転生したって、マジですか?

土田

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水崎 智香はイラついていた

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私、水崎 智香はイラついていた。
本当の本当に、最高にイラついていた。
どれもこれも全て……


「智香ちゃーん!見たよ見たよ!今日男子に告白されてたでしょ!やーだーもー智香ちゃんモッテモテー!」


―ブチッ

そう音を立てて、私の中で何かかが切れた。


「おま!!えの!!せい!!だろ!!がぁーーーーーーーーーーーい!!!!」


そう、全てこの女、上城 まりあが悪いのだ。


「おお、落ち着け智香!ほら、深呼吸!な?」

「落ち着け!!?落ち着けって何!!?え!!?一年の頃からさんざん忠告したのに色バカルート一直線で人をからかってくるバカを目の前にして落ち着ける!!?ねぇ!!!このバカを目の前に!!!私の平穏な日々を返せって思わない!!?」

「は?色バカルート?」


私を落ち着かせようと頑張る浮島  遥斗に八つ当たりのごとく言い返していると、思わぬところから声が上がった。


「え、待って?これ、色バカルートなの?」


一ノ宮 優が、意味がわからないとでも言いたげな顔で問うて来る。
あれおかしいな一ノ宮 優も一年の頃からの付き合いなはずなのにな。


「優くんは、本当に駿くん以外に興味ないんだね。」

「まぁね!あー、でも、私たちがなんとなーくまりあよりも智香の方が好感持てるのってそれが原因だったりする?」

「ぼくはまりちゃんもともかちゃんも好きだよぉ~!」

「でもどっちかとしか遊んじゃダメって言われたら?」

「う~ん、どっちかって言われたらともかちゃんかもぉ~!」

「え、マジで!!?」


いつもにこにこしてかわいいことしか言わない橘 葵にまで見棄て(?)られ、いよいよ焦ったのか、上城 まりあはウーウー唸って、意を決したように言葉を発した。


「あ、あのさ!スッゴい今さらなんだけど、その……色バカルートって、なに?」


時が、止まった。


「……『キミトワ』、やったことねーの?」

「ない!私ゲームは全くやらない!」


坂西 駿一の質問にはっきりきっぱり答えた上城 まりあに、誰もが唖然とした。
おお、神よ……なぜゲームをやったこともないやつをこの世界に、しかもヒロインに転生させたのですか……。
いや、むしろ神なんていないとこれで証明されたのでは?


「……私、散々色バカルートは回避してって言ってたわよね?」

「あー、うん。あれ、ぶっちゃけ意味わかってなかったんだよねぇ!」


撃沈だ……完全に撃沈だ……。
私の一年間を返して欲しい……。
切実に。
切実に。


「あー、今からでも間に合わないかな?俺らも協力して勉強とか運動とか教えるし。」


普段自分にしか興味ないような黒須 正義が優しく声をかけてきた。
余程、私が哀れに見えたのだろう。
実際、他の言葉では言い換えられないほど哀れだし。


「わ、私だって自力で調べてみようと思ったんだよ!でもさ、よくよく考えてみたらここって『キミトワ』の世界なわけで、『キミトワ』とか色バカルートって検索してもなにも出てこないんだよね!いやーまいったまいった!」

「本物のバカかよ。引くわ。」


「もー!なによー!」とかなんとか言ってプンプンと怒る上城 まりあ。
私の忠告に「おっけー!まかせて!」とかなんとか言ってた上城 まりあ。
自信満々にただいま絶賛色バカルート爆走中の上城 まりあ。

もう、涙も出ない。


「一応、説明してやる。」


今現在も前世でもかなりのゲーマーでありゲーム実況等もしていた坂西 駿一が、説明を買って出てくれた。
今の私には気力がないし、彼ほど『キミトワ』をやりこんでいる人間もそういないだろうから本当に助かる。


「まず、『キミトワ』は括りとしては恋愛シミュレーションゲームだ。」

「それは知ってる!私、つか上城まりあが皆と恋愛するんでしょ?私はする気ないけど。」

「まぁ、簡単に言えばそうだが、でもその実態はそうじゃない。」

「え?どう言うこと?」

「『キミトワ』は、恋愛"だけ"をするゲームじゃない。プレイヤーは主人公である上城まりあになり、上城まりあを生きる、言わば圧縮版人生ゲーム。」

「圧縮版人生ゲーム?」

「圧縮版と言ったのは、プレイヤーが上城まりあとして生きるのはたったの5年間、中学一年から高校2年までだからだ。だが、その5年間で人生が決まる。まず最初の分岐は高校受験。入学前のステータスによって入試方法が変わる。知力が高いと学校推薦。体力が高いとスポーツ推薦。そして、魅力が高いと、」

「まさか、一芸入試?」

「まさかも何も、お前はそうなんだろ?」

「いや、そうだけど!そうだけど……あ!も、もしかして……」

「あぁ、ファンの間ではこの三つをそれぞれ、ガリ勉ルート、脳筋ルート、そしてバカルートと呼んでいる。」

「え?色バカじゃないの?」

「それは次の年、高校一年での生活で決まる。入学前のまま知力を伸ばし続けるとガリガリ勉ルート、体力を伸ばし続けると脳筋マッスルート、そして魅力を伸ばし続けると、色バカルートだ。このそれぞれのルートに入ると、攻略対象との恋愛モードにはならない。」

「あー!だから私より智香ちゃんの方が好感持てるってことなのか!」

「それもあるだろうが、それだけじゃない。色バカルートの上城まりあが目指すのは、アイドルだ。まずは学園のアイドルになるべくステータスをあげていくんだが、魅力はそのまま伸ばし続け、今度は知力も体力も程々に伸ばしていかなきゃならない。そのサポートとして攻略対象が登場する。」

「さっき勉強とか運動とか教えてくれるって言ったのはそれ?」

「たぶん、このルートに入った以上は、それが俺らの役目なんだろうな。」

「でもでも、智香ちゃんが告白されてたのは関係なくない?」

「さっきも言ったが、上城まりあはまずこの学園のアイドルを目指す。そこで邪魔をするのがライバルである水崎智香だ。このルートでの水崎智香は女からの信頼が厚く、そしてとにかく男にモテる。」

「……そんな状況の智香ちゃんを、私はからかった、と。」

「そういうことだな。」


説明が終わり、少しの沈黙がその場を支配した。
上城 まりあは、うつむきますてプルプル震えている。
おーおー今頃罪に気付いても許してやんないからな。


「あの、さ、私が今からでも勉強なり運動なり頑張ったらさ、どうなるの?」

「アイドルには、今からだとなれないとは思うが、男子人気や女子からの信頼は智香と二分するくらいにはなはんじゃないか?」

「……男子人気とか、別に要らないんだけど。」


こ、こいつ……!!!
まさか何もしないつもり!!?
私を犠牲に青春を謳歌するつもりなの!!?


「アンチ減るんじゃね?」

「え?」

「お前、前にネットにあげたコス写ボロクソ言われてんじゃん。」

「なんで知ってんの!!?」


そ、そうだったのか。
まぁ、私も何となく転生オタ仲間として一緒にいるけど、普通に出会った女としてなら、この上城 まりあは友達にはならないタイプかもしれない。


「合わせも人数集まんないし、イベントとかでも避けられてるし。そういうの無くなんじゃねーの?」

「あーもー!!!バラすな!!!ハブられてんのバラすな!!!やるから!!!これから頑張るから!!!」


浮島 遥斗……恐ろしい子……。
敵には回さないようにしよう。


「でも私、ごほうびないと頑張れない……。」

「仕方ないわね。本当に頑張ったら、一緒に合わせしてあげるわ。」

「えぇッ!!?」

「智ちゃんコスするの!?」


何をそんなに驚いているのか。


「私、今世ではハイスペックオタになってオタライフを満喫するために色々やってきたのよ?裁縫にメイクに、なんなら撮影から加工も一通り全部できるわ。まだ宅コスしかしたことないけど。」


とりあえず以前自撮りしたコス写を見せてみる。
水崎 智香って元がいいし、努力の甲斐あって悪くはないと思うのよね。


「……ねぇ、智香ちゃんが男子にモテんのってさ、私だけのせいじゃなくない?」

「そんな気するな。」


上城 まりあと浮島 遥斗が人の写真を見ながらブツブツ言ってる。
なに?disってんの?

やっぱりイライラはおさまりそうにない。

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