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第五章 新しい恋に向かって
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涙で頬を濡らし目の周りが赤くなっている藤崎の顔を、真宮は熱い視線で見つめて微笑んでいた。
「あの、俺……その……」
大人びた顔を見せたかと思えば、途端に子供のようになる真宮をかわいいと思う。考えれば年下でヘテロで、不安なことはたくさんあるはずなのに、今はそれが怖くない。触れられている暖かな彼の体温が、藤崎を安心させているのかもしれなかった。
「キス、したい?」
そう聞くと、一瞬だけ目を伏せた真宮は、掠れた声で、はい、と返事をした。
近づいて来る真っ直ぐな瞳に、誘われるように吸い寄せられた。真宮はゆっくりと手を動かし、涙で濡れた頬を指先撫でる。
「泣き顔も、かわいいですね」
「かわいくなんかないよ。もう、いい歳だと……思うけど」
「いえ、かわいいです」
藤崎の唇に僅かに触れた彼の手を掴み、その手のひらを頬に押し当てた。涙でいっぱいになった藤崎の瞳の中で、彼の顔はユラユラと揺れる。それが様子を伺うようにゆっくり近づき、そっと唇にキスを落としてきた。
「塩味がする」
「ごめん」
二人でクスクスと笑えば、潤んだような真宮の黒い目の奥で何かがキラリと光る。ちゃんと彼の顔を確認したかった。けれど、あやすように何度も口付けられ、その度に自然に目を閉じてしまう。慣れていない手つきでぎこちなく触れられる感触は、じれったくてこそばゆい。熱くてやさしい彼の想いが、藤崎のやわらかい部分を愛撫する。何かが胸の中でコトリと音を立てた。
「家のことは心配しないで。ちゃんと俺が話しをするよ。さんざしだって辞めない。せっかくブーケも練習してるんだから」
「じゃあ、僕は僕のことをちゃんとする。しなくちゃいけないことはたくさんあるから」
「二人でできることも、たくさんあると思う」
「そうだね」
真宮が話す度に、近すぎる彼の唇が藤崎の唇の先に触れる。ジンと痺れるようなあまい気持ちが広がった。
「好きだよ。君のことが、好きだ」
今度は藤崎から遠慮がちに触れるだけのキスをする。やっぱり少し塩味がしたけれど、溢れる感情に押されて、口付けはさらに深くなった。顎を上げた藤崎に覆い被さるようにしながら、真宮の舌が深く探るように入り込んでくる。
「……んんっ、ぅん、ふっぁ……」
くちゅくちゅと粘膜が擦れる度に音が聞こえた。恥ずかしくて全身が熱くなってくるのが分かる。顔も耳も火を噴きそうで、けれどやめたくなくて、藤崎はゆっくりと真宮の背中へと腕を伸ばす。
「俺、年下だし美澄さんみたいに頼りになる大人じゃない。それに背伸びしようとして失敗ばっかりするし、それでも、藤崎さんを好きな気持ちだけは誰にも負けないから」
真宮の大きな手が頬を包み、親指で撫でるように何度も涙の跡を辿る。熱っぽい眼差しで見つめられ、さらに体が熱くなった。
「……うん。浩輔を亡くしてから、もう誰も好きになれないと思ってた。だから今でも……少し怖い。自分の中で真宮くんがいっぱいになっていくのは、少し苦しくて、でもうれしくて、ここが……ギュッてなるんだ」
藤崎は真宮の胸に手を当て、ここだよ、と教えるように押さえた。やさしく微笑んだ真宮はその手を取り、荒れた指先に唇を押し当てる。
「俺はとっくに苦しかったよ。ひと目惚れなんだから」
「そう、なの?」
「うん。通勤にこの道を使うようになって、藤崎さんを見たときからだと思う。無意識だったけど、今思えばそうかな」
「じゃあ、ずいぶん前になるね」
「うん……すごく前」
意外な告白に驚きながら、何度もキスをしてその後の展開をお互いに想像している。
ゆっくりと畳に背中を付けるように押し倒されながら、いつまでも真宮の視線は藤崎を捕らえて離さなかった。
「あの、俺……その……」
大人びた顔を見せたかと思えば、途端に子供のようになる真宮をかわいいと思う。考えれば年下でヘテロで、不安なことはたくさんあるはずなのに、今はそれが怖くない。触れられている暖かな彼の体温が、藤崎を安心させているのかもしれなかった。
「キス、したい?」
そう聞くと、一瞬だけ目を伏せた真宮は、掠れた声で、はい、と返事をした。
近づいて来る真っ直ぐな瞳に、誘われるように吸い寄せられた。真宮はゆっくりと手を動かし、涙で濡れた頬を指先撫でる。
「泣き顔も、かわいいですね」
「かわいくなんかないよ。もう、いい歳だと……思うけど」
「いえ、かわいいです」
藤崎の唇に僅かに触れた彼の手を掴み、その手のひらを頬に押し当てた。涙でいっぱいになった藤崎の瞳の中で、彼の顔はユラユラと揺れる。それが様子を伺うようにゆっくり近づき、そっと唇にキスを落としてきた。
「塩味がする」
「ごめん」
二人でクスクスと笑えば、潤んだような真宮の黒い目の奥で何かがキラリと光る。ちゃんと彼の顔を確認したかった。けれど、あやすように何度も口付けられ、その度に自然に目を閉じてしまう。慣れていない手つきでぎこちなく触れられる感触は、じれったくてこそばゆい。熱くてやさしい彼の想いが、藤崎のやわらかい部分を愛撫する。何かが胸の中でコトリと音を立てた。
「家のことは心配しないで。ちゃんと俺が話しをするよ。さんざしだって辞めない。せっかくブーケも練習してるんだから」
「じゃあ、僕は僕のことをちゃんとする。しなくちゃいけないことはたくさんあるから」
「二人でできることも、たくさんあると思う」
「そうだね」
真宮が話す度に、近すぎる彼の唇が藤崎の唇の先に触れる。ジンと痺れるようなあまい気持ちが広がった。
「好きだよ。君のことが、好きだ」
今度は藤崎から遠慮がちに触れるだけのキスをする。やっぱり少し塩味がしたけれど、溢れる感情に押されて、口付けはさらに深くなった。顎を上げた藤崎に覆い被さるようにしながら、真宮の舌が深く探るように入り込んでくる。
「……んんっ、ぅん、ふっぁ……」
くちゅくちゅと粘膜が擦れる度に音が聞こえた。恥ずかしくて全身が熱くなってくるのが分かる。顔も耳も火を噴きそうで、けれどやめたくなくて、藤崎はゆっくりと真宮の背中へと腕を伸ばす。
「俺、年下だし美澄さんみたいに頼りになる大人じゃない。それに背伸びしようとして失敗ばっかりするし、それでも、藤崎さんを好きな気持ちだけは誰にも負けないから」
真宮の大きな手が頬を包み、親指で撫でるように何度も涙の跡を辿る。熱っぽい眼差しで見つめられ、さらに体が熱くなった。
「……うん。浩輔を亡くしてから、もう誰も好きになれないと思ってた。だから今でも……少し怖い。自分の中で真宮くんがいっぱいになっていくのは、少し苦しくて、でもうれしくて、ここが……ギュッてなるんだ」
藤崎は真宮の胸に手を当て、ここだよ、と教えるように押さえた。やさしく微笑んだ真宮はその手を取り、荒れた指先に唇を押し当てる。
「俺はとっくに苦しかったよ。ひと目惚れなんだから」
「そう、なの?」
「うん。通勤にこの道を使うようになって、藤崎さんを見たときからだと思う。無意識だったけど、今思えばそうかな」
「じゃあ、ずいぶん前になるね」
「うん……すごく前」
意外な告白に驚きながら、何度もキスをしてその後の展開をお互いに想像している。
ゆっくりと畳に背中を付けるように押し倒されながら、いつまでも真宮の視線は藤崎を捕らえて離さなかった。
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