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第42話『決着』
しおりを挟むモヤがじわじわとユーカとヴェルに迫る度、ユーカを抱えたヴェルはジリジリと後ろに下がる。
ヴェルはモヤを睨みながら、時折ユーカに視線を送るが、ユーカの表情に変化は無い。
焦る気持ちを抑えつつ、ニャールタカ城から徐々に追い出されていくヴェルとユーカだが、今はモヤから逃れる他に手は見つかっていない。
「このままじゃとどこまでモヤが大きくなるのやら…。」
言葉が続かないが、ヴェルは見当がつかない、と言いたかった様で、ヴェルの脳裏にはクレアの予言が頭に過ぎった。
ヴェルは複雑で難しい計算をする事は出来ないが、もしこのペースで行くと、本当にこの世界が滅ぶであろう事は容易に想像できた。
もしかしたら既に、フェリスの城に置いてきた終末の砂時計が、砂を落とし始めているかも知れない、そう考えてしまうヴェルの心は全く落ち着かなかった。
モヤは既に、ニャールタカ城の一部区画を飲み込むまでに成長しており、少し城から離れた場所にいるフェリスたち3人からも目視できる様になっていた。
「アレは…?」
モヤにいち早く気付いたフェリスは、その存在の異質さを感じ取り、ユーカとヴェルの身を案じる。
カレンとファナも少し遅れてそのモヤに気が付き、本能的にフェリスの前に出る。
ふたりはモヤの存在の異様さは感じ取っていなかったが、無意識の内に理解はしており、フェリスを護る為に前に出たのだろう。
「あの人たちでしょうか?」
カレンは自信なさげに、自らの希望を込めて言った。
しかし、ファナにはそんなはずが無いと云う事が解っていたらしく、思ったままの事をシンプルな言葉でまとめて発言する。
「なんだか不気味ですねぇ。」
そんなファナの呟きも、カレンの願望も、フェリスの耳にはまったく届いていなかった。
フェリスは今すぐにでもユーカとヴェルの元に駆けつけたがったが、カレンとファナを巻き込む事だけは避けたかったので、モヤを睨みながらも、その場から動こうとはしなかった。
だからと言って、気持ちを抑える事など到底できるはずもなく、硬く握った拳からは、強く握りすぎて爪が皮膚を突き破った所為で、血がポタポタと地面に滴り落ちていた。
その様子に気付いたカレンは、フェリスの前に頭を垂れて、佩いていた剣を両手で掲げる。
「行ってください、フェリス様。私たちはここから動きませんから。」
カレンの胸の中では、護るべき対象について行きたい気持ちと忠誠を向ける相手の気持ちを尊重したい気持ちが葛藤し、互いに傷つけ合っているのにも関わらず、そう言ったカレンの表情はとても穏やかで、慈愛に満ちていた。
「信用できないのであれば、この場である首を刎ねて下さっても構いません。」
ファナも、カレンの横で跪いて同様に頭を垂れて、首を晒す。
顔が地面の方を向いているので、表情を窺い知る事は出来ないが、声音からは、カレンとまったく同じ気持ちだと云う事が容易に想像できた。
先ほどまでは全く反応を示さなかったフェリスも、流石に無視できるものでは無かったらしく、カレンとファナの姿を見た途端に、フェリスの胸の中にあった葛藤は姿を消した。
「ありがとう。」
フェリスはふたりにそれだけを言うと、カレンとファナの間を通って、振りかえる事無くニャールタカ城へと向けて走り出した。
しかし、フェリスはその足をすぐに止め、目の前を睨む。
そこには、泥だらけになった第3軍団に所属している兵士たちが、フェリスの進路を塞ぐように膝を折っていた。
「ここを通す訳には参りません。」
結界を挟んで対峙していた時や、湖の水に飲み込まれてもがいていた時よりも、比較にならないほどに真剣な様子であった。
その声は第3軍団の団長のもので、団長はさらに続けて言った。
「あの者らの首は刎ねなかった様ですが、ここを通るなら我らの首は刎ねてからにしてください。」
団長はようやく顔を上げ、フェリスの後方、カレンとファナの方を見て言った。
カレンとファナは心配そうにフェリスを見ていたが、その場を離れる様子はない。
本来であれば、今すぐフェリスの隣に駆けつけてもおかしく無かったが、彼女たちはフェリスに立てた誓いを護る為に、動こうとはしなかった。
「彼女たちと君たちじゃ比較対象にすらならない。」
団長はフェリスの弱さに付け入る為に、自分たちの首を刎ねてから通る様に言ったが、フェリスはそんな考えを一刀両断して彼らを突き放す。
冷たく尖った言葉だったが、かすかな空気の震えを感じ取った団長は、針の穴よりもさらに小さい突破口を見出し、その穴を抉る様に広げようと画策する。
「では何故、そんなにホッとした顔をしているのですか?」
「えっ…!?」
虚をつかれたフェリスは、雷に打たれた様な表情をして、素っ頓狂な声を上げた。
「我々の首など、貴女なら数瞬のうちに刎ね飛ばせるはずです。」
たたみ込む様に団長は言葉を続け、フェリスは完全に丸め込まれそうになるが、ニャールタカ城から大きな音が聴こえたので、あと一歩の所でなんとか耐える事ができた。
「ダメだ。君たちに構っている暇はない。」
今度こそ目の前の彼らを放置して、音のした方へとゆっくり歩み出した。
すると、団長は佩いていた剣を抜いて自らの首筋に刃を当てた。
「自分の事はお気になさらず。」
そして、淡々とそう言うと、剣を持った手に力を入れ、鼻息を荒くしながら歯を食いしばり痛みに耐える。
首筋に食い込んだ刃は徐々にその深さを増し、溢れ出る血液は地面にシミをつくる。
それでもフェリスは足を止めず、唇を固く結んで、聞こえてくる団長の呻き声に耐える。
「団長!それ以上はいけません!」
団長の側にいた第3軍団の兵士のひとりが、慌てた声を上げて団長を止めようとしたが、団長は力を緩める事なく、ついにドサリと云う音とともに地面に倒れ込む。
「バカっ!何やってるんだ君は!」
とうとう耐えきれなくなったフェリスは、目にも留まらぬ速さで団長の側に駆け寄ると、団長の首筋に手を当てて、傷を癒し始めた。
荒い呼吸が次第に鎮まってきた団長は、薄眼を開けて小さな声でフェリスに話しかけた。
「やはり…姫はあまい、ですね。」
細かく言葉を区切りながら、団長は穏やかに微笑んで言った。
フェリスは眼を大きく見開いて、ハッとした表情をすると、うろたえた様な口調で団長に問いかけた。
「嘘…だよね?まさか、そんなっ!」
団長は目を瞑り、静かに首を左右に振った。
しかし、フェリスはそれだけで全てを悟り、涙をひと筋流すと、袖でゴシゴシと目元を拭い、立ち上がって声を張り上げた。
「者共よく聴け!貴様ら全員、夕食抜きだ!城に戻り次第、大広間に集合する事!」
フェリスはそれだけを言うと、今度こそ振り返らずに城の方へと走り出す。
第3軍団の兵士たちは、今度こそフェリスに道を開け、小さくなる背中を見送った。
中には涙でフェリスの姿が見えない者もいたが、全員がいつまでもフェリスの方を向いていた。
「団長、やはり姫を止めるのは無理でしたね。」
「あぁ…しかし、あの目ならば…大丈夫、だろう。」
本来の団長の任務は、フェリスをモヤから遠ざけて彼女の安全を確保する事であったが、フェリスの真剣な眼差しを見て、考えが変わっていた。
今のフェリスであれば、モヤに近づいても無茶はせず、また、無茶をしようとしても止めてくれる者が近くにいる事を感じ取れたからであった。
「ユーカ、まだかや?」
ヴェルはユーカを抱えたまま、襲い掛かってくる闇の腕を器用に身をこなして避け続けていた。
モヤが大きくなればなる程、表面積も増えるので、結果としてモヤが巨大化するスピードは加速度的に増加していた。
腕の本数も、最初はほんの数本であったが、今ではその数を大きく増やし、数十本が四方八方から伸びて来ていた。
結界で足場を創っても直ぐにモヤの餌食になってしまうので、この状況を切り抜ける事ができるのはヴェルくらいだろう。
ユーカは足場を崩されたら立体的な軌道をする事は不可能に近いが、ヴェルには自前の羽根があるので、三次元的な動きをすることが可能であった。
しかし、いくら機動力に優れているヴェルと雖も、対処できる数の上限は決まっている。
時間が経つ程、ヴェルも疲れが溜まり、上限が減っていく。それと反する様に、大きく成長したモヤは、腕の本数を増やしていく。
その結果、ヴェルは少しずつではあるが闇の手への対処が遅れ始め、じわじわと追い詰められ始めた。
「ユーカ…お主の悪いクセじゃ、ぞっ!」
背後の逃げ道が壁によって塞がれていた事を事前に察知していたヴェルは、しっぽを思い切り振り回して、ニャールタカ城内の壁を粉砕し始める。
城の外まで響く様な音がした後、壁とともに床が崩落し始め、ヴェルは崩れた床の瓦礫の中に飛び込む様にして階下へと逃れる事に成功した。
「うむ、結果オーライじゃ。」
「こほっけほっ…。なにが結果オーライよ。」
涙目で咳き込みながら、ユーカが文句を言う。
「む?戻ったのか。」
ヴェルはなんでもなかったかの様に、ユーカの再起動を淡々と受け止める。
闇のモヤやそこから伸びる手を避ける際も、ユーカの安全を第一に優先して立ち回っていたヴェルであったが、そんな事はおくびにも出さず、ひょいとユーカを地面に立たせると、これからの行動をユーカに尋ねる。
「して、何かいい考えでも浮かんだのかや?」
「えぇ、あなたのお陰でね。」
ユーカも思考のループに陥っていたとしても、ヴェルがユーカを優先的に守っていた事くらいは簡単に見破っていたので、お互いに照れ隠しをした様な素っ気ない態度になってしまう。
しかし、ユーカの言葉には本心が含まれていた。
「まぁの。」
ヴェルは得意そうに嗤い、ユーカは不敵に微笑んだ。
そしてユーカは静かに呟く。
「そう、悪いクセなのよ。」
フェリスはニャールタカ城の膝下まで来ると、すっかり身体に馴染んでしまったユーカ式規格外結界で階段を創りだし、それを駆け上って、先ほど大きな音のした方へと向った。
「はぁ、はぁっ…。どこだい、ユーカ、ヴェルっ。」
城内へと侵入したフェリスは、息を切らすほど走り回って、ユーカとヴェルの姿を探した。
ニャールタカ城の中はガランとしていて、人のいる気配はしなかったが、モヤが発する不快感だけは濃密に漂っていた。
「ふたりの気配が…全くつかめない?」
フェリスはモヤによってジャミングされ、ユーカとヴェルの気配を全く探り当てる事が出来ず、焦燥感に駆られていた。
「む?悪いクセがどうしたのじゃ?」
ヴェルは首を捻って、ユーカの言葉を反芻する。
ユーカが再起動したお陰で、一度に対処する闇の腕の数が半減した事もあり、ヴェルには首を捻って数瞬の間立ち止まるだけの余裕があったのだ。
「単純な事よ。あのモヤの悪いクセ。」
そう言って、ユーカは目の前に迫ってきている闇のモヤを指でさした。
「むぅ…。解らぬ。」
「私も、あなたに言われるまでは気が付かなかったもの。」
迫り来るモヤから逃れる為に、ヴェルは景気良く、背後の壁を粉砕した。
ヴェルが跳び退いた後に続いて、ユーカも後ろへと下がる。
「つまり…あのモヤはなんでも吸収してしまうのが悪いクセなのよ。」
ヴェルの崩した壁の穴を通る際、降ってきた瓦礫を見事にキャッチしていたユーカは、それをモヤの方にポイっと投げて見せた。
小石大の瓦礫はまっすぐにモヤへと向っていき、しばらくした後、モヤによって跡形もなく分解され、吸収されてしまった。
「うむぅ?今のどこがダメなのじゃ?」
ヴェルはまだ分かっていない様で、頭の上にいくつものはてなマークを浮かべていた。
「最強の矛と最硬の盾、勝つのはどっちだと思う?」
「もちろん矛じゃ!」
ユーカはヴェルに、易しく説明しようと、有名なおとぎ話を引き合いに出したが、ヴェルが出した答えは相変わらずのものであった。
「盾は矛より硬いのよ?」
「じゃ…じゃあ盾にするのじゃ。」
「でも矛は盾より鋭いわよ?」
「どどどどっちなんじゃあ?」
とうとうヴェルは、頭から煙を上げ始めた。
ユーカは呆れた顔をして見せた後、ため息をひとつ吐いてから、ヴェルに言い聞かせる為に簡潔に言った。
「つまり、辻褄が合わないのよ。」
「む?そんな事は分かっておったぞ??」
「辻褄が合わない事は、どちらかが間違っている事、若しくは前提が違うって事なの。」
ヴェルはコクコクと頷いたが、表情は芳しくなかった。
しかし、それくらいで諦めて放り出すほど、ユーカとヴェルの付き合いは短くなかった。
「あのモヤは他人は吸収できるけど、自分は吸収できないのよ。」
「むっ!?確かに…。じゃが、どうやるのじゃ?」
確かにユーカの理屈は間違ってはいなかったが、ヴェルには納得できるモノではなかった。
「自分を吸収できる様にすれば良いのよ。」
ヴェルはてっきり、ユーカから難しい理屈話が披露されるとばかり思っていたが、その予想とは裏腹に、ユーカはとてもシンプルな答えを導き出していた。
しかし、ヴェルの問いを完全に解答した訳ではなかった。
「そんな事できるのかや?」
出来る訳がない、そんなニュアンスが言外に含まれていた。
だが、ここでもユーカはヴェルの予想を覆し、ヴェル予想の的中率をぐんぐんと引き下げていく。
「可能よ。フェリスなら…ね。」
「やぁ…呼んだ、かい?」
タイミング良く、フェリスが肩で息をしながら、ユーカとヴェルの後方にある通路の陰からひょこりと現れた。
「にゅわっ!」
ヴェルは先ほどのアクロバティックな回避運動の所為で疲労が蓄積していた事もあり、フェリスの接近に全く気付いていなかった。
そのため、いきなり後ろからフェリスの声がしたので、ヴェルは心底驚いて素っ頓狂な声を上げた。
しかし、ユーカはフェリスの接近に気がついていた為、いきなり後ろからフェリスの声がしても、驚く事はなかった。
「早かったわね。」
ユーカはフェリスが来る事を最初から分かっていた様な口調で、呼吸を整えているるフェリスに振り返って話しかけた。
「それは良かったよ…。それで、今はどんな状況なの?」
ようやく心拍数が落ち着いてきたフェリスは、眼に映るほとんどの映像を占めている闇のモヤを睨みつけながらユーカに問うた。
「私たちの反撃待ちってとこかしら?」
軽い口調で少し首を傾げつつ、ユーカは肩をすぼめておどけて見せた。
先程までは、主にヴェルが、必死になって回避運動を取っていた闇のモヤから伸びる腕を一瞥して、フェリスの横まで退がる。
ユーカと同じ様にヴェルもフェリスの隣まで退がり、ユーカの考え付いた攻略法をフェリスと一緒に聴くために耳を傾ける。
「何か手はあるの?」
フェリスがユーカに尋ねると、ユーカはニヤリとした笑みを浮かべて言った。
「手札はすべて揃った、ってね。」
「それを言いたかっただけかや…。」
ヴェルは呆れて首を左右に振った後、モヤをキッと睨みつけ、真剣な口調で言う。
「それで…どうしようと言うのじゃ?」
「フェリスの使う魔法、『邪法』だったらなんとかなるはずよ。」
到着して早々に、フェリスはユーカから重大な任務を与えられてしまい、困惑した。
「へ?私…??」
「そう、あなた。」
ユーカはキッパリと断言してから、フェリスに質問をした。
「ねぇ、あなたはその力、どの程度まで使えているの?」
「それはもちろん…完璧とは言わないけど、そこそこなら…。」
ユーカの問いに、最初は自信を持っていたが、次第に自信を失くした様に、フェリスは声が小さくなっていった。
そこでユーカは、先程ヴェルに抱えられていた最中に思いついた考えをフェリスに伝える。
「あなたは『邪法』を使いこなせてはいるわ。」
フェリスが自信を失くしてしまったので、ユーカはその事についてのフォローから入る。
フェリスはホッとした表情をした後、先程の弱気はどこかに行ってしまい、得意そうに胸を張って見せた。
「おぉ…。ユーカには到底真似できない仕草じゃな。」
ヴェルはユーカとフェリスを交互に見て比べると、嘆かわしいと言わんばかりに首を振った。
ヴェルが今まで静かだったのは、黒いモヤの対処にユーカとフェリスの分まで応じていたからであり、フェリスがポージングする程度の余裕ができたので、ここぞとばかりに会話に飛び込んできたのであった。
「あとで覚えてなさい。」
ピシャリとヴェルの茶々をはね除けると、再びフェリスに訴えかけた。
「使いこなせてはいるけれど、あなたならまだ進化するわ。」
「進化…?魔法がかい?」
フェリスはユーカの言葉によって、知的好奇心を刺激され、スイッチが入りそうになる。
「あなたが、よ。」
フェリスは自分に自信がないのか、選択肢に自分以外の何かが他にあると、そちらの方を選んでしまう癖があった。
「あなたの『邪法』は、おそらくだけど事象に干渉する能力だと思うのよ。」
「事象に…干渉。」
フェリスは首を傾げながら、自分なりにユーカの考えを整理し始めた。
ユーカとは違い、フェリスは短時間で再起動し、厳しい顔つきをしていた。
「確かに、ユーカの仮定は否定できない。でも、証明もできないよ。」
「それは良いのよ。今からするのだから。」
ユーカのぶっ飛んだ発言に、フェリスはユーカの正気を疑う様な目線を送ったが、ユーカはその眼を見つめ返して、自分が本気である事をフェリスに伝えた。
「わかった。それじゃあ私は何をすれば良い?」
フェリスは、観念したかの様に両手を頭の上にあげて、降参のポーズを取ったあと、どうすれば良いのかをユーカに尋ねた。
「そんなの知らないわよ。」
しかし、ここでも予想とは裏腹に、ユーカの答えは素っ気のないものであった。
ヴェル予想はおろか、フェリス予想でさえもユーカの前ではまったく当たらない似非占い師に成り下がってしまう。
「えぇ…。」
それに加えて、本気でユーカはフェリスに一任しようとしているので、その想いがフェリスにひしひしと伝わってきて、フェリスはビミョーな顔になり、ユーカを見た。
「時間は私たちでなんとかするわ。良いわね、ヴェル?」
これ以上は取り合わないとばかりに、ユーカは早々に話を切ってしまい、そのままヴェルへと移っていった。
ヴェルは先ほどのひと言が効いていた様で、しばらく静かにしていたが、やはり損な役回りが当たりそうな気配がしたので、哀しそうに吠えた。
「ぐぬぅ…。」
しかし、ない袖は振れない事に変わりはないので、ヴェルはユーカに意見具申をしておく。
「ユーカよ、我はアレを止める術を持ち合わせておらぬぞ。」
「モヤは私がどうにかするわ。あなたはフェリスの援護ね。」
「うむ、心得た。」
ユーカが会話を切り上げてモヤへと向き直り、ヴェルはフェリスの隣で不測の事態に備えて待機する。
フェリスはやるしかないと自分に言い聞かせ、心の奥底に眠る『邪法』へと静かに語りかけた。
「10分以内に頼むわよ!」
ユーカはそれだけを言い捨てると、モヤへと向かって走り出した。
ヴェルはギョッとしていたが、ユーカがモヤに魔法を撃ち始めたところで、目がスッと座り、ニヤリとした笑みで小さく言った。
「反撃開始じゃ。」
次回:第43話『帰宅』
お楽しみにお待ちください。
5月13日 21時を更新予定にしております。
感想や誤字脱字の指摘などなど
よろしければお願いし申し上げます。
申し訳ありません5月7日に書き直します。
今しばらく更新をお待ちください。
ご迷惑をおかけしますが、これからもよろしく御願い致します。
5月8日23:40分頃加筆作業を行いました。
未完成なので、翌日も加筆する予定ですので、
よろしくお願い致します。
5月11日 8:30頃に最終修正が完了いたしました。
遅くなり大変申し訳ございません。
これからもよろしくお願いします。
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