夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎

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第17話 ぼくの自信作

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*父との野球の話
日本のサラリーマンは土曜と日曜が休みであることが多く、その2日の休みというのは日本人にとって大変貴重なものである。そんな貴重な日曜日なのだが、たまにしか遊んでくれなかった父が、珍しく公園で一緒に遊んでくれたことがあった。

二人して公園に行き、交代でピッチャーとバッターをやって野球をやることになった。ぼくはあまり野球とは縁がなかったので、こういう感じで遊ぶのは初めてであり、その日は父の機嫌も良かったので凄く楽しかった。

「けんたろうもやるようになったじゃないか。もう父ちゃんと変わらないな」
「そうでしょ?だって、ぼくもう2年生なんだよ!」
「そうだな、大きくなったもんだ」

それから何度かバッティングを続け、そろそろ飽きてきたということで道具をその場に置いて、少し離れた所にあるブランコを後ろから押してもらって漕ぐことになった。暫く漕いでいたのだが、次第に辺りも暗くなり、
「父ちゃん、だいぶ暗くなってきたね」

「そうだな。日も暮れそうだし、もうそろそろ帰るか」
「え~もう一回やろうよ~」
「しょうがないな。もう一回だけだぞ」

それから再度ブランコを漕いで、
「約束だからもう帰るぞ」
「うん、そうだね。帰ろう」

そう言って家路に就いたのだが、なんと目を離した隙に、バットとグローブとボールが盗まれてしまっていたのだ。父が怒り出すのではないかと不安に駆られたが、発せられた言葉は意外なものであった。
「ちゃんと見とけばよかったな~。ごめんな、けんたろう」

普段から無遠慮で怒りやすい父であったが、ぼくはこの時ばかりは尊敬できる人物であると感じた。父は『謝ることが出来る人』であった。現代社会において、自分の非を頑なに認めない人間が多い中、自分の子供に対しても真摯に向き合うことができていた。

「ううん、いいよ」
「また今度、買ってやるからな」
そう言って帰ったその日は、ぼくにとって数少ない父とのいい思い出であった。


*母の誕生日の話
毎年11月15日は母の誕生日であった。小学校2年生にもなると、何かと親への感謝というものを示すように諭されるものであり、学校で先生や同級生から、そういう行動に出ていて当然のように言われたりする。

そこでぼくもプレゼントというものをあげようと考え、いろいろ思案してみたのだが、あまりいいものが思い浮かばなかった。そうこうしている内に、母の誕生日が近づいて来たのだが、ある雨の日に母が「肩が凝る」と言っているのを聞いてはっと閃いた。

何日か前にこういう話をしていた時に、かわのくんがおばあちゃんにではあるが、『肩たたき券をあげた』という話をしていたのを思い出したのだ。そこでぼくもそれに習ってプレゼントすることにしたのだが、当日までに母に見つかってはいけないと考え、机の引き出しに鍵をかけて隠しておいた。
そして当日、よく考えれば初めて母にプレゼントをあげたのだが、

「母ちゃん、コレ」
「何?コレって」
「誕生日プレゼントの肩たたき券」
「そんな――ありがとうね、けんちゃん」

と言って泣き出したので、“何も泣くことはないだろう”と思ったのだが、これはとても大切なことであった。母は『感謝することができる人』であった。現代社会において、やってもらって当たり前と考えている人間が多い中、or当時の母は、何があっても絶対に自分の非を認めなかったのだが、こういう時にお礼が言えるということは素直に尊敬すべきことであると考えられる。

「大事すぎて使えないね」
「いや、使ってくれなきゃ困るよ。せっかくあげたんだから」
と言って特に何も思わなかったのだが、大人になった今にして思えば、母の気持ちがよく理解できる。『孝行をしたいと思えど親はなし』と言うが、人間なんでも後悔しないように生きているうちにやっておいた方がいいと言える。


*ぼくの自信作の話
 小学校低学年の図画工作の授業は、工具を使うことはほとんどなく、もっぱら絵を描いて提出するといった内容だった。2年生の中頃、クレヨンを使って絵を描く授業があり、大好きな『のぼり棒の絵』を描いて提出したことがあった。

 ぼくは綺麗に描けたことに対して満足感を覚え、先生に褒めてもらえると期待していたのだが、返って来た言葉は
「けんたろうくん、描きなおそっか」
というものであった。ぼくは一生懸命に描いた大好きな『のぼり棒の絵』だったので、何が悪いのか分からず先生に聞いてみると、

「先生はこの絵はちょっとありきたりだと思うな。けんたろうくんなら、もっと良い作品が描けると思う」
と言われた。そのアドバイスがあったことで、先月みんなで飼い始めた『ザリガニの上にクラスの友達がいっぱい乗っている絵』に替えて提出することにした。先生に見せに行くと凄く褒めてくれて、千葉市の選考にみんなで応募した中で、なんと『佳作』に選ばれたのだった。表彰されたのはクラスで2人だけだったので、これも凄く嬉しかった。

昨今の日本では『個性』というものが大切にされなくなって来ているが、ぼくが描いたこの絵は、他の子には描けない『独創的な作品』であったと思う。ぼくは決して絵が上手とは言えなかったが、創意工夫と熱意を持って一生懸命に描いたのを大人たちが認めてくれたのだろう。

そのことがあってから、ぼくは例えヘタクソな分野でも、アイデア次第で勝つことができると、何でも全力で取り組むようになれたんだと思う。それで失敗することもあったけど、今まで頑張って来れたのは、こういう小さな『成功体験の積み重ね』があったからだと考えている。


*家族での遊びの話
当時家族でやっていたもので、階段を使って『ジャンケンに勝つと出した手の分だけ進める』という遊びがあった。グーはグリコ、チョキはチヨコレイト、パーはパイナツプルで、グーだけ進み方が遅くて不利であったが、グリコノオマケというフレーズを使って歩を進めるという裏技があったりもした。

この公園で遊んだ時に、帰る間際に父がベンチで寝ていたのだが、今にして思えば帰りの体力を温存していたんだと自分が車を運転するようになって気が付いたりもした。家では馬になってぼくら兄妹を背中に乗せてくれたりしたのだが、父はどうにも気分屋であり、そんな父とは、一つ大きく印象に残っている話がある。

ある時、撮りためておいた戦隊もののヒーローのビデオを一緒に見ようと言ったら、「もう眠いから寝る」と断られてしまったり、あげようとしていたオヤツをわたすと、「もう歯を磨いたから食べられない」と言われてしまったりもした。

仕方がないのでテレビを見ながらコタツに入り、みかんと千葉の特産品の落花生(ピーナッツ)とを一人で食べていた。ぼくはこの時の悲しさというものを未だに胸に秘めていて、“父を慕う気持ちを尊重してほしかった“と思っている。

だが、“自分の子供ができたらこういう時には断らず一緒にビデオを見て、オヤツを食べてあげて、子供の頼みを無下にしないようにしよう“と思えているのは怪我の功名とでも言うべきことなのだろうか。

一瞬で消えたように見えるが『コインやトランプを手で弾いて隠している』とか、人体を切断するが『二人いて無事』とか、水を振って氷にするが『冷蔵庫でゆっくり冷やすとマイナス4度くらいまで水の状態を保っていられる過冷却水を使っている』とかいう映像を、タネもよく分からないまま見ながらそう思った。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ただいま作者の崗本は『賞レース中にて書籍化のチャンス』に直面しております!!

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