癒しの村

Yuri1980

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6.夜

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 風呂から上がり、部屋に戻った。

 アキヲは私を見ると、少し顔を赤らめて、

「風呂、行ってくる」

 そう言って、部屋から出て行った。

 私は、一日の疲れがどっとでてくるのを感じた。

 布団に入ると、瞼が閉じていく。

 しかし、眠ってしまえばいいと、目を閉じても、眠れなかった。

 アキヲの隣りで眠ることに緊張しているのだろうか。心臓は、ばくばくと脈打っている。

 しばらくすると、アキヲが戻ってくる気配がした。

 私は、眠っているふりをして、目を閉じる。

 アキヲは、私が寝ていることを確認すると、自分の布団に入った。

 そしてすぐに、アキヲの寝息が聞こえてきた。

 私は、目が冴えてくるのを感じる。アキヲが寝てしまったことにも落胆した。

 一人、取り残されてしまったことに、寂しさが心を押しつぶしていく。

 眠ろうと思っても、眠れなかった。ふと、夕飯に飲んだ梅酒を思い出す。

 酒がほしくてたまらなくなる。布団から出て、炊事場のほうへ向かった。

 アキヲは、熟睡しており、私が部屋を出ることに、全く気づかない。

 炊事場の戸を開ける。

 月明かりで、炊飯場と台所がかろうじて見えた。

 洗面台のそばには食器が洗われ、乾燥されて立てかけられている。

 私は、その隣に酒の樽があるのを見逃さなかった。

 開けてみると梅酒がつけられている。

 コップに並々とすくい、一気に飲み干した。何杯飲んだのだろうか、五杯目までは覚えている。

 いつのまにか、記憶はなくなり、意識は消えていた。

 
 
 目覚めると、ナミの母がいた。

「リサさん、大丈夫ですか?」

 私は、重い頭を上げて、周りを見渡した。炊事場には、陽が差し込んでいる。眩しさに、思わず目を細める。

「ごめんなさい、喉が渇いて、梅酒を飲んでしまったら、そのまま寝てしまったみたいで」

 寒気と悪寒がした。体は冷えてしまっている。

「風邪をひきますよ。今からでも、部屋で寝てください」 

 母親は、お酒のことは追求しなかった。本当に心配しているようで、湯を沸かし、茶を飲ませてくれる。

「ご迷惑かけて、すみません」

 茶の温もりに、涙が出てくる。また泥酔してしまった。

 誰かに絡まなかっただけ、良かったのか。何度も謝るしかなかった。

 母親に連れられて、部屋まで戻る。

 足元はふらふらして、二日酔いの気持ち悪さで吐きそうであった。

 戻ってきた私を見て、アキヲに、「酒臭い」と言われる。

 布団の中に顔をうずめて泣いた。

 何が悲しいのかもわからなかった。吐きたくても吐けず、気持ち悪さを我慢して布団の中にくるまった。
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