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あれは賀子が初めてヒートになった時のことだった。


親達も一緒に賀子の家にいた時に起こった。


こわいこわいと泣きながら、母親に抱かれて連れていかれる賀子。


俺はヒートを起こすと危険だからと親に肩を押さえられていた。





あの時の怖がっていた賀子の表情が焼き付いて離れなかった。




そして追い打ちをかけるように、賀子のヒートの前後は俺は賀子の家に入れなくなった。

当たり前なはずなのに悲しかった。



そしてそこから賀子はどこか俺によそよそしくなって、距離を置くようになった。



アルファの俺がこわかったんだろう。


だから俺は、賀子を怖がらせないように努めた。




いつか賀子が俺を怖がらないようになるまで。





だけど、それがそもそも間違っていたんだと今ならわかる。


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