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少し、長い話になるからね。
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「まさか全員に逃げられるなんて!」
悔しさを隠そうともせず、雫は声を上げた。
「ごめん。全員動けなくしたんだけど、車で待機組がいたなんて」
「いや、李玖のせいじゃないわ。あたしを連れ去るつもりなら車くらい用意するって、少し考えれば分かることだったのに」
雫も李玖も、車はおろか運転免許も持っていない。だから、相手が車を使うということに考えが及ばなかったのだ。
「悔しい。あの女だけでも仕留め損ねたのは失敗だったわ。一番情報を持っていそうだったのに」
「仕方がないよ。怪我をしなかっただけでも良しとしなきゃ」
会話をしながら家路を急いだ。沙羅は雫の肩にいる。家の周りに見張りがいないことを確かめてから、李玖が祖父を迎えに出ることになった。
「遅くなっちゃったね。じいちゃん、待ちくたびれているかな」
「そうかもしれない。とにかく、迎えに行ってくる。雫は絶対に家から出ないで。夕飯食べながら待ってて」
「はいはい」
答えて、李玖を見送る。
言われたとおりに味噌汁やカレイのムニエルを温め、付け合わせのサラダをテーブルの上に出す。舌鼓を打ちながらそれらを食べていると、思いのほか二人はすぐに帰って来た。
「じいちゃん、李玖、お帰り」
「ただいま。大変だったそうだね」
「平気よ。なんともないわ」
「それならいいが…」
「それにしても、分家の狙いって結局なんなのかしら。あたしが必ず手を組むなんて、どうしてそう言えるの?」
「さぁなぁ」
「じいちゃん」
祖父の荷物を置いた李玖が、二人に近寄ってきて祖父に声を掛ける。
「十数年前、分家との諍いが起こった時のことを詳しく聞かせてくれないかな。おれたちまだ子どもだったし、詞術のこともちゃんと理解してなかったから。当時のことをよく知れば、少しは対策も立てられるかもしれない」
「そうさなぁ…。なにも知らずに巻き込まれたくはないよな」
何度か首を縦に振ってから、祖父は李玖に珈琲を淹れてくるように指示をした。
「少し、長い話になるからね」
いつも通りにクッションで丸くなっている沙羅が、一瞬だけ祖父を見た。しかしやはり、彼は何も言わなかった。
雫の母親と忠人が出会ったのは、二十三年前。当時、雫の母親はほとんど詞術を使っていなかった。記憶を奪われるのがつらかったからである。それでも契約分は沙羅に食わせなければならないから、定期的に決めた人数にだけ術を使っていた。今と同じように喫茶店を経営していた祖父は、なにも口を出さなかった。
忠人に出会ったのは、母親が友人と旅行に出かけていた時だった。友人が、貴重品が入ったポーチを失くしてしまったのだ。友人の為に、母親は迷うことなく能力を使う。ポーチが無事に戻ってきますように、と。事の一部始終を見ていたのが、たまたま同じホテルのロビーにいた忠人だ。彼はもともとホテルマンになるのが夢で、そのホテルで研修中だった。ポーチを失くしたことで、友人がホテルマンたちにも協力を頼んでいたのだ。自分の能力があるからホテルマンの協力は必要ない、と母親は言えなかった。ひたすらに能力を隠して生きてきたからである。
軽い気持ちで「まるであなたが願ったら叶ったようだ」と忠人は声を掛けた。その言葉に、母親は過剰なほどに反応した。まるで怯えているようだった、というのは祖父が忠人から聞いた。
母親はとても繊細な神経の持ち主で、その場では逃げるようにチェックアウトしたものの、後日親切に探してくれたホテルマンにお礼の手紙を出す。そこから、交際に発展していった。
もちろん、母親の専任の忍者もいた。李玖の伯父にあたる人物である。彼は李玖とは違い、ただ仕事として母親を護衛していただけで、母親のプライベートには一切関知しなかった。千年前から、こちらの方が正しい忍者の在り方である。彼らは沙羅と同じように、契約したから詞師を護っているだけで、一緒に生活している李玖が特別なのだ。
だから、母親と忠人が交際し結婚を前提にし始めたことも李玖の伯父はおめでとうございますと言うにとどめていた。
やがて、そのことを激しく後悔することになるとも知らずに。
本郷家の籍に入ってしまえば、沙羅から記憶を食われる心配が無くなる。どういうつもりなのかは知らないが、沙羅は本郷家の人間からは記憶を食わない。だから、結婚を焦っていたのはどちらかというと母親の方だった。雫の祖父は、やはりなにも言わなかった。ただ、お前の良いようにしなさいと言うだけだった。
幸せな期間はあった。母親は忠人を全面的に信頼し、夫の言う通りに詞術を使った。どちらにせよ決まった分は能力を使わなければならないのだ。結婚したことで、もう忠人の記憶から母親が消える心配もしなくていい。ならば、夫が喜ぶように力を使いたかった。
夫が詞術を商売に使っていると判明しても、母親は疑問にも思わなかった。誰に忘れられても自分がいるよという忠人の笑顔と言葉だけが、母親の生きる糧だった。
千年前から、詞師は女性だけだ。理由は判らない。契約した時の術師が女性だったからかもしれないし、たまたまかもしれない。ともかく女性だけがなれる術師だから、雫が産まれた時、忠人は諸手を挙げて喜んだ。
そしてこの時初めて、雫の母親は自分の夫に疑問を抱いた。
忠人は、それはもう雫をかわいがった。擦り傷一つ、虫歯一つも許さないと人を雇い、とにかく雫と母親を擁護した。ただ、雫の遊び相手にはなっても子育てはまったくしなかった。おむつも変えたことは無く、一緒に風呂に入ったことも無い。赤子の雫が夜泣きをすれば、自分だけが別の部屋に移った。赤子の世話は専門家にやらせるべきだとどんどん他人を雇い、金に糸目は付けなかった。その金は母親の能力に頼って来た人たちから巻き上げたものだ。そしてちょうどこの頃、勤めていたホテルの経営が傾き始めていた。忠人は、これを機にとホテルを買い取り、大幅な改革を行う。改革は見事に成功し、忠人は、今では全国展開する高級ホテルの代表となったのだ。
母親は、夫に疑問を抱きつつもそれを本人にぶつけることはしなかった。気が弱い彼女には出来なかったのだ。かろうじて、自分の専任忍者に相談をするくらいだった。李玖の伯父であるこの忍者は、なにもアドバイスが出来なかった。何故なら忍者の役目は術者が危険な目に遭わないよう護ることであり、精神面を支えることではなかったからだ。
母親は、どんどん孤独になっていく。詞師は自分に関する願いは叶えられないし、心配をかけるからと、雫の祖父の元へも帰れない。かと言って夫に強くものも言えない。育児ノイローゼに近いものがあったのだろうと、今の雫なら想像が出来る。そんな妻の様子に気付かない忠人は、母親に詞術を使うことを優しい言葉で強要する。母親は、用無しの烙印を押されるのが怖くて断れなかった。沙羅もなにも言わなかった。
一方、李玖の伯父は、まったくなにもしなかったわけではない。妻の言葉に耳を傾けるようにと、何度も進言した。しかし忠人は、端から見れば妻のことも娘のこともとても大切にしている。なにを言っているんだと躱されるだけだったのだ。
やがて雫の母親は、考えることを放棄した。
悔しさを隠そうともせず、雫は声を上げた。
「ごめん。全員動けなくしたんだけど、車で待機組がいたなんて」
「いや、李玖のせいじゃないわ。あたしを連れ去るつもりなら車くらい用意するって、少し考えれば分かることだったのに」
雫も李玖も、車はおろか運転免許も持っていない。だから、相手が車を使うということに考えが及ばなかったのだ。
「悔しい。あの女だけでも仕留め損ねたのは失敗だったわ。一番情報を持っていそうだったのに」
「仕方がないよ。怪我をしなかっただけでも良しとしなきゃ」
会話をしながら家路を急いだ。沙羅は雫の肩にいる。家の周りに見張りがいないことを確かめてから、李玖が祖父を迎えに出ることになった。
「遅くなっちゃったね。じいちゃん、待ちくたびれているかな」
「そうかもしれない。とにかく、迎えに行ってくる。雫は絶対に家から出ないで。夕飯食べながら待ってて」
「はいはい」
答えて、李玖を見送る。
言われたとおりに味噌汁やカレイのムニエルを温め、付け合わせのサラダをテーブルの上に出す。舌鼓を打ちながらそれらを食べていると、思いのほか二人はすぐに帰って来た。
「じいちゃん、李玖、お帰り」
「ただいま。大変だったそうだね」
「平気よ。なんともないわ」
「それならいいが…」
「それにしても、分家の狙いって結局なんなのかしら。あたしが必ず手を組むなんて、どうしてそう言えるの?」
「さぁなぁ」
「じいちゃん」
祖父の荷物を置いた李玖が、二人に近寄ってきて祖父に声を掛ける。
「十数年前、分家との諍いが起こった時のことを詳しく聞かせてくれないかな。おれたちまだ子どもだったし、詞術のこともちゃんと理解してなかったから。当時のことをよく知れば、少しは対策も立てられるかもしれない」
「そうさなぁ…。なにも知らずに巻き込まれたくはないよな」
何度か首を縦に振ってから、祖父は李玖に珈琲を淹れてくるように指示をした。
「少し、長い話になるからね」
いつも通りにクッションで丸くなっている沙羅が、一瞬だけ祖父を見た。しかしやはり、彼は何も言わなかった。
雫の母親と忠人が出会ったのは、二十三年前。当時、雫の母親はほとんど詞術を使っていなかった。記憶を奪われるのがつらかったからである。それでも契約分は沙羅に食わせなければならないから、定期的に決めた人数にだけ術を使っていた。今と同じように喫茶店を経営していた祖父は、なにも口を出さなかった。
忠人に出会ったのは、母親が友人と旅行に出かけていた時だった。友人が、貴重品が入ったポーチを失くしてしまったのだ。友人の為に、母親は迷うことなく能力を使う。ポーチが無事に戻ってきますように、と。事の一部始終を見ていたのが、たまたま同じホテルのロビーにいた忠人だ。彼はもともとホテルマンになるのが夢で、そのホテルで研修中だった。ポーチを失くしたことで、友人がホテルマンたちにも協力を頼んでいたのだ。自分の能力があるからホテルマンの協力は必要ない、と母親は言えなかった。ひたすらに能力を隠して生きてきたからである。
軽い気持ちで「まるであなたが願ったら叶ったようだ」と忠人は声を掛けた。その言葉に、母親は過剰なほどに反応した。まるで怯えているようだった、というのは祖父が忠人から聞いた。
母親はとても繊細な神経の持ち主で、その場では逃げるようにチェックアウトしたものの、後日親切に探してくれたホテルマンにお礼の手紙を出す。そこから、交際に発展していった。
もちろん、母親の専任の忍者もいた。李玖の伯父にあたる人物である。彼は李玖とは違い、ただ仕事として母親を護衛していただけで、母親のプライベートには一切関知しなかった。千年前から、こちらの方が正しい忍者の在り方である。彼らは沙羅と同じように、契約したから詞師を護っているだけで、一緒に生活している李玖が特別なのだ。
だから、母親と忠人が交際し結婚を前提にし始めたことも李玖の伯父はおめでとうございますと言うにとどめていた。
やがて、そのことを激しく後悔することになるとも知らずに。
本郷家の籍に入ってしまえば、沙羅から記憶を食われる心配が無くなる。どういうつもりなのかは知らないが、沙羅は本郷家の人間からは記憶を食わない。だから、結婚を焦っていたのはどちらかというと母親の方だった。雫の祖父は、やはりなにも言わなかった。ただ、お前の良いようにしなさいと言うだけだった。
幸せな期間はあった。母親は忠人を全面的に信頼し、夫の言う通りに詞術を使った。どちらにせよ決まった分は能力を使わなければならないのだ。結婚したことで、もう忠人の記憶から母親が消える心配もしなくていい。ならば、夫が喜ぶように力を使いたかった。
夫が詞術を商売に使っていると判明しても、母親は疑問にも思わなかった。誰に忘れられても自分がいるよという忠人の笑顔と言葉だけが、母親の生きる糧だった。
千年前から、詞師は女性だけだ。理由は判らない。契約した時の術師が女性だったからかもしれないし、たまたまかもしれない。ともかく女性だけがなれる術師だから、雫が産まれた時、忠人は諸手を挙げて喜んだ。
そしてこの時初めて、雫の母親は自分の夫に疑問を抱いた。
忠人は、それはもう雫をかわいがった。擦り傷一つ、虫歯一つも許さないと人を雇い、とにかく雫と母親を擁護した。ただ、雫の遊び相手にはなっても子育てはまったくしなかった。おむつも変えたことは無く、一緒に風呂に入ったことも無い。赤子の雫が夜泣きをすれば、自分だけが別の部屋に移った。赤子の世話は専門家にやらせるべきだとどんどん他人を雇い、金に糸目は付けなかった。その金は母親の能力に頼って来た人たちから巻き上げたものだ。そしてちょうどこの頃、勤めていたホテルの経営が傾き始めていた。忠人は、これを機にとホテルを買い取り、大幅な改革を行う。改革は見事に成功し、忠人は、今では全国展開する高級ホテルの代表となったのだ。
母親は、夫に疑問を抱きつつもそれを本人にぶつけることはしなかった。気が弱い彼女には出来なかったのだ。かろうじて、自分の専任忍者に相談をするくらいだった。李玖の伯父であるこの忍者は、なにもアドバイスが出来なかった。何故なら忍者の役目は術者が危険な目に遭わないよう護ることであり、精神面を支えることではなかったからだ。
母親は、どんどん孤独になっていく。詞師は自分に関する願いは叶えられないし、心配をかけるからと、雫の祖父の元へも帰れない。かと言って夫に強くものも言えない。育児ノイローゼに近いものがあったのだろうと、今の雫なら想像が出来る。そんな妻の様子に気付かない忠人は、母親に詞術を使うことを優しい言葉で強要する。母親は、用無しの烙印を押されるのが怖くて断れなかった。沙羅もなにも言わなかった。
一方、李玖の伯父は、まったくなにもしなかったわけではない。妻の言葉に耳を傾けるようにと、何度も進言した。しかし忠人は、端から見れば妻のことも娘のこともとても大切にしている。なにを言っているんだと躱されるだけだったのだ。
やがて雫の母親は、考えることを放棄した。
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