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私が、一か八か掛けて先に手を打ったのはこれだったのだ。
セイラの両親はもう味方にはなり得ない、だから私は事実を国王陛下と王妃様にぶちまけたのだ。
自分一人で解決しようにも時間はないし、たかが17歳の小娘に出来る事など殆どないといっていい。
私はあの日、王妃教育の為に登城した際に王妃様に打ち明けた。
セイラは必死に我慢してたのだろうが、このまま我慢していても、セイラ一人不幸になって終わるだけだ。
セイラの置かれている実情を全て王妃様に話した。もしかしたら王妃様もウィリアムを信じて味方をするかもしれない、でも、もしかしたらセイラに味方してくれるかもしれない、掛けだった。
王妃様は、セイラの十年間の努力と人柄を認めてくれた。そして国王陛下にも話を通してくれた。
私は、ウィリアムからの婚約破棄は受け入れるが、黙って言いなりにはなるつもりはないと、私の言いたい事を最後まで言わせて欲しいとお願いした。
国王と王妃はそれを了承してくれ、セイラが悪いようにはならないことを約束してくれた。
私はウィリアムに向き直り
「婚約破棄の件、了承致しました。ただ、疵物になった未来のないわたくしの発言をお聞きくださいますわね」
有無を言わさぬ口調で告げると、ウィリアムも渋々と仕方なさそうに頷いた。
「では、色々と言いたい事はあるのですが。まず、弟のリオンと殿下の側近方にお聞きしますわ。今日に先んじて、それぞれの婚約の破棄を致しましたわね?」
リオンと側近達は、自分達の婚約者もメイリンを虐めていたから、婚約破棄したのは当然だと口々に言った。
事実にはない虐めを声高に喚いている者達に溜め息が漏れそうになるのを飲み込んだ私は
「婚約破棄などなさって、これからどうするおつもりなのかしら?同年代のご令嬢はもう皆様婚約者がいらっしゃいますわよ?」
そう、学園に通う年頃の子息子女であれば、めぼしい者達は既に婚約を済ませているのだ。
「虐めをするような令嬢と結婚するなどと、考えただけでも悍ましい」
嬉々としてそんな事をのたまう側近達や弟に、周囲の鋭い視線が浴びせられている。
「では、結婚もなさらずにどうしますの?」
「我々は生涯、殿下とメイリンを支えていくつもりだ」
「結婚もせず?」
満足げなウィリアムと嬉しそうに微笑むメイリンと頷き合う弟と側近達に、しつこいくらいに問いかける。
「ああ、そうだ」
「男性として女性と触れ合う事もなく、一生お過ごしになるのですね?」
オブラートに包んだが、一生性行為をしないのかと念を押したのだ。
セイラならこんな事は口に出したりしないだろうが、今、セイラはセイラでなく私だ。
皆、私の言った意味に気づいただろう。
「私は、みんなに平等に愛を与えるつもりよ!」
メイリンが叫ぶように言った。
見目の良い側近達を手放したくなくて、自分だけに関心を向けさせておきたくて言ったのだろうが、自分の言葉の意味を理解してるのかしら。
「まあああ、皆様に平等に?」
「そうよ!」
さっきまで、私を怖い怖いと言って震えてたのに、そんな素振りは全くないね。まあ演技だったんだから当たり前だけど。
「あら、婚約も結ぶ前から、堂々と愛人を囲う宣言をなさるのね」
「愛人なんて酷い言い方しないで。みんな私を愛してるって言ってくれてるんだから。私もみんなを愛するわ」
意味が分かってないどころか、本当に馬鹿だったのね。あの頭には思った以上のお花が詰まっているに違いないわ。
でも不味いんじゃないかなぁ、流石にウィリアムも弟も側近達も顔が真っ青だわ。
ついでに、セイラの両親も片付けてしまおう。
「左様でございますか。お父様とお母様は、メイリン様を養女に迎えると仰いましたわね」
メイリンは適当にあしらって、矛先をセイラの両親の侯爵夫妻に向ける。
さっきのメイリンの発言を聞いて固まっていた両親は
「い、いや·····」
私の問いかけに言い淀む。
「仰いましたわ。二週間も前にわたくしは言われましたもの。殿下の心を掴めなかったわたくしは無能だと。殿下の心を射止めた可愛らしいメイリン様を養女にして王家に嫁がせるから、わたくしはもう不要だと仰いましたわ」
「いやっ·····それは」
言い訳をしようとする両親に、私は間髪を入れずに畳み掛けた。
「血の繋がったわたくしを切り捨てて、メイリン様を養女にしてまで王家に嫁がせる理由が分かりませんでしたわ。メリットがあると思えませんでしたもの。ですが、先程のメイリン様の発言で理解しましたわ。弟が王妃になるメイリン様の愛人になるから、わたくしを切り捨てても良かったのですね」
二人は真っ青になって言葉も出ないようだ。
そりゃそうだ。王家に嫁いだメイリンの愛人になった弟の間に子が出来れば、侯爵家の血が入った子を王家の子とするつもりだから、実子であるセイラをウィリアムに嫁がせる必要がなくなったのでしょう、という意味の内容を、私が言ったのだから。
それは、弟以外の他の側近達にも当てはまる。
さっき側近達の口から、メイリンがいるから他の令嬢達と婚姻する意思がない、と言い切ったのだ、そしてメイリンが、みんなに平等に愛を与える、と言ったという事は、メイリンは側近達とそういう行為をする、と周りは解釈しただろう。
青ざめて言葉を失っている者達を後目に、私は尚も続ける。
セイラの両親はもう味方にはなり得ない、だから私は事実を国王陛下と王妃様にぶちまけたのだ。
自分一人で解決しようにも時間はないし、たかが17歳の小娘に出来る事など殆どないといっていい。
私はあの日、王妃教育の為に登城した際に王妃様に打ち明けた。
セイラは必死に我慢してたのだろうが、このまま我慢していても、セイラ一人不幸になって終わるだけだ。
セイラの置かれている実情を全て王妃様に話した。もしかしたら王妃様もウィリアムを信じて味方をするかもしれない、でも、もしかしたらセイラに味方してくれるかもしれない、掛けだった。
王妃様は、セイラの十年間の努力と人柄を認めてくれた。そして国王陛下にも話を通してくれた。
私は、ウィリアムからの婚約破棄は受け入れるが、黙って言いなりにはなるつもりはないと、私の言いたい事を最後まで言わせて欲しいとお願いした。
国王と王妃はそれを了承してくれ、セイラが悪いようにはならないことを約束してくれた。
私はウィリアムに向き直り
「婚約破棄の件、了承致しました。ただ、疵物になった未来のないわたくしの発言をお聞きくださいますわね」
有無を言わさぬ口調で告げると、ウィリアムも渋々と仕方なさそうに頷いた。
「では、色々と言いたい事はあるのですが。まず、弟のリオンと殿下の側近方にお聞きしますわ。今日に先んじて、それぞれの婚約の破棄を致しましたわね?」
リオンと側近達は、自分達の婚約者もメイリンを虐めていたから、婚約破棄したのは当然だと口々に言った。
事実にはない虐めを声高に喚いている者達に溜め息が漏れそうになるのを飲み込んだ私は
「婚約破棄などなさって、これからどうするおつもりなのかしら?同年代のご令嬢はもう皆様婚約者がいらっしゃいますわよ?」
そう、学園に通う年頃の子息子女であれば、めぼしい者達は既に婚約を済ませているのだ。
「虐めをするような令嬢と結婚するなどと、考えただけでも悍ましい」
嬉々としてそんな事をのたまう側近達や弟に、周囲の鋭い視線が浴びせられている。
「では、結婚もなさらずにどうしますの?」
「我々は生涯、殿下とメイリンを支えていくつもりだ」
「結婚もせず?」
満足げなウィリアムと嬉しそうに微笑むメイリンと頷き合う弟と側近達に、しつこいくらいに問いかける。
「ああ、そうだ」
「男性として女性と触れ合う事もなく、一生お過ごしになるのですね?」
オブラートに包んだが、一生性行為をしないのかと念を押したのだ。
セイラならこんな事は口に出したりしないだろうが、今、セイラはセイラでなく私だ。
皆、私の言った意味に気づいただろう。
「私は、みんなに平等に愛を与えるつもりよ!」
メイリンが叫ぶように言った。
見目の良い側近達を手放したくなくて、自分だけに関心を向けさせておきたくて言ったのだろうが、自分の言葉の意味を理解してるのかしら。
「まあああ、皆様に平等に?」
「そうよ!」
さっきまで、私を怖い怖いと言って震えてたのに、そんな素振りは全くないね。まあ演技だったんだから当たり前だけど。
「あら、婚約も結ぶ前から、堂々と愛人を囲う宣言をなさるのね」
「愛人なんて酷い言い方しないで。みんな私を愛してるって言ってくれてるんだから。私もみんなを愛するわ」
意味が分かってないどころか、本当に馬鹿だったのね。あの頭には思った以上のお花が詰まっているに違いないわ。
でも不味いんじゃないかなぁ、流石にウィリアムも弟も側近達も顔が真っ青だわ。
ついでに、セイラの両親も片付けてしまおう。
「左様でございますか。お父様とお母様は、メイリン様を養女に迎えると仰いましたわね」
メイリンは適当にあしらって、矛先をセイラの両親の侯爵夫妻に向ける。
さっきのメイリンの発言を聞いて固まっていた両親は
「い、いや·····」
私の問いかけに言い淀む。
「仰いましたわ。二週間も前にわたくしは言われましたもの。殿下の心を掴めなかったわたくしは無能だと。殿下の心を射止めた可愛らしいメイリン様を養女にして王家に嫁がせるから、わたくしはもう不要だと仰いましたわ」
「いやっ·····それは」
言い訳をしようとする両親に、私は間髪を入れずに畳み掛けた。
「血の繋がったわたくしを切り捨てて、メイリン様を養女にしてまで王家に嫁がせる理由が分かりませんでしたわ。メリットがあると思えませんでしたもの。ですが、先程のメイリン様の発言で理解しましたわ。弟が王妃になるメイリン様の愛人になるから、わたくしを切り捨てても良かったのですね」
二人は真っ青になって言葉も出ないようだ。
そりゃそうだ。王家に嫁いだメイリンの愛人になった弟の間に子が出来れば、侯爵家の血が入った子を王家の子とするつもりだから、実子であるセイラをウィリアムに嫁がせる必要がなくなったのでしょう、という意味の内容を、私が言ったのだから。
それは、弟以外の他の側近達にも当てはまる。
さっき側近達の口から、メイリンがいるから他の令嬢達と婚姻する意思がない、と言い切ったのだ、そしてメイリンが、みんなに平等に愛を与える、と言ったという事は、メイリンは側近達とそういう行為をする、と周りは解釈しただろう。
青ざめて言葉を失っている者達を後目に、私は尚も続ける。
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