SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

居酒屋偵察その1

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 反省会が終わると、女の子SSたちはさっさと4階の自分の部屋に行っちゃったよ。

 ひとりひとり自分の部屋を与えているから、夜遅くまで何かやっているみたい。
 事務所に残ったのは俺とジンと、キキン都庁舎から帰ってきた・アハート秘書のハヤテとエース。
 男スライム4名だね。

「この近所の居酒屋で《元祖サラダ刺し身》って看板が出てましたよ、お父さん!」
「そういや、老舗ってのもあったよね」

「元祖ねえ」

 日本の団子や饅頭の店で、老舗◯◯とか本舗とか元祖とか看板に書いてるアレだな。
 この世界のお客さんが、本気で元祖だと思っているとは思わないけどね。

「偵察がてらにちょっと、食べに行きませんか、お父さん」
「いい事いうねえ、ジン」
「居酒屋、行ったことないんだよなあ、刺し身、美味いのかな?」

 SSたち乗り気だね。

 俺を含めてみんな、西表通りは外国客が多いくらいしか知らないから、偵察は賛成なんだけど、 
 もう20:30分をまわっているから、たいした偵察が出来ないだろうね。

 たぶんジンは、さっき仕事から帰ってきたハヤテとエースと俺と、いわゆる男スライムで飲み屋に繰り出したいんだろうね。
 最近ジンは、お酒に目覚めたよ。
 夜、皆が寝静まった頃、部屋でちびちびエールを飲んでいるのは知っている。

 俺も酒は嫌いではないね。
 日本人だった頃は、先輩の付き合いで、よく飲み屋に付いていったよ。
 もっぱら、先輩が狙っているお姉ちゃんに、良いとこ見せるための引き立て役だけど。

「OK、いいよ。さっそく行ってみようか」

 深酒しなければ問題はない。
 千鳥足になるほど酒を浴びると、人間の形をとどめているつもりが、少し崩れたり、脚が3本になってたりするから要注意。

「よーし。飲みまくるぞ~」

 嬉しそうだなあ、ジンは。

「そうそう、みんな、何かあっても素性がバレないよう、別の顔にしとくようにね」

「はーい!」

 顔面を変化させ、別人に成りすましておけば、うっかりスライムとバレても俺たちだと分からないよ。


 ◆

 
 この世界に電気はない。
 夜になると月明かりだけが頼りかと思うと、そうでもないよ。
 
 西商店街や東商店街、それからここ西表通り宿泊街は、10メートル間隔で松明やランプが焚かれ、飲み屋や居酒屋の出入り口には提灯(ちょうちん)。窓からは漏れた明かりが路面を照らしているね。
 それに夜間パトロールの自衛軍がランタンをかざしている。
 外区でも繁華街は、そこそこ明るいね。

「ここですよ、お父さん」

「ほんとだ、《元祖サラダ刺し身店》と提灯に書いてますね。
 あれ? あっちには、《刺し身発祥の店》、こっちは《キキン名物・刺し身》って」

 外国人客狙いなんだ。

「どの店にしますか、お父さん」

「ジンに任せるよ」

「じゃあ、あそこにしましょう!」

 ジンが選んだ居酒屋は、《キキン国名物・刺し身の品揃え、No.1》
 と書かれた長い提灯が入り口の両サイドにかけてあり、『従業員募集』と掲示もある。
 繁盛店みたいだね。

 期待して入った店内は、俺が思うような活気溢れる居酒屋とはかなり違っていた。

 ウエイターらしき1名。
 らしき、と言ったのは、『いらっしゃいませ』の一言もないし、俺と目が合っても愛想笑いもない。
 首から垂らした青いエプロンは手垢だらけ。ぼさぼさの頭髪。無精髭を伸ばしているから。
 
 入り口で案内を待っていたんだけど、ウエイターも厨房の料理人も動かない。
 さっさとそこらへん座れよ、ってわけだね。

 見渡すと、店内50席もある客席は、お客さんがたったの3人。
 居酒屋が夜に繁盛しなかったら、最悪だ。
 まあ、感じ悪い店だから仕方が無いか。

 そういや、ここらへんの店舗経営者はアシダダムじゃないのか、そんな気がする。
 ヤツらしい従業員教育――、教育って呼べるもんでもないか。

 俺たちは厨房の中が見えるカウンター席に座ったよ。
 作業場を見れば、料理人の技量が分かるからね。
 
「……、……」

 う~~ん。
 魚の管理、整理整頓、衛生具合とかいう以前に、とりあえずチェスはやめようか!
 客用の椅子を厨房に持ち込んで座り、木箱を逆さまにしてチェス盤にしている。
 タバコをぷか~っとふかしたね。
 モラル最低。

 ウエイターから投げるように渡されたメニュー表には、ワイン、ビール、シードル(りんご酒)があり、
 ツマミにパン、チーズ、豆、煮物、の他にずらりと刺し身が記されていた。

 タイ刺し身 600ギル
 あじ刺し身 450ギル
 いわし刺し身 500ギル
 さば刺し身 500ギル
 イカ刺身 500ギル  
 さんま刺し身 500ギル
 ぶり刺し身 600ギル
 本マカト刺し身 500ギル
 中トロ刺し身 980ギル

「流石はキキン1の品揃えだ。中トロまであるなんて凄いな」
「さんまの刺し身って珍しい。さばも。ねえ、お父さん」
「ここの居酒屋、やるなあ」

 SSたちは関心しているみたいだけど、
 俺に言わせれば、さんま、さば、中トロ……この3品は揃えるべきじゃないね。

「おい! そこの4人。注文は決まったか?」

 厨房の2名のうち、店主らしき偉そうな男がイライラしながらそう言った。
 イライラしているのは、チェスの形勢が悪いから。
 
「忙しいんだよ。さっさと注文ろよ」

 暇の間違いだろ?
 まあ、いいよいいよ。

「メニュー表の刺し身は、どれでも注文できるわけ?」

「ああ、問題ない」

「4人が4人とも同じ刺し身を注文しても?」

「しつこい客だな。たのむなら、さっさと注文したらいいだろ」

「わかった、わかった」

 タイ、さば、さんま、中トロの刺し身を1つづつ、ビールを4つたのむ。
 厨房の2人が、チェスを止めて刺し身にとりかかったよ。
 ちゃんと、水で手を洗ってはいる。洗剤もつけて。
 ちょっと意外。

 刺し身の造り方を見たかったけど、2名の背中しか見えない。
 まあ、いいか。

 俺はSSたちに心話をする。

『みんな。まだ刺し身を食べてないけど、どう思う?』

『どうって……、良いんじゃないですか。メニューが豊富だし。接客は酷いけど。
 頑固な店主――、実は凄腕の料理人とか』
『さんまの刺し身は、珍しいよ』

 みんな先に運ばれたビールを飲みながら頷く。
 
『変だと思わない?』

『……変? お父さんは変だと』

『まあね』
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