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  あの後、リーザロッテが申し訳ないと謝罪を繰り返した
  エルバルトがリーザロッテのせいではないと宥めたが、あんな心無い婚約者の代わりに謝罪する彼女が気の毒になった

  「いや、もう凄いよな。公爵令嬢があんな軽い存在にされてるんだもんな」

  「階級社会の崩壊でしたね」

  「あら、でもその割りには「身分を笠にきて」って仰ってましたわよ」

  この寮に来てから自然に集まるようになった談話室には侍女達がおやつをセッティングしていてくれるようになっていた
  今日のおやつはアップルパイとクレームブリュレである
  大好物のスイーツをもくもくと食べていたセレスティアが

  「ミンス男爵令嬢に注意する方もいませんでしたわね」

  「王太子があの調子だからなぁ、あれが通常という事なんだろうね」

  エルバルトが苦笑いを浮かべると、俺は報告書を書くと言い残して自室に戻っていった
  四人に背を向けたエルバルトの目には軽い苛立ちが宿っていた
  
  執務机の椅子に座り報告書を作成しながら、ふと窓の外に目を遣り考え事を始めたエルバルトは、無意識に指先を机に叩きつけている
  
  「捗っていないようですね」

  扉を開けて入ってきたリドウィンに声を掛けられるまでそのままだったエルバルトは、ハッと意識を覚醒させた
  袖を少し捲ると手首に付けたブレスレットの魔石を揺らす

  「わかりきった事を見ながら報告書を書く程面倒な事はないよね」

  「もうアレ、である事は明らかですからね。まあ、捗らない理由がソレだけかどうかは知りませんけど、ね。エルバルト」

  くすくすと意味深な笑みを浮かべると、持っていた別の報告書をヒラヒラとさせる

  「これ、もう上がってきてますよ。ほとんど間違いはありませんね。多少の違いくらいで聞いてきた事とほぼ相違はありません」

  「だろうね。ま、初日から確信はあったもんね。仕方ない、暫く付き合ってやるとしようか」

  立ち上がって軽く伸びをすると密かに溜め息を吐きながら、リドウィンの手から報告書をひったくるようにして窓際に移動した

  「毎回アレを見るのか……気が重いな」

  「やたらとあの男爵令嬢が、我々にも関わってきそうな雰囲気ですからね。まあゆっくり観察させてもらうとしましょう」

  飄々とした笑みを浮かべたリドウィンが、じゃあごゆっくり、と出ていこうとした所をエルバルトは呼び止めた

  「もう一つ頼まれてくれる?」

  「わかりました」

  誰に聞かれるでもないのに、耳元でヒソヒソと囁き合うと今度こそリドウィンはエルバルトの部屋から退室して行った
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