13 / 27
13
俺たちが迷宮の縁に向かったのはよりよい生活を求めてだ。
最初に上司になった魔法薬師のおかげで冒険者として生きる道が容易くはないことを思い知らされた。
自分にできることを並べた時に、初級魔法薬師はさほど割のいい仕事ではない。
初級魔法薬は需要はあるが作れる魔法薬師が多い。値段も中級とは雲泥の差だ。品質には自信があったがギルドに売る場合はあまり考慮されない。
自分で材料を調達できればいいがそうでなければ材料の仕入れにもそれなりに費用がかかる。
中級魔法薬もいくつかは作れるが、資格がない以上正規品としての販売はできない。
腕を信頼してくれる人相手に非正規品として売ることはできるだろうが、正規品より高くは売れないだろうし、トラブルに巻き込まれる可能性もある。
セシリーとコリンのことを考えると特に、中級魔法薬師の資格を取るというのが俺の最初の目標になった。
試験は年に一度、試験会場は国内に複数設けられる。その会場の一つが迷宮の縁だった。
俺が迷宮の縁に行きたいと言うとセシリーは不安そうな表情になった。迷宮の縁は遠い。規模は落ちるがもう少し近くの迷宮都市のほうがいいのではないか、それがセシリーの意見だった。長旅は避けたかったのだろう。コリンと一緒なのだから当然だ。
俺としてはコリンのことがあるからこそ迷宮の縁に向かいたかった。上司の件で俺はこの世界での教育の価値も思い知っていた。前世どころではない。学園とまではいかなくてもできるだけいい教育を受けさせたい。それは死んだ両親や兄のためでもあるような気がした。
コリンは彼らの血を継いでいく。ひどい生活はさせたくなかった。迷宮の縁は中級魔法薬師試験の会場になっているような都市だ。迷宮によったものだが、高等学校も工房や研究所もある。できるだけ機会の多い環境で育ってほしかった。
気が進まないふうなセシリーに、試験に受かれば以前ほどではなくてもそれなりの生活ができる。初級魔法薬師として暮らすにしても薬の材料も手に入りやすく魔法薬の需要も高い。人の出入りが激しく仕事も多いと聞くから子育てが落ち着いたらセシリーの仕事も見つかりやすい。できるだけたくさん利点を伝えた。
最後にはセシリーも渋々といった様子だったが納得してくれた。
迷宮の縁には公共交通機関を乗り継いで向かった。時間はかかったがそれが一番安価で比較的安全だった。
旅の途中で冒険者に会えば様子を見てできるだけ話しかけた。
情報をもらえることもあったし、薬の材料を相場より安くゆずってもらったり、自作の魔法薬を直接買ってもらったりすることもあった。
何回か魔物に襲われたけど幸い強い魔物にはあたらず、雇われた冒険者や乗合になった冒険者たちが片付けてくれた。
そういう現場に行きあった場合は魔物の解体方法を傍で見て覚えた。彼らが使わない素材を譲ってもらえることもあった。
魔物の脂肪は捨てられることも多いが精製するといい基材になる。少量なら携帯用の器具で精製可能だ。
お礼に雑薬、魔法薬でない傷薬や保湿用の軟膏なんかがそう呼ばれているのだが、それを分けてあげると特に女性冒険者に喜ばれた。話を聞いてハーブなどで匂いをつけてみると、いくらかのお金や日用品なんかと交換してもらえることもあった。
彼らと話しているうちに言葉遣いはごく自然に以前に比べて乱暴になった。そのほうが受け入れてもらえた。俺は順応した。
関わる大抵の人は優しかった。セシリーとコリンを連れていたからだろう。
セシリーに話しかけてくる乗客もいて少し不安だったけど、セシリーもすぐに順応した。小さいころから商売を手伝っていたから人あしらいもうまい。過去を知らない相手と話すのはいい気晴らしにもなるようだった。
彼女にはずっと俺しか話し相手がいなかったのだ。ある時ふいに気づいた。
セシリーは笑うようになった。
最初に上司になった魔法薬師のおかげで冒険者として生きる道が容易くはないことを思い知らされた。
自分にできることを並べた時に、初級魔法薬師はさほど割のいい仕事ではない。
初級魔法薬は需要はあるが作れる魔法薬師が多い。値段も中級とは雲泥の差だ。品質には自信があったがギルドに売る場合はあまり考慮されない。
自分で材料を調達できればいいがそうでなければ材料の仕入れにもそれなりに費用がかかる。
中級魔法薬もいくつかは作れるが、資格がない以上正規品としての販売はできない。
腕を信頼してくれる人相手に非正規品として売ることはできるだろうが、正規品より高くは売れないだろうし、トラブルに巻き込まれる可能性もある。
セシリーとコリンのことを考えると特に、中級魔法薬師の資格を取るというのが俺の最初の目標になった。
試験は年に一度、試験会場は国内に複数設けられる。その会場の一つが迷宮の縁だった。
俺が迷宮の縁に行きたいと言うとセシリーは不安そうな表情になった。迷宮の縁は遠い。規模は落ちるがもう少し近くの迷宮都市のほうがいいのではないか、それがセシリーの意見だった。長旅は避けたかったのだろう。コリンと一緒なのだから当然だ。
俺としてはコリンのことがあるからこそ迷宮の縁に向かいたかった。上司の件で俺はこの世界での教育の価値も思い知っていた。前世どころではない。学園とまではいかなくてもできるだけいい教育を受けさせたい。それは死んだ両親や兄のためでもあるような気がした。
コリンは彼らの血を継いでいく。ひどい生活はさせたくなかった。迷宮の縁は中級魔法薬師試験の会場になっているような都市だ。迷宮によったものだが、高等学校も工房や研究所もある。できるだけ機会の多い環境で育ってほしかった。
気が進まないふうなセシリーに、試験に受かれば以前ほどではなくてもそれなりの生活ができる。初級魔法薬師として暮らすにしても薬の材料も手に入りやすく魔法薬の需要も高い。人の出入りが激しく仕事も多いと聞くから子育てが落ち着いたらセシリーの仕事も見つかりやすい。できるだけたくさん利点を伝えた。
最後にはセシリーも渋々といった様子だったが納得してくれた。
迷宮の縁には公共交通機関を乗り継いで向かった。時間はかかったがそれが一番安価で比較的安全だった。
旅の途中で冒険者に会えば様子を見てできるだけ話しかけた。
情報をもらえることもあったし、薬の材料を相場より安くゆずってもらったり、自作の魔法薬を直接買ってもらったりすることもあった。
何回か魔物に襲われたけど幸い強い魔物にはあたらず、雇われた冒険者や乗合になった冒険者たちが片付けてくれた。
そういう現場に行きあった場合は魔物の解体方法を傍で見て覚えた。彼らが使わない素材を譲ってもらえることもあった。
魔物の脂肪は捨てられることも多いが精製するといい基材になる。少量なら携帯用の器具で精製可能だ。
お礼に雑薬、魔法薬でない傷薬や保湿用の軟膏なんかがそう呼ばれているのだが、それを分けてあげると特に女性冒険者に喜ばれた。話を聞いてハーブなどで匂いをつけてみると、いくらかのお金や日用品なんかと交換してもらえることもあった。
彼らと話しているうちに言葉遣いはごく自然に以前に比べて乱暴になった。そのほうが受け入れてもらえた。俺は順応した。
関わる大抵の人は優しかった。セシリーとコリンを連れていたからだろう。
セシリーに話しかけてくる乗客もいて少し不安だったけど、セシリーもすぐに順応した。小さいころから商売を手伝っていたから人あしらいもうまい。過去を知らない相手と話すのはいい気晴らしにもなるようだった。
彼女にはずっと俺しか話し相手がいなかったのだ。ある時ふいに気づいた。
セシリーは笑うようになった。
あなたにおすすめの小説
監獄にて〜断罪されて投獄された先で運命の出会い!?
爺誤
BL
気づいたら美女な妹とともに監獄行きを宣告されていた俺。どうも力の強い魔法使いらしいんだけど、魔法を封じられたと同時に記憶や自我な一部を失った模様だ。封じられているにもかかわらず使えた魔法で、なんとか妹は逃したものの、俺は離島の監獄送りに。いちおう貴族扱いで独房に入れられていたけれど、綺麗どころのない監獄で俺に目をつけた男がいた。仕方ない、妹に似ているなら俺も絶世の美形なのだろうから(鏡が見たい)
そのモブは、私の愛しい唯一無二
ミクリ21
BL
アズエル・ミスティアはある日、前世の記憶を思い出した。
所謂、BLゲームのモブに転生していたのだ。
しかし、アズエルにはおかしなことに思い出した記憶が一つだけではなかった。
最初はモブだと信じきっていたのに、副会長セス・フェリクスに迫られ続けるアズエルの話。
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~
凪瀬夜霧
BL
「綺麗な息子が欲しい」という実母の無茶な要求で、ランバートは女人禁制、男性結婚可の騎士団に入団する。
そこで出会った騎兵府団長ファウストと、部下より少し深く、けれども恋人ではない微妙な距離感での心地よい関係を築いていく。
友人とも違う、部下としては近い、けれど恋人ほど踏み込めない。そんなもどかしい二人が、沢山の事件を通してゆっくりと信頼と気持ちを育て、やがて恋人になるまでの物語。
メインCP以外にも、個性的で楽しい仲間や上司達の複数CPの物語もあります。活き活きと生きるキャラ達も一緒に楽しんで頂けると嬉しいです。
ー!注意!ー
*複数のCPがおります。メインCPだけを追いたい方には不向きな作品かと思います。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…