転生したら人間じゃなくて魔物、それもSSSランクの天狐だったんですが?

きのこすーぷ

文字の大きさ
6 / 11

六話 初めての街。そして、変態?

しおりを挟む

 鈴虫の奇麗な音色が、この静かで幻想的な森の中で木霊する。
 森に背を向けぼーっと座っていれば、ぱちぱちと木が燃えてはじける音が聞えてきて、なんだか心地良い。
 不意に空を見上げれば、黒く穏やかな夜空を照らす月が、暖かな光をこぼしていた。

「もうすぐだね」

 僕は視線を落として、目の前に座っているリアに声を掛ける。

「うん。明日には、つくね」

 目をコシコシと擦りながら、リアはそう答えた。
 もう夜も遅い、眠たいのだろう。

 洞窟を出て早5日。
 森で狩りをしながらここまで進んできた。
 道に迷いながらも、ここれまでの旅は楽しかったと言えるだろう。
 それも、リアが居てくれたからだ。
 もちろん、ハクアも忘れてはいけない。

 ハクアは、元の世界で言う博士のような知識者で。
 食用の木の実や山菜など、様々なことを知っていた。
 とても助かる。

「今日はもう寝ようか」
「うん」

 リアが僕によってくる。

「今日も、触ってて、いい、かな?」

 眠たそうにトロンとした蒼い瞳が、僕を上目遣いで覗いてくる。
 出会ったときとは違い、輝きを取り戻した美しいブロンドの髪が、夜風に吹かれふわりと舞う。
 
 そんなリアに、僕は頷き背を向ける。
 すると、僕の尻尾にリアが抱きついた。

「ん~……もふもふして、きもち、いい」

 少し前からだ。
 リアは僕の尻尾に目を付けて、寝るときはいつも抱き枕にされている。
 僕も一人で洞窟を進んでるときは、よくしてたけど、気持ちいいんだよね。
 僕の愛用だったはずなんだけど……まぁ、喜んでくれるなら、それはそれでかまわない。

「ん……すぅ」

 寝るの早っ!
 もう寝息を立て始めたリア。
 顔を尻尾にすりすりと擦りながら、リズムのいい呼吸をしている。
 そんなリアを見たからか、強い眠気が襲ってきた。

「さて、僕も寝よう……」
『おやみなさい、マスター』
(うん、ありがとうハクア。それじゃ、魔物が来たら教えてね)
『はい、かしこまりました』

 ハクアの声を聞いて、僕は眠りの渦に飲まれていった。


 ――早朝。
 少しだけ肌寒いが、僕達は起床した。
 今日は、この先に見えている街へと足を運ぶ予定である。

「ねぇ、コハク? その耳と尻尾、隠さなくていいの?」
「あ、そうだった。忘れてたよ」

 確か念じるだけでいいってハクアが言ってたよね。
 僕は、耳と尻尾に意識を向けた。

「あ、引っ込んだ……すこし物足りない、ね?」
「ん? そうかな」
「うん……あ、寝るときは、また、出してね?」
「僕はリアの抱き枕か何かなの……」
「え……うん。そう、だよ?」

 そんなの当たり前だよ? って顔しながら言われても!?
 僕はそう言いそうになるのを堪えて、一呼吸置き口を開く。

「と、とりあえずっ! 今日は街に行く。そこで宿を取って……って、あ。お金どうしよう」

 どうしよう、考えてなかった。

「だいじょう、ぶ。働けば、すぐ、だよ?」

 わお、リアって意外と積極的。

「コハクが」

 でもなかったか……。
 いやね、うすうすそんな気はしてたよ?
 でもそこは、私達でって言って欲しかったかな!?

「いや、リアも一緒に働こうよ?」
「…………早く、行こ?」
「あれ、返事は? 返事はーーっ!?」

 僕を置いて先に歩いて行くリア。
 くそう、絶対に道連れにしてやる!

 こうして、僕達の一日が始まった。



 ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △



「大きいなぁ」
「うん、そうだね」

 僕とリアは、門の前までたどり着くと、思わず口をこぼした。
 おそらくこの街を全て囲んでいるのだろう城壁と、十メートルはありそうな巨大な門。
 その前には、検問を行っていると思われる兵士が睨みをきかせている。
 まずはあの人達に声を掛けないといけないよね

「あ、あの……街に入りたいんですけど」

 コクコクとリアが隣で頷いてる。

「君達だけかい?」

 ぱっと見、とても怖そうなおじさんだが、僕達を怖がらせないためか微笑んできた。
 なんか、いい人みたいだ。

「はい、そうです」
「そうか、それじゃ身分証明書を見せてもらえるかい?」
「身分証明書……ですか?」
「もしかして、持ってないのかい?」
「はい……」

 どうしよう、不審がられたかな。
 流石に野宿は街を目前にしてるんだし、辛いなぁ。
 リアは黙ってるし……。

「まぁ、子供だからそういうこともあるか……」

 おじさんが呟いた。

「その様子だと、お金も持ってないみたいだしな。しょうがない、今日はおまけだ。その代わり、お金が出来たらちゃんと払いに来いよ?」

 なにやら、通してくれるらしい。
 僕とリアの容姿が少し幼いからかな、どっちにせよ助かった。

「ありがとうございます!」
「おう、良いって事よ。んじゃとりあえず、冒険者ギルドに行くといい。そこで身分証明書は発行できるからな。場所はここを真っ直ぐ進んだところだ。大きい建物だからすぐに分ると思うぞ」
「わかりました、助かります」

 僕はそう言ってお辞儀をすると、その場を後にする。

「へぇ、これが……」
「賑やか、だね」

 門を抜けて街に入ると、目の前に広がる光景に僕達は感嘆の声が出た。
 所狭しと建物が並び、屋台などでは売り子と覆われる人達が、大きな声を上げて呼び込みをしていた。
 そして、辺りにを通っている人達の表情は楽しげで、それだけでこの街の治安が良いことが分る。

 僕達はその中を進み、冒険者ギルドを目指していく。
 道中、甘いタレの焼けた良い香りが鼻をくすぐったが、今はお金が無い。
 食べたいけど……今は我慢だ。

 さて。
 冒険者ギルド……冒険者ギルド。あ、あれかな?
 鎧に身を包んだ数人が建物に入っていくのが見えた。
 たぶんあそこで間違いないだろう。
 建物も大きいし。

「ここであってるよね?」
「うん、あそこに冒険者ギルドって、書いてある」

 なら間違いなさそうだ。
 僕はドアノブに手を掛けて、扉を開いた。

「んあぁぁぁぁぁっ! もっとおぉぉぉぉっ!」

 バタン。

「…………」

 僕は無言で扉を閉じた。
 え、何今の。
 女の人が男の人のお尻を鞭で叩いてた……。

 いやいやいや、そんなわけ無い。
 ここは冒険者ギルド。屈強な人達がいて、少し怖い場所のはずなんだ。
 僕の読んでた小説ではそうだった。
 よし、もう一回。

「おらおらおらぁぁっ! もっと言い声で泣きなよ!」
「ふぁぁぁぁっ!」

 あ、これ駄目なヤツだ。
 放送禁止だよっ!? 

「ねぇ、コハク? あれ、なにしてる、の? あの人、喜んでる。コハクも、してほしい?」

 まてまてまてぇぇっ!
 僕はMじゃない! して欲しくないぞ!

「ん……?」

 リアさん? そのいつの間にか握っている鞭。しまってくれませんか?
 あわわ、駄目だ! リアの教育に良くない!

 僕はリアの手を引っ張って、その場を走り去った。

 ――どうしよう。この世界のギルドは変態の集まりのようです。
 
  


しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...