元RTA王者、異世界ダンジョンに挑戦す~前世の記憶を頼りにダンジョンを攻略していただけなのに、何故か周りが俺を放っておいてくれません~

ガクーン

文字の大きさ
17 / 18

かくれんぼダンジョン その2

しおりを挟む
 よし、始まった。

 蓮は目を開き、歩き出す。


 次の目印は……あった。

 少し足を進めた所で立ち止まる蓮。


 ここからのかくれんぼは意外と簡単だ。

 蓮は地面に落ちているチカチカと光る粉を発見し、手ですくい上げる。


 これは妖精の粉といって、その名の通り妖精が羽をばたつかせる際に落とす、蝶々でいう鱗粉みたいなものだ。妖精の粉自体に価値は無いが、この粉が落ちているという事は、かくれんぼ妖精がこの場所を通ったということ。

 これから俺はこの粉を目印に森の中を駆け巡ることになる。


 蓮は手についた粉を振り払い、走り始める。

 待ってろよ! かくれんぼ妖精!


 それから蓮は粉のある方へ走り続け、粉を見つけては止まり、方向を変えて走り始めるという事を計10回ほどした時だった。


『ふふふ……人間さんはまだかな? まだだろうな……。かくれんぼ楽しいな』

 声が聞こえる……妖精か?

 静かな森の中でクスクスと笑う声が蓮の耳に入る。


 早めに見つかったな……今日は運がいい。

 いつもはもっと遠くに隠れたり、途中で妖精の粉を見失ったりして時間ロスする事が多いのだが、今日は近くに隠れていた事と粉を見失っていない事が重なり、好タイムが期待できる様子。


 蓮はゆっくり声のする方へと近づき。

 ……いた。

 木の窪みで口に手を当てながらじっとしている妖精を見つける。

 俺の気配に気が付いて、口を閉じてやり過ごそうとしているつもりなんだろうが……


 蓮は足音を立てずに慎重に妖精の背後につき。


「みーつけた」

『っ! 見つかっちゃった……』

 妖精は羽を広げ、蓮の周りを飛び始める。


『こんなに早く見つかっちゃったの初めてだよ! 人間さん、凄いね!』

「そりゃどうも」

 蓮は飛び跳ねて喜びを表現する妖精を目で追いながら。

 早く報酬をくれないかな……時間が過ぎていっちゃうだろ。

 内心、早く終わらないかと思っていた。


『僕と遊んでくれたお礼してあげる!』 

 よしきた。

 蓮は目をキラキラさせて報酬を待つ。


 これがルベリックの新緑ダンジョンが有名になった理由。精霊の報酬だ。

 精霊はこうやって、ダンジョンへとやってきた者にアイテムを授けてくれる時がある。

 それは気まぐれからであったり、こうして妖精の願いを聞いてやったりした時など、シチュエーションは様々だが。


『うーん! 開け―ゴマ!』

 妖精は空中で一回転した後に、何もない場所へ言葉をかけると、そこへ扉が出現する。

 出た。妖精の宝物庫。

 
 妖精の宝物庫――妖精にのみ自由自在に開け閉めできる宝物庫。妖精それぞれに別々の宝物庫があり、生涯をかけてその中に宝を収集していくという趣味を持っている。


『ちょっと待っててね』

 妖精はその宝物庫の中へと入って行く。


 このダンジョンを攻略する理由が、この妖精の宝物庫だ。

 妖精は本当に多くの貴重なアイテムをこの宝物庫保管している。

 それは金銀財宝だったり、珍しい武器だったりと様々だ。


 その中でも、俺が一番に狙っているアイテム。それが、スキルブック。

 スキルブックは基本、超低確率でモンスターが落とすアイテムとなっているのだが、これが本当に落ちない。

 しかも、モンスターによって落とすスキルブックはまちまちで、それらの殆どが使えないスキルブック。

 だが、このダンジョンの隠しクリア条件を達成した時にだけ妖精がくれるスキルブックの中で、俺が喉から欲しいものがある。

 それが、HP視認のスキルブック。

 このスキルブックは非常に有用で、これからのダンジョン攻略に必ず必要になってくるんだが。


 蓮を待たせる事数十秒。

『お待たせ!』

 妖精は手一杯にアイテムを抱えて宝物庫から姿を現す。


『はい! この中から選んで!』

「こ、これは……」

 蓮は妖精が持ってきたアイテムを見て、驚愕する。


 このアイテムたちは……

 目の前に差し出された3つのアイテム。

 
 蓮はドヤ顔している妖精とアイテムとを交互に見比べ。



 すげー要らないんだけど……

 蓮は冷めた視線をアイテムたちに向ける。


 なんだよこのアイテムは!

 蓮は一つずつアイテムを手に取り。


 びっくり茸に白涎鳥の羽?

 最後に至ってはただのウルフの牙じゃないか!


 やり場のない思いを内心にため込む。


 すると蓮は肩をがっくり落とし。

「白涎鳥の羽をもらうよ……」

 一見、ただの羽にしか見えないアイテムを選ぶ。


『分かった! じゃあ、また遊んでね!』

 そうして妖精は、他二つのアイテムを持ったまま宝物庫と共に姿を消す。


 蓮は妖精がいなくなった後の場所をじっと見つめ。


「はぁ……周回確定だな」

 小さなため息とともに、周回確定を確信し。

 その後すぐに出てきた帰還ポータルに入って行ったのだった。



~~~

『NEW RECORD! おめでとうございます! グリード様のお名前を殿堂へと記録しますか?』

 そんな気分じゃない。

 蓮は次の画面へと飛ばす。


『記録 2時間32分45秒』

 いい。凄く、いい記録なんだが……

 蓮は先ほどの報酬を思い出し。


 流石に報酬がこれだけって落ち込むよな……

 手に持つ白涎鳥の羽を見て、落ち込む。


 分かってた。分かってたさ。簡単に俺が欲しいものは手に入らないだろうと。

 前世でもこのダンジョンの周回を数えきれないほどやってきた蓮。


 その度にいらないアイテムと何度も顔を合わせて、モニター越しに文句をひたすら垂れ流しながらも攻略してきた日々を思い出しながらも。


 でも……これはあんまりだろ。何だよ、白涎鳥の羽って……

 内心で愚痴を爆発される。


 それから数分後。


「ふぅー。スッキリ。次いこう」

 愚痴を出し切って、すっきりした様子の顔。

 じゃあ、目的のアイテム。HP視認のスキルブックが出るまで周回し続けるぞ!


 これが地獄の周回チャレンジになるとは露知らず。蓮は今日という時間が許す限り、周回に明け暮れるのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

処理中です...