クレーンゲームの達人

タキテル

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僕の聞き間違いなのかと思った。仮に聞き間違いではなかったらの話をしよう。神谷は確か、YouTuberと言った。その単語は知らない訳ではない。むしろ、最近有名になってきた。
YouTuber(ユーチューバー)とは主にYouTube上で独自に作成した動画を継続して公開している人物や集団を指す。収入源としては動画再生によって得られる広告収入が主なもの。最近では子供の将来の夢になるほど世間を賑わせている職業の一つだ。中には億万長者になっている強者もいて夢のある仕事だと僕は認識している。そのYouTuberのコンビになってくれというのだから僕は冗談に感じていた。まぁ、あくまで聞き間違いなのだが。
「頼む! 鈴木となら名を上げるほどのYouTuberになれると思うんだ。だからコンビを組んでくれ」
 聞き間違いではなかった。どうやら神谷は真面目に誘っているのだ。落ち着け鈴木。冷静に神谷の言い分を聞こうではないか。話はそれからだ。
「説明をしてくれるかな?」
「もちろんするさ。実は前からなりたいと思っていたけど、一人で動画を撮っていくのって結構大変だろ? 撮ってくれる人がいたらいいけど生憎ワイと行動を共にしてくれるような友人はいない。しかもみんな仕事ばかりで会えなくなっているのが現状だ。動画を取るにはいかなる時にも行動を共にしてくれる人が必要なんだ。そこで鈴木が目に入った」
「なんで僕なの?」
「同じゲーム好きで話が合うし、一緒に居ても苦痛には感じない。何と言っても、無職だから都合が良い」
「…………」
 一番の理由としては無職で都合が良いところではないのだろうか。そう考えると神谷の勝手な都合に付き合わされた形になるからなんとなく嫌な感じがする。
「勿論、動画を撮るだけだから顔出しはNGにはする。鈴木はただ、ワイの姿を映し続ければそれで良い。簡単だろ? だから、ワイとコンビを組んでYouTuberとして働いてくれ」
「ちょっと待ってよ!」
 両手を合わせてお願いする神谷に僕は取り乱す。
「勝手にそんなことを言われても困るよ。僕だってそんな暇じゃないし」
「無職なのに?」
「うっ……」
 痛いところ突かれて僕は言葉を濁す。
「大体僕には将来やりたい仕事があるんだ。そんなものに付き合っていられないよ」
「将来の夢か。鈴木は何をやりたいんだ?」
「えっと、それは、その……プログラマー」
 僕はプログラマーというのを後ろめたいように言う。
「プログラマー? あぁ、ゲームを開発するようなやつ?」
「うん。まぁ、そんなところ……小さい頃からゲームが好きで将来は自分でも開発したいなって思って」
「ふ、ふふはははは!」
 神谷は突然、爆笑しだした。僕の将来の夢を大笑いされて少し恥ずかしい気持ちになる。何がプログラマーだとか思っているに違いない。
「そ、そんな笑う事ないだろ!」
「いやいや、ごめん、ごめん! そんなつもりじゃないよ。ゲームが好きすぎて作りたいと思うとか可笑しくて」
 全然そんなつもりではないか。
「ゲームはあくまでやるものだと思っていたよ。まぁ、良い夢だけどちょっと無謀じゃないかな。ワイはそう思う」
 いや、YouTuberの方が余程無謀である。そんなもので稼げるなんて考え方自体が僕からしたら爆笑するレベルだ。それに比べて僕の夢は小さい方だ。爆笑される筋合いはない。
「よし。鈴木の言い分はわかった。ならこうしよう。その夢が実現するまでの間だけ、ワイとコンビを組んでくれ。それなら文句ないだろ。な? 無職でやることないならその間だけ手伝ってくれたらそれで良い。夢が実現したら解散だ。どうだ?」
「どうだ? って、言われても……そもそもなんの動画で勝負していくつもりなの? それにもよるし……」
「よくぞ聞いてくれた。ワイが投稿していく動画はもう決まっている。もちろんゲーム動画をメインにしたものだ。特に神技を見せたクレーンゲーム動画だ」
「クレーンゲーム動画か。面白いかも」
 僕は素でそう思ってしまった。ゲームの動画を上げていくのは面白そうである。クレーンゲームをやるのは苦手だが、見るのは好きだし神谷の技をもっと見てみたいとも思ってしまった。いつも店員視点だったが、客視点は知らない。なので、少し興味が沸いていた。夢を叶えるまでの暇つぶしとしてなら悪くないと。
「おぉ! じゃ、コンビ結成だ。これからよろしく頼むよ。鈴木!」
 そんなこんなで僕はかつて職場を潰した張本人と何故かYouTuberとしてコンビを組むことになってしまった。
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