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2、謎の光
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客の男が、語り出す。
「俺の故郷は、広大な土地を持つ王国だった。……といっても、その国の名義上の主は王様なんだが、権力をそれより持っているのは土地神信仰宗教団体の教祖様ってイメージだったが」
「へえー。教祖様が。政府より、宗教が偉いというわけですね」
「街の近くにはな、大きな湖があったんだ。傍にある丘に登れば、湖を見下ろすきれいな風景が拝める。そしてそこでは、スピルの花が咲く季節に毎年、ある現象が起きた」
首を傾げる仕草をして話の先を促す少女に、男は言葉を続けた。
「夜になると、湖の東側にある森から、無数の光が空に浮かんで湖の上を飛んでいくんだ」
「光、ですか?」
男は頷く。
「まるで火の玉だ。ぼうっと光っている玉が尾を引きながら、何百、何千という数で西側へと流れていく。色も様々で、同じ玉でも動いていく過程で七色に変化していく」
そして、吐息混じりにこう付け足した。
「美しい景色だった」
「それはそれは……もしも機会があれば、この目で見てみたいですね」
この街を離れるつもりはなくとも、少女は本当にそう思っているかのように言った。
しかし男は、苦い笑みを浮かべた。
「言ったろう。これは、あまり愉快な話じゃない」
「どういう意味ですか?」
男はまぶたを少し落として、語りを再開させた。
「確かに素晴らしい現象だった。 一年に一度、たった一夜しか見られない幻想的な輝き。国全体がお祭り騒ぎになるほどに。その夜には酒やご馳走を用意して、盛大に祝ったさ」
「……」
「俺もそうだ。この美しさをずっと感じていたい。 もっとたくさんの光を見たい。 いつまでも光の群れを眺めていたい。そう感じた。……当然、国の学者連中はその光を研究した。一体あの現象は何なのか。光の正体はなんだ。それが解明できれば、もっと長い時間、光を発生させることができるかもしれない。 人工的に作り出すことが可能なら、1年に1度と言わずに、好きな時にあの景色を再現できる。それなりの額の税金が研究資金に回ったと聞いている」
「あらあら。無粋な事をしますね。そういうイベントは一年に一度の、特別なものだから素敵だというのに」
少女の感想に、男は肩をすくめる。
「そう言ってくれるな。 科学者たちの好奇心というやつだ」
「探求の心ですか。確かに、それは分かりますけれど」
「だが、最初はなかなか研究がはかどらなかったらしい。 ハンターと一緒にその森に入って光の発生源を探したこともあったが、魔物たちがうろつく危険な場所だったから、犠牲者が多く出て中断したそうだ。他にも、空を飛んでいくその光を捕獲できないか気球を飛ばしたりな」
「苦労が伺えますね」
「ふっ。……そうやって、学者たちは光について調べ続けた。 そして、とうとうある事実にたどり着いたんだ」
「光の正体に、ですか?」
男はかぶりを振った。
「そうとも言えるし、違うとも言える」
「俺の故郷は、広大な土地を持つ王国だった。……といっても、その国の名義上の主は王様なんだが、権力をそれより持っているのは土地神信仰宗教団体の教祖様ってイメージだったが」
「へえー。教祖様が。政府より、宗教が偉いというわけですね」
「街の近くにはな、大きな湖があったんだ。傍にある丘に登れば、湖を見下ろすきれいな風景が拝める。そしてそこでは、スピルの花が咲く季節に毎年、ある現象が起きた」
首を傾げる仕草をして話の先を促す少女に、男は言葉を続けた。
「夜になると、湖の東側にある森から、無数の光が空に浮かんで湖の上を飛んでいくんだ」
「光、ですか?」
男は頷く。
「まるで火の玉だ。ぼうっと光っている玉が尾を引きながら、何百、何千という数で西側へと流れていく。色も様々で、同じ玉でも動いていく過程で七色に変化していく」
そして、吐息混じりにこう付け足した。
「美しい景色だった」
「それはそれは……もしも機会があれば、この目で見てみたいですね」
この街を離れるつもりはなくとも、少女は本当にそう思っているかのように言った。
しかし男は、苦い笑みを浮かべた。
「言ったろう。これは、あまり愉快な話じゃない」
「どういう意味ですか?」
男はまぶたを少し落として、語りを再開させた。
「確かに素晴らしい現象だった。 一年に一度、たった一夜しか見られない幻想的な輝き。国全体がお祭り騒ぎになるほどに。その夜には酒やご馳走を用意して、盛大に祝ったさ」
「……」
「俺もそうだ。この美しさをずっと感じていたい。 もっとたくさんの光を見たい。 いつまでも光の群れを眺めていたい。そう感じた。……当然、国の学者連中はその光を研究した。一体あの現象は何なのか。光の正体はなんだ。それが解明できれば、もっと長い時間、光を発生させることができるかもしれない。 人工的に作り出すことが可能なら、1年に1度と言わずに、好きな時にあの景色を再現できる。それなりの額の税金が研究資金に回ったと聞いている」
「あらあら。無粋な事をしますね。そういうイベントは一年に一度の、特別なものだから素敵だというのに」
少女の感想に、男は肩をすくめる。
「そう言ってくれるな。 科学者たちの好奇心というやつだ」
「探求の心ですか。確かに、それは分かりますけれど」
「だが、最初はなかなか研究がはかどらなかったらしい。 ハンターと一緒にその森に入って光の発生源を探したこともあったが、魔物たちがうろつく危険な場所だったから、犠牲者が多く出て中断したそうだ。他にも、空を飛んでいくその光を捕獲できないか気球を飛ばしたりな」
「苦労が伺えますね」
「ふっ。……そうやって、学者たちは光について調べ続けた。 そして、とうとうある事実にたどり着いたんだ」
「光の正体に、ですか?」
男はかぶりを振った。
「そうとも言えるし、違うとも言える」
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