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新しい街
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しおりを挟む眠っているオーガに向かってライドが剣を振り下ろす。眠っている相手に対しての攻撃だ。外すわけが無い。
ライドの攻撃が綺麗にオーガに決まった……ようにみえた。実際には攻撃は入ったのだが、オーガの分厚い皮膚のせいで心臓まで届かなかったのである。
「グォォォォォォオ!!!」
痛みによってオーガが目を覚ましてしまった。痛くて暴れているオーガに当たらないよう俺とライドは距離を取る。
「くそっ。悪いソラ」
「大丈夫だ。加勢するぞ“風よ”」
風魔法を使ってオーガと俺たちの間に風の壁を作る。これで向こう側からこちらには来れないようになる。反対にこちらからの攻撃は通るようになっている。
「ライドやれるか?」
「同じところを剣で刺せばいけるかもしれない。少しの間動きを止めておいて欲しい」
「わかった」
もう一度風魔法を繰り出し、オーガの四方に風の壁を出す。これでオーガは身動き取れないはずだ。
それに加えてオーガの手足にも風の枷をはめておく。
「よし!!いいぞライド」
「よっしゃぁぁ!!」
先程傷つけた場所に寸分の狂いもなく同じ場所に剣を刺し、剣に火魔法をかける。剣先から炎が吹き出し、体の中から焼いている。次の瞬間オーガが炎に包まれ、叫び声を上げながら倒れていった。
鑑定をしてオーガが死んだことを確認して近づく。討伐したことが分かるようにオーガの角を切り取る。
「ちょっと焦ったけど難なく倒せたな」
「思いの外硬かったけど、ライドの剣が通用して良かったよ」
「まだまだ剣を作り直さないといけないな。そのためには鉱石が必要だ」
「じゃあ次の依頼は洞窟探索にしようか」
「助かる」
探索をかけ辺りに魔物がいないことを確認して街に戻る。報酬として銀貨8枚を貰ったのでライドと分ける。
「キースさん。この辺りに武器が作れる鉱石のある洞窟ってない?」
「この辺りの洞窟は軒並み採掘し尽くされてると思うけど…あ、ひとつあったよ」
キースさんは席を外すと数分後に地図と依頼書を持ってくる。依頼書にはハインド洞窟の探索 報酬金貨10枚と書かれてあった。
「洞窟探索が金貨10枚!?高すぎない?」
「ちょっと訳アリの洞窟でね。魔物はそこまで強くないみたいなんだけど、行くまでの場所に毒霧や毒沼があるらしくて。普通の冒険者なら行けないけど
聖魔法を持ってるソラ君なら行けるはずだ」
確かに聖魔法に状態異常を治す魔法も、空気を清浄化する魔法もあるから毒に侵される心配はないな。まだ使ったことは無いけど大丈夫なんだろうか。
「けど毒消しの薬も売ってるだろ?それを使う冒険者はいないのか?」
「毒消しひとつ金貨1枚するんだ。この洞窟の広さも分からないのにそんなに無謀な事をしないよ」
「そうか。ソラさえよければ頼みたいけど」
「俺はいいよ。毒消しの魔法が使えるかの検証にもなるし。明日依頼受注でもいいですか?」
「構わないよ。誰も受けたがらない依頼だからね」
「ありがとうございます。また明日来ます」
そういって俺たちはギルドを出た。その話を聞いていた冒険者がいた事に気付かずに……。
次の日、俺はライドと待ち合わせてギルドへ向かった。初めての洞窟探索だ。何日程かかるか分からないので数日分の食事をアイテムボックスに収納しておく。
ギルドに入るとキースさんと目が合う。キースさんはどこか困ったような顔をしていた。
「おはようございますキースさん。どうしたんですか?」
「あ、ソラ君、ライド君おはよう。昨日話していた洞窟なんだけど他の冒険者が行っちゃったみたいで」
「そうなんですね。じゃあ俺たちは依頼を受けられないんですか?」
「いや、依頼は受けられる」
「なら心配することはないな。俺たちは依頼を受けて鉱石さえ取れればいいんだから」
「そうなんだけど、洞窟に行った冒険者達が問題であって」
「何が問題なんです?」
「先に行ったのは白銀の獅子達だ」
白銀の獅子…聞いたことがあると思ったら2ヶ月前俺に絡んできた冒険者達だ。確か小さい奴隷を連れてた。でもCランクの冒険者達だよな。Eランクでもできる洞窟探索でなんで問題なんだ?
「彼らに聖魔法を使える仲間がいないんだ。あのままじゃ彼らは毒に侵されて死ぬかもしれない」
「それは自業自得ですね」
俺たちの話を勝手に盗み聞きして、勝手に洞窟に行ったのはあの男達だ。だから死のうが何しようが俺達には関係ない。
「珍しいな。ソラがそんな事を言うなんて」
俺もそう思う。普段の俺だったらついでだし見ておきますぐらい言いそうだ。だけどあの奴隷にされた子をみると、あの冒険者たちに同情する気が全く起きないのだ。
「まぁソラ君もライド君もついででいいからあの冒険者たちがいることを覚えてて。もしかしたら毒池の前で立ち往生してるかもだし。それに魔法を使ってる時に狙われる可能性もあるからね」
「分かりました。ありがとうございます」
「俺もちゃんと見とくよ。辺りを把握出来る優秀な鼻もあるからな」
「じゃあ気をつけて。これに洞窟探索で注意することが書いてあるから1度は読んでね。行ってらっしゃい」
キースさんに丸められた紙を渡される。軽く目を通すと洞窟探索におけるマナーみたいなものが書いてあった。鉱石や宝箱の取り扱い、他の冒険者と出会った時の行動などが書いてある。
「ありがとうございます。行ってきます」
貰った紙をカバンに仕舞うとライドとともに洞窟へと向かった。
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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