎に訪れて帰宅の挨拶をしたレイナルドは、先程のセレリアの事情を聞いていた。
「·····え、お、私と同じ歳なのですか」
驚いたレイナルドは思わず俺と言いそうになって言い直しながらも、さっきサロンで見たセレリアの姿が十歳程の少女にしか見えなかった事で驚愕した。
シリウスは、セレリアがこの邸にいる事はこの邸の者以外はリンゼイしか知らない事で、口外しないようにと念押しした。
レイナルドは、母親がボランティアに力を入れている事を知っていたので身寄りのいなくなった子を引き取ったのかと思ったのだったが、シリウスから事情を聞いてしっかりと理解した。
話しが済んだシリウスとレイナルドは揃って夫人とセレリアがいるサロンに移動する。
レイナルドとセレリアは改めて挨拶をして、四人での和やかなお茶の時間になった。
シリウスに似たレイナルドは、絶えず令嬢達から秋波を送られる程の美しく凛々しい容貌であったが、気取ったところのない気さくで穏やかな性格で、大人しくコミュニケーション能力が育っていなかったセレリアとも打ち解ける事が出来そうだ。
レイナルドは、小柄なセレリアは妹が出来たようでとても愛らしく感じていた。
なるべく人とのコミュニケーションも取れるようにしてあげたいと考えていた大公夫妻も、レイナルドの帰国は良い方向に向かいそうだと安堵した。
ある日セレリアが邸のサロンにいた時、入ってきた青年が驚いたようにセレリアに声を掛けた。
突然の事でセレリアも驚いたが、シリウスを若くしたようなそっくりな青年に、隣国の学園に留学していると聞いていた大公夫妻の子息だと咄嗟に理解した。
「セレリアと申します」
立ち上がると綺麗にカーテシーをして名を名乗った。
幼い頃に乳母に教わっていた拙いカーテシーは大公家で付けてもらった家庭教師によって綺麗に優雅に出来るようになっていた。
侯爵家から離籍されている為に今のセレリアには名乗る名字はないので名前だけを名乗る。それに関しては今、大公夫妻の間で相談中である。
「レイナルド、帰ってくる時は先に連絡を入れなさいと言っていたでしょう」
入ってきて息子のレイナルドを叱った夫人はセレリアに微笑み掛けると、改めてレイナルドをセレリアに紹介して
「お父様が書斎にいるから、挨拶をしていらっしゃい」
執事に連れられてレイナルドがサロンを出ていくと、驚いて戸惑っているセレリアをソファーに座らせて夫人も隣りに座る。
「驚かせてごめんなさいね。留学のカリキュラムを終わらせたから早目に帰ってきたみたいなの」
「いえ、私の方こそ驚かせてしまったと思いますので、申し訳ございません」
恐縮しているセレリアに気にしなくて良いと夫人は言うと、メイドを呼ぶとお茶の準備をさせて穏やかにお茶の時間になった。
シリウスの書斎に訪れて帰宅の挨拶をしたレイナルドは、先程のセレリアの事情を聞いていた。
「·····え、お、私と同じ歳なのですか」
驚いたレイナルドは思わず俺と言いそうになって言い直しながらも、さっきサロンで見たセレリアの姿が十歳程の少女にしか見えなかった事で驚愕した。
シリウスは、セレリアがこの邸にいる事はこの邸の者以外はリンゼイしか知らない事で、口外しないようにと念押しした。
レイナルドは、母親がボランティアに力を入れている事を知っていたので身寄りのいなくなった子を引き取ったのかと思ったのだったが、シリウスから事情を聞いてしっかりと理解した。
話しが済んだシリウスとレイナルドは揃って夫人とセレリアがいるサロンに移動する。
レイナルドとセレリアは改めて挨拶をして、四人での和やかなお茶の時間になった。
シリウスに似たレイナルドは、絶えず令嬢達から秋波を送られる程の美しく凛々しい容貌であったが、気取ったところのない気さくで穏やかな性格で、大人しくコミュニケーション能力が育っていなかったセレリアとも打ち解ける事が出来そうだ。
レイナルドは、小柄なセレリアは妹が出来たようでとても愛らしく感じていた。
なるべく人とのコミュニケーションも取れるようにしてあげたいと考えていた大公夫妻も、レイナルドの帰国は良い方向に向かいそうだと安堵した。
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