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ダンジョンRTA元王者。異世界に転生す
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「よし! 手ごたえあり!」
食い散らかされたカップラーメンの空容器やエナジードリンクが部屋のあちこちに散乱し、汚部屋と化している場所で、一人喜びの雄たけびを上げている者がいた。
「2100回目? それとも2101回目だったっけ? やり過ぎて覚えてないけど……過去一の走りなのは間違いない」
確かな手ごたえを感じながら隈が濃い目をゴシゴシとこする、その男の名は冥利蓮。
暗い部屋の中で2画面のモニターに顔を近づけ、デカデカとロード中と表示のある画面をこれでもかと凝視し、ゲームの記録を今か今かと待ちわびる。
「ってか、世界最速でないと困るぞ! この為に入手困難なアイテムや課金素材を湯水のごとく使ったんだ。頼む。頼むぞ……お、おぉ……」
既に疲労困憊の蓮は短く息をしながら画面と睨めっこを繰り返していると、突如ロード中の画面が再度動き出し、宝箱が散乱した報酬画面へと切り替わる。
「こい……」
ワンクリックで結果は表示される。
このワンクリックで……
蓮は目をつぶり、神に祈るように両手を合わせ。
「神様仏様……」
報酬画面のロードが終了し、目をつぶりながらマウスに手を置き、そっとクリック。そして、待望のクリア時間が表示されるその瞬間。
『NEW RECORD! おめでとうございます! グリード様のお名前を殿堂へと記録しますか?』
大音量で無機質な機械音声が鳴り響く。
NEW RECORD?
……しゃあ。よっしゃあ!
NEW RECORD それは新たな世界新記録が樹立されたという事を意味する。
「おぉ……! しゃあっ!」
蓮はその音声を耳にした瞬間、椅子から飛び降り、天に向かってガッツポーズを繰り出す。
「これでやっと全サーバーランキング1位……長かった……本当に」
蓮が長年プレイしてきたこのゲームはもう、十数年も前に発売された古いゲーム。しかも、その当時。かなりの人気があり、攻略法も長い年月をかけ、確立されてきたゲームでもあった。
俺が挑戦し続けたこのダンジョンは通称、ラストダンジョンとも呼ばれ、最難関ダンジョン。鬼畜ダンジョンとしても名高いステージだった。
このステージの最速RTA記録は随分前に更新されて以来、今まで一度もその記録が破られなかった為、理論値記録だと思われてきたが……
蓮は先ほどの走りを振り返る。
あんなギミックが隠されていたなんて。
そうして俺はそのギミックを活用し、自分独自の攻略法を確立し、ようやくタイムの縮める事に成功。
「これでこのゲームも最後か」
先ほどの興奮は何処へやら。しんみりとした表情でその場に佇み、ゆっくりと自分の席へ戻ろうとしたその時。
「なっ……」
蓮は大きく体勢を崩し、床に倒れ込む。
「な、なんだ……」
はじめは軽い眩暈かと思い、近くにあった物を頼りに立とうと思った蓮だったが、上手く立てず再度床に衝突する。
「くっ……」
手が思うように動かない。なんか、力が抜けていくような感覚というか。
これまでに経験した事のない症状に驚きを隠せない蓮。
手だけじゃない……体全体が痺れて、思うように動かなくなってきた。
これって……やばい。早く救急車を……
「だれ……か……」
精一杯の力で叫ぶが、虫が鳴くよりも小さい声しか出ない。
駄目だ。声も……
とうとう小さな声さえも出せなくなり、視界まで曇ってきた蓮。
世界記録出したかと思ったらすぐこれかよ。
思考までもが危うい状況になってきても蓮は考える事を止めず、これまでの事を思い返す。
まぁ、ここ最近碌な睡眠取ってねぇし自業自得か。
そして、想いは親へ。
……親には迷惑かけたな。二十歳にもなって仕事もせず、ゲームばっかやってきた俺だ。
人間関係に嫌気がさしていた学生時代。ゲームに逃げ、碌に就活どころか、バイトすらやらなかった。
もしかしたら、俺がいなくなって清々するって言ってるかもな。
症状が深刻化し、もう厳しいだろうなと本能的に理解する蓮。
あぁ、これで終わりか。
そして、最後に蓮が思った事。それは……
つまんない人生だったが、唯一、あのゲームに会えたことだけは良かったと思える。
まだやりたかったな。ブレイブダンジョンクエスト。
冥利蓮。ブレイブダンジョンクエストでの別名、グリード。
数多くのダンジョンでNEW RECORDをたたき出し、ブレイブダンジョンクエスト界では神として称えられていたほどに強く、そして上手かった存在。
そんなブレイブダンジョンクエスト元RTA王者は誰にも看取られる事無く、21歳という若い歳でこの世を去った……はずだった。
~~~
「ここは……どこだ?」
先ほどまで自室で倒れ込んでいたはずの冥利蓮の目の前に広がるのは、活気あふれる街の光景。
「安いよ安いよ! 今朝取れた新鮮な物ばかりだよ!」
「新しい武器が入荷したよ! ダンジョンに行く前にどうだい!」
「おい、誰かメルミンダンジョンに一緒に行ってくれる……」
おいおい。一体どうなってるんだ……
明らかに日本とは思えない街並みに、聞きなれない単語。いや、言ってる事は分かるんだが。
蓮はボケっとその場に立ち尽くしながら状況把握に努め始める。
俺って……死んだのか?
もし、仮に死んでいなかったとしよう。それなら俺は今、病院にいるはずだ。
しかし、明らかに病院とかけ離れた場所いる今現在の状況をどう説明するんだ?
もしかして、新手のドッキリか?
数々の状況を考えるが、やはり一番ピンとくるのは。
……転生と言うやつでは?
もうお馴染みの転生。蓮も人並みには小説や漫画が好きだったため、今自分が置かれている状況を瞬時に理解した。
それにな……
「明らかに異世界ですって格好の奴らが……うん?」
その時、蓮の目にある人物達が映る。
あれは……
蓮が思わず見てしまった理由。
「……まさかな」
蓮の奥底から湧き上がる興奮。
見覚えのある服装。そして、よくよく町のあちこちを見てみると、俺が知っているあのゲームと類似する点が多々ある。
もしかしたら。いや、そうであってほしいという感情の元、蓮はひどく興奮した様子で近くにいた人に話しかける。
「あの!」
「うん? どうしたんだい?」
「この町の名前って何ですか!」
「ははっ! そんな事も知らずにこの町に出稼ぎにきたんかい?」
話しかけた老人は大笑いし、蓮の肩に手を乗せ。
「ほら。あれを見てごらん」
「あれ?」
老人が指さす方を目にする。
するとそこには大きな文字で一言。
「あ、あぁ……」
蓮の目からは大粒の涙。
「おいおい。泣くほど嬉しいのかい?」
「えぇ、とても……」
蓮が不気味な程の笑みを浮かべ、涙する訳はただ一つ。
だって……この世界に来れたんだからな!
生前、蓮が文字通り、死ぬ気でプレイした伝説のダンジョンRTAゲーム。
『ブレイブダンジョンクエスト』
知る人ぞ知る玄人向けのRTAゲームとして有名で、蓮も青春をほとんど全て捧げたと言っても過言では無いほどにプレイしつくしたゲームだ。
さっきは冒険者らしき人物たちの格好を見て、ブレイブダンジョンクエストに出てきた装備に似てるなって思っただけだったけど、あの看板を目にした瞬間に、疑いが確信に。
そんな、蓮の目に映る看板にはこう書かれていた。
『ブレイブタウンへようこそ』と。
ブレイブタウン――ブレイブダンジョンクエストに登場する最初の町。ブレイブダンジョンをプレイするプレイヤーなら誰もが最初に訪れる場所になっており、序盤から終盤まで大変お世話になる町でもあった。
ブレイブタウンにいるって事は、俺もプレイヤーの一人に選ばれているはず。
蓮はニヤリと深い笑みを浮かべ、プレイヤーとしての最初の通過儀礼。
「ステータス、オープン」
自身のステータス確認へと移ったのだった。
食い散らかされたカップラーメンの空容器やエナジードリンクが部屋のあちこちに散乱し、汚部屋と化している場所で、一人喜びの雄たけびを上げている者がいた。
「2100回目? それとも2101回目だったっけ? やり過ぎて覚えてないけど……過去一の走りなのは間違いない」
確かな手ごたえを感じながら隈が濃い目をゴシゴシとこする、その男の名は冥利蓮。
暗い部屋の中で2画面のモニターに顔を近づけ、デカデカとロード中と表示のある画面をこれでもかと凝視し、ゲームの記録を今か今かと待ちわびる。
「ってか、世界最速でないと困るぞ! この為に入手困難なアイテムや課金素材を湯水のごとく使ったんだ。頼む。頼むぞ……お、おぉ……」
既に疲労困憊の蓮は短く息をしながら画面と睨めっこを繰り返していると、突如ロード中の画面が再度動き出し、宝箱が散乱した報酬画面へと切り替わる。
「こい……」
ワンクリックで結果は表示される。
このワンクリックで……
蓮は目をつぶり、神に祈るように両手を合わせ。
「神様仏様……」
報酬画面のロードが終了し、目をつぶりながらマウスに手を置き、そっとクリック。そして、待望のクリア時間が表示されるその瞬間。
『NEW RECORD! おめでとうございます! グリード様のお名前を殿堂へと記録しますか?』
大音量で無機質な機械音声が鳴り響く。
NEW RECORD?
……しゃあ。よっしゃあ!
NEW RECORD それは新たな世界新記録が樹立されたという事を意味する。
「おぉ……! しゃあっ!」
蓮はその音声を耳にした瞬間、椅子から飛び降り、天に向かってガッツポーズを繰り出す。
「これでやっと全サーバーランキング1位……長かった……本当に」
蓮が長年プレイしてきたこのゲームはもう、十数年も前に発売された古いゲーム。しかも、その当時。かなりの人気があり、攻略法も長い年月をかけ、確立されてきたゲームでもあった。
俺が挑戦し続けたこのダンジョンは通称、ラストダンジョンとも呼ばれ、最難関ダンジョン。鬼畜ダンジョンとしても名高いステージだった。
このステージの最速RTA記録は随分前に更新されて以来、今まで一度もその記録が破られなかった為、理論値記録だと思われてきたが……
蓮は先ほどの走りを振り返る。
あんなギミックが隠されていたなんて。
そうして俺はそのギミックを活用し、自分独自の攻略法を確立し、ようやくタイムの縮める事に成功。
「これでこのゲームも最後か」
先ほどの興奮は何処へやら。しんみりとした表情でその場に佇み、ゆっくりと自分の席へ戻ろうとしたその時。
「なっ……」
蓮は大きく体勢を崩し、床に倒れ込む。
「な、なんだ……」
はじめは軽い眩暈かと思い、近くにあった物を頼りに立とうと思った蓮だったが、上手く立てず再度床に衝突する。
「くっ……」
手が思うように動かない。なんか、力が抜けていくような感覚というか。
これまでに経験した事のない症状に驚きを隠せない蓮。
手だけじゃない……体全体が痺れて、思うように動かなくなってきた。
これって……やばい。早く救急車を……
「だれ……か……」
精一杯の力で叫ぶが、虫が鳴くよりも小さい声しか出ない。
駄目だ。声も……
とうとう小さな声さえも出せなくなり、視界まで曇ってきた蓮。
世界記録出したかと思ったらすぐこれかよ。
思考までもが危うい状況になってきても蓮は考える事を止めず、これまでの事を思い返す。
まぁ、ここ最近碌な睡眠取ってねぇし自業自得か。
そして、想いは親へ。
……親には迷惑かけたな。二十歳にもなって仕事もせず、ゲームばっかやってきた俺だ。
人間関係に嫌気がさしていた学生時代。ゲームに逃げ、碌に就活どころか、バイトすらやらなかった。
もしかしたら、俺がいなくなって清々するって言ってるかもな。
症状が深刻化し、もう厳しいだろうなと本能的に理解する蓮。
あぁ、これで終わりか。
そして、最後に蓮が思った事。それは……
つまんない人生だったが、唯一、あのゲームに会えたことだけは良かったと思える。
まだやりたかったな。ブレイブダンジョンクエスト。
冥利蓮。ブレイブダンジョンクエストでの別名、グリード。
数多くのダンジョンでNEW RECORDをたたき出し、ブレイブダンジョンクエスト界では神として称えられていたほどに強く、そして上手かった存在。
そんなブレイブダンジョンクエスト元RTA王者は誰にも看取られる事無く、21歳という若い歳でこの世を去った……はずだった。
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「ここは……どこだ?」
先ほどまで自室で倒れ込んでいたはずの冥利蓮の目の前に広がるのは、活気あふれる街の光景。
「安いよ安いよ! 今朝取れた新鮮な物ばかりだよ!」
「新しい武器が入荷したよ! ダンジョンに行く前にどうだい!」
「おい、誰かメルミンダンジョンに一緒に行ってくれる……」
おいおい。一体どうなってるんだ……
明らかに日本とは思えない街並みに、聞きなれない単語。いや、言ってる事は分かるんだが。
蓮はボケっとその場に立ち尽くしながら状況把握に努め始める。
俺って……死んだのか?
もし、仮に死んでいなかったとしよう。それなら俺は今、病院にいるはずだ。
しかし、明らかに病院とかけ離れた場所いる今現在の状況をどう説明するんだ?
もしかして、新手のドッキリか?
数々の状況を考えるが、やはり一番ピンとくるのは。
……転生と言うやつでは?
もうお馴染みの転生。蓮も人並みには小説や漫画が好きだったため、今自分が置かれている状況を瞬時に理解した。
それにな……
「明らかに異世界ですって格好の奴らが……うん?」
その時、蓮の目にある人物達が映る。
あれは……
蓮が思わず見てしまった理由。
「……まさかな」
蓮の奥底から湧き上がる興奮。
見覚えのある服装。そして、よくよく町のあちこちを見てみると、俺が知っているあのゲームと類似する点が多々ある。
もしかしたら。いや、そうであってほしいという感情の元、蓮はひどく興奮した様子で近くにいた人に話しかける。
「あの!」
「うん? どうしたんだい?」
「この町の名前って何ですか!」
「ははっ! そんな事も知らずにこの町に出稼ぎにきたんかい?」
話しかけた老人は大笑いし、蓮の肩に手を乗せ。
「ほら。あれを見てごらん」
「あれ?」
老人が指さす方を目にする。
するとそこには大きな文字で一言。
「あ、あぁ……」
蓮の目からは大粒の涙。
「おいおい。泣くほど嬉しいのかい?」
「えぇ、とても……」
蓮が不気味な程の笑みを浮かべ、涙する訳はただ一つ。
だって……この世界に来れたんだからな!
生前、蓮が文字通り、死ぬ気でプレイした伝説のダンジョンRTAゲーム。
『ブレイブダンジョンクエスト』
知る人ぞ知る玄人向けのRTAゲームとして有名で、蓮も青春をほとんど全て捧げたと言っても過言では無いほどにプレイしつくしたゲームだ。
さっきは冒険者らしき人物たちの格好を見て、ブレイブダンジョンクエストに出てきた装備に似てるなって思っただけだったけど、あの看板を目にした瞬間に、疑いが確信に。
そんな、蓮の目に映る看板にはこう書かれていた。
『ブレイブタウンへようこそ』と。
ブレイブタウン――ブレイブダンジョンクエストに登場する最初の町。ブレイブダンジョンをプレイするプレイヤーなら誰もが最初に訪れる場所になっており、序盤から終盤まで大変お世話になる町でもあった。
ブレイブタウンにいるって事は、俺もプレイヤーの一人に選ばれているはず。
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