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初恋
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初恋
親愛なる読者様、私の恋の話を聞いてほしいー---。
この高鳴る胸の躍動、熱い想い、体中からほとばしる全ての愛は、アルク様への恋の歌。
アルク様は、私の屋敷の庭師の長男坊。
ふわふわの黒い巻き毛に、淡いブラウンの瞳、笑うとえくぼができて、可愛らしい。
私が5歳の頃、屋敷の庭で遊んでいたとき、ふわっと風が舞い、ハンカチが飛んでしまったの。
ハンカチは、大きな栗の木にひっかかり、私はどうしたらいいのか半べそになってしまった。
そのとき、アルク様がやって来て、栗の木に登り、ハンカチをとってくれたの。颯爽とやって来て、するすると木に登っていく姿は、まるで姫を助けに来た王子様のように輝いていた。
「お嬢様、ハンカチです。」
アルク様はそう言って、私のお気に入りの花柄のハンカチを、私の手元に返してくれた。
ふわりと巻き散る花びらが、私とアルク様を祝福しているかのように舞っているようだった。
木登りをしたときに枝に傷つけたのか、アルク様の掌から血が出ていたから、私はハンカチでアルク様の掌を巻いてあげた。
「ありがとう。」
と、照れたように頬を染めるアルク様が、愛しかった。
そのときにもう、私の恋の実は弾け、胸の高鳴りが抑えきれなかった。
アルク様の傷ついた手を離せず、そのまま握っていたら、頬に温かい唇の感触が伝わった。
彼から、キスをされたのだと気づいた。
私はすぐに、お母さまにアルク様と結婚したいことを伝えたわ。
「ローザちゃん、アルクは庭師の子供。あなたは、マクレーン子爵家の令嬢よ。不釣り合いにもほどがあります。もう、アルクとは遊んではだめです。」
なんと、お母様は怖い顔をして、アルク様と私を引き離してしまったの。
私に見張りの者をつけて、アルク様と会わないように監視されてしまった。
怒り奮闘、私は何とか皆の目を盗んでアルク様の小屋に遊びに行ったわ。
「だめですよ、お嬢様、私のところに来ては、お母様が怒ります。」
そのたびに、アルク様は私を追い返そうとしたけど私は負けなかった。
「アルク様、好きです。」
「アルク様、あなたの温かい胸、優しい笑顔、勇気ある行動、人が困っていたら、駆け走って助けに行く、そんなあなたが、大好きです。」
「アルク様、だから、結婚してください。」
何度も何度も愛の告白をして、想いを伝えた。
アルク様から断られても、何度も何度も、負けずと立ち直り、想いを伝え続けた。
そして15年後。
アルク様のブラウンの目は、野性的な黒い目に変わり、肩幅はがっしりと広くなり、まるで東洋の王子のように魅力的な男性になった。
何人もの女がアルク様に言い寄っていたけど、私は拳を上げて追い払ってやったわ。
私には、あの、ハンカチを取ってくれた瞬間から、アルク様しか見えなくなってしまったの。
それなのに、お母様は、私に婚約者を押し付けてきた。
お母様に言いなりの、なよなよとした公爵家の坊ちゃん。
この男と結婚するくらいなら、死んだほうがマシだった。
私の婚約が世間に知らされると、間もなく、アルク様は屋敷から去っていた。
アルク様のお父様から、「庭師の修行をするために、厳しい師匠のもとに弟子入りした」と告げられた。
アルク様のお父様は何か、私を慰めるような言葉を言っていたけど、何も聞こえてなかった。
頭の中は真っ白。
天は崩れ、嵐が吹き荒れていくように、私の体中の血が暴れていた。
ふつふつと湧き上がる、怒りのようなものが、私を゛覚悟゛へと導いていた。
荷物は最低限の物だけを、小さな鞄に詰め込んだ。
アルク様を追いかけて、今日、家を出よう。
親不孝なのかもしれない。
無鉄砲なのかもしれない。
アルク様を困らせるかもしれない。
でも、私だって、何もできないお嬢様ではないわ。
アルク様に差し入れするために、毎晩、お料理をたくさん勉強して、どんなレシピも作れるようになったから。
だから、小さな食堂でも開いて、ほそぼそとやっていけるはず。
彼が受け入れてくれるかもわからないけど、
この恋を貫きたいの。
わかってほしい、初恋の衝動は、誰にも止められない。
さあ、いざ、出発の時。
この扉の先に、新しい世界が開けるはずー--。
~完~
親愛なる読者様、私の恋の話を聞いてほしいー---。
この高鳴る胸の躍動、熱い想い、体中からほとばしる全ての愛は、アルク様への恋の歌。
アルク様は、私の屋敷の庭師の長男坊。
ふわふわの黒い巻き毛に、淡いブラウンの瞳、笑うとえくぼができて、可愛らしい。
私が5歳の頃、屋敷の庭で遊んでいたとき、ふわっと風が舞い、ハンカチが飛んでしまったの。
ハンカチは、大きな栗の木にひっかかり、私はどうしたらいいのか半べそになってしまった。
そのとき、アルク様がやって来て、栗の木に登り、ハンカチをとってくれたの。颯爽とやって来て、するすると木に登っていく姿は、まるで姫を助けに来た王子様のように輝いていた。
「お嬢様、ハンカチです。」
アルク様はそう言って、私のお気に入りの花柄のハンカチを、私の手元に返してくれた。
ふわりと巻き散る花びらが、私とアルク様を祝福しているかのように舞っているようだった。
木登りをしたときに枝に傷つけたのか、アルク様の掌から血が出ていたから、私はハンカチでアルク様の掌を巻いてあげた。
「ありがとう。」
と、照れたように頬を染めるアルク様が、愛しかった。
そのときにもう、私の恋の実は弾け、胸の高鳴りが抑えきれなかった。
アルク様の傷ついた手を離せず、そのまま握っていたら、頬に温かい唇の感触が伝わった。
彼から、キスをされたのだと気づいた。
私はすぐに、お母さまにアルク様と結婚したいことを伝えたわ。
「ローザちゃん、アルクは庭師の子供。あなたは、マクレーン子爵家の令嬢よ。不釣り合いにもほどがあります。もう、アルクとは遊んではだめです。」
なんと、お母様は怖い顔をして、アルク様と私を引き離してしまったの。
私に見張りの者をつけて、アルク様と会わないように監視されてしまった。
怒り奮闘、私は何とか皆の目を盗んでアルク様の小屋に遊びに行ったわ。
「だめですよ、お嬢様、私のところに来ては、お母様が怒ります。」
そのたびに、アルク様は私を追い返そうとしたけど私は負けなかった。
「アルク様、好きです。」
「アルク様、あなたの温かい胸、優しい笑顔、勇気ある行動、人が困っていたら、駆け走って助けに行く、そんなあなたが、大好きです。」
「アルク様、だから、結婚してください。」
何度も何度も愛の告白をして、想いを伝えた。
アルク様から断られても、何度も何度も、負けずと立ち直り、想いを伝え続けた。
そして15年後。
アルク様のブラウンの目は、野性的な黒い目に変わり、肩幅はがっしりと広くなり、まるで東洋の王子のように魅力的な男性になった。
何人もの女がアルク様に言い寄っていたけど、私は拳を上げて追い払ってやったわ。
私には、あの、ハンカチを取ってくれた瞬間から、アルク様しか見えなくなってしまったの。
それなのに、お母様は、私に婚約者を押し付けてきた。
お母様に言いなりの、なよなよとした公爵家の坊ちゃん。
この男と結婚するくらいなら、死んだほうがマシだった。
私の婚約が世間に知らされると、間もなく、アルク様は屋敷から去っていた。
アルク様のお父様から、「庭師の修行をするために、厳しい師匠のもとに弟子入りした」と告げられた。
アルク様のお父様は何か、私を慰めるような言葉を言っていたけど、何も聞こえてなかった。
頭の中は真っ白。
天は崩れ、嵐が吹き荒れていくように、私の体中の血が暴れていた。
ふつふつと湧き上がる、怒りのようなものが、私を゛覚悟゛へと導いていた。
荷物は最低限の物だけを、小さな鞄に詰め込んだ。
アルク様を追いかけて、今日、家を出よう。
親不孝なのかもしれない。
無鉄砲なのかもしれない。
アルク様を困らせるかもしれない。
でも、私だって、何もできないお嬢様ではないわ。
アルク様に差し入れするために、毎晩、お料理をたくさん勉強して、どんなレシピも作れるようになったから。
だから、小さな食堂でも開いて、ほそぼそとやっていけるはず。
彼が受け入れてくれるかもわからないけど、
この恋を貫きたいの。
わかってほしい、初恋の衝動は、誰にも止められない。
さあ、いざ、出発の時。
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~完~
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