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  リチャードにエスコートされ、側近達に守られるようにして会場に入ってきたルルアを、エルバルト達六人以外の者たちは温かに見ていた
  ピンク色のドレスは、可愛らしいルルアの顔立ちにはとても似合っている
  年齢から考えれば、随分と幼稚なデザインとセンスではあるが、この国の最高級の生地をふんだんに使ったドレスは、かなり高額であるだろう

  「ルルア様にぴったりな素敵なドレスですわね」
  「本当にお似合いですわね。聖女様の可憐さを引き立てていますわね」
  「王太子様と聖女様のお並びになった姿が輝いていますわね」

  会場のあちこちからルルアを褒める声が聞こえてくる

  「リーザロッテ・リンドル!」

  壇上に上がったリチャードが剣のある声でリーザロッテの名前を呼んだ

  呼ばれたリーザロッテは、一瞬ビクりと体を強ばらせたが、優雅に扇を開き口元を隠すと、ゆっくりと進み出た
  悪意を向けた会場中の人々でさえも息を飲むような美しい姿だった

  「貴様との婚約は破棄する!理由は、分かっているだろう」

  「婚約の破棄は承りました。ですが、わたくしには理由に、心当たりはございませんわ」

  睨み付けながら婚約破棄を告げるリチャードとリーザロッテは対峙する

  「理由に心当たりがないと言うのか、恥知らずな女め」

  「ルルアを虐める醜悪な女だな」

  「聖女様を未来の王妃様に危害を加える醜い心根の持ち主だからな、図太い女だよ」

  リチャードに続いて側近達がリーザロッテに蔑みの言葉を放つ
  リーザロッテは、背筋を伸ばしてしっかりとした美しい声できっぱりと

  「わたくしは、ルルア様を虐めた覚えはございませんわ」


  「·····ぐすっ、ぅ·····」

  リチャードに縋りついたルルアが、グズグズと泣きながら体をふるふると震わせはじめた

  「ルルアが、こんなにも震えて泣いているのが、貴様が虐めた証拠だ!」

  「可哀想に。いつも健気に我慢していたんだ」

  リチャードが大きな声でリーザロッテを詰ると、会場のあちこちから、お可哀想に、聖女様を泣かせるなんて、などとルルアを気遣う声とリーザロッテを責める声が聞こえ始める

  「·····私·····ごめんなさい、泣いちゃって·····グズっ·····リーザロッテ様が怖くて·····」

  「ルルアが謝る事はない。謝るのは醜い心根でルルアを虐げる、あの女だ」

  「そうだよ。ルルアが泣いているのに、平気な顔をしているあの女が悪いんだ」

  「貴女は可憐な聖女様なんだよ、あんな女に虐められて、今まで我慢してきたんだから」

  ルルアを囲んでリチャード達が慰めている姿をエルバルト達は白けた顔で見ていた

  「·····ひッ··········」

  リーザロッテの短い悲鳴が聞こえてエルバルト達が目を向けると、側近の騎士団長子息のマーノがリーザロッテを引き倒して頭を床に押し付けていた

  「図々しく立ってないで、ルルアに詫びろ!」

  
  
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