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こうして俺の仕事には、魔法薬師以外にも採取の仕事が加わった。
ギルド職員が言ったとおり甘い仕事ではなかった。迷宮の森周辺の素材は時期にもよるがだいたい取り尽くされている。
成果を上げるにはある程度森の中に踏み込む必要がある。当然危険だ。魔物の気配になりふり構わず逃げ出すような場面もあった。
特にチームを組んでいるわけではないのでメンバーは毎回変わった。
メンバー内では暗黙のうちに、あるいは集合時に口頭で、不測の事態には自分の身だけを守り逃亡することが共有されていた。
戦闘スキルがない者には他人の面倒は見ていられないということで、それはギルドの講習会でも言われていたことだった。
それでも、危険があれば声掛けがある。それだけでも助かったし、同じ魔法薬師同士情報交換もできた。
毎回メンバーは変わるといっても似たような顔ぶれにはなる。
回数を重ねるうちに、俺は一人の少年と仲良くなった。
いや、俺より一つ年上だから当時すでに成人していたのだが、小柄で童顔な彼は俺より一つ二つ年下に見えた。
成長期にあまり食べられなかったから育たなかっただけ、俺が疑っていることに気が付いたのだろう、彼、レオはなんでもないように言い、さらに何でもないように、孤児院出身で親の顔も知らないのだと付け加えた。
「俺が昔のことを話したからって、おまえまで言わなきゃならないってことはないぜ、まぁだいたいわかるけど。迷宮の縁にようこそ、わけありのおぼっちゃん」
俺が思わず口ごもるとレオは多少皮肉るように言った。
こういう皮肉な態度はムカついたがそのうち慣れた。レオは悪いやつではなかった。
一年ほど前に初級魔法薬師の資格を取ったばかりということで、話していると知識にむらもあったが腕はよかった。独学で勉強したというから努力家な一面もあるのだろう。初級魔法薬師といっても簡単ではない。独学ならなおさらだ。
性格に反して顔立ちはかわいく、酒場などではよく声を掛けられていた。髪と目は黒っぽい茶色で、黙っているとどことなく庇護欲を誘うような繊細さがある。声をかけられてついていくのは見たことがなかったけど、自分がかわいいことは分かっているようで、狙ってあざとくふるまうようなこともあった。
見かけに反して面倒見がよく、世間知らず(レオが言ったことだ)の俺に生きる知恵(レオが言ったことだ)を教えてくれた。
魔法薬師ギルドへの登録を勧めてくれたのもレオだった。
登録料は冒険者ギルドより高いが、登録すると魔法薬師専用の商品を購入することができる。特にローブは魔術が施されており、低レベルだが魔法防御、物理防御が付与され、前世で言うところのアウトドアウェアとしても優秀だ。ある程度見栄えもするので公式な場でも身に付けられる。初級魔法薬師用のものは値段もさほど高くない。
「これを購入するためだけにでも、会費を払う価値はあるよ。魔法薬に世話になっていない冒険者はいないからさ、身に付けていると気にしてもらえるし信用もされる。絡まれてるところを助けてもらえたり、店でおまけしてもらったこともある。ツケで買い物をしたい時とか部屋を借りる時とか、着ているのと着ていないのでは相手の態度が全然違うんだぜ。初級魔法薬師なんてそんなに金持ってるイメージはないからそういう意味でも安全だし。たまに魔法薬師を狙って声をかけてくる馬鹿はいるけど」
つまり、ここが前世なら、JKモノ、ナースモノのエロコンテンツのように、魔法薬師モノ的なコンテンツができていたであろう需要があるということらしい。まじか。ナースの亜種扱いか。
「おごりで飯食えたり、情報もらったり、うまくやればいいこともあるけどノア向きじゃないだろうな」
レオはにやにやと笑った。俺は酒場のような場所ではローブは脱いでおくことにした。
そうでなくても冒険者、特に戦闘職は息をするようにセクハラをしてくる。
周りもよほどひどくなければ口出ししない。たいていの場合彼らに悪気もない。いつ死ぬかわかんないんだから、いいこみつけたら声かけないと、そういわれると前世の倫理観で断罪するのもためらわれる。
最終的にはほとんど流れ作業的に軽口でかわすことができるようになった。つまり、慣れた。
なかには暴力に訴えかけてくるやつもいるが、迷宮の縁は治安維持には気を使っている。王国騎士団から何人か派遣されていたし、自警団の質も高い。変な場所に近づかなければそうそう危ない目にあうことはなかった。
俺は抱かれる側としての需要のほうが高いらしいというのは、迷宮の縁に来て数か月のうちには否応なく知ることになった。知りたくなかった。いや、早いうちに知れてよかったか。
レオは人の懐に入り込むのもうまかった。
いつの間にかセシリーとも仲良くなり、時々うちでご飯を食べていくくらいになっていた。
セシリーが料理をする間、レオはよくコリンを抱いていてくれた。
「かわいいな、弟たちを思い出すよ」
レオはコリンの頭の匂いを嗅ぎながらふわりと顔を緩ませた。慣れているのか、彼は俺よりもコリンをあやすのが上手だった。
セシリーはレオから仕事の話を聞くのが楽しいらしかった。俺としては見張られているみたいでちょっと居心地が悪かった。
ギルド職員が言ったとおり甘い仕事ではなかった。迷宮の森周辺の素材は時期にもよるがだいたい取り尽くされている。
成果を上げるにはある程度森の中に踏み込む必要がある。当然危険だ。魔物の気配になりふり構わず逃げ出すような場面もあった。
特にチームを組んでいるわけではないのでメンバーは毎回変わった。
メンバー内では暗黙のうちに、あるいは集合時に口頭で、不測の事態には自分の身だけを守り逃亡することが共有されていた。
戦闘スキルがない者には他人の面倒は見ていられないということで、それはギルドの講習会でも言われていたことだった。
それでも、危険があれば声掛けがある。それだけでも助かったし、同じ魔法薬師同士情報交換もできた。
毎回メンバーは変わるといっても似たような顔ぶれにはなる。
回数を重ねるうちに、俺は一人の少年と仲良くなった。
いや、俺より一つ年上だから当時すでに成人していたのだが、小柄で童顔な彼は俺より一つ二つ年下に見えた。
成長期にあまり食べられなかったから育たなかっただけ、俺が疑っていることに気が付いたのだろう、彼、レオはなんでもないように言い、さらに何でもないように、孤児院出身で親の顔も知らないのだと付け加えた。
「俺が昔のことを話したからって、おまえまで言わなきゃならないってことはないぜ、まぁだいたいわかるけど。迷宮の縁にようこそ、わけありのおぼっちゃん」
俺が思わず口ごもるとレオは多少皮肉るように言った。
こういう皮肉な態度はムカついたがそのうち慣れた。レオは悪いやつではなかった。
一年ほど前に初級魔法薬師の資格を取ったばかりということで、話していると知識にむらもあったが腕はよかった。独学で勉強したというから努力家な一面もあるのだろう。初級魔法薬師といっても簡単ではない。独学ならなおさらだ。
性格に反して顔立ちはかわいく、酒場などではよく声を掛けられていた。髪と目は黒っぽい茶色で、黙っているとどことなく庇護欲を誘うような繊細さがある。声をかけられてついていくのは見たことがなかったけど、自分がかわいいことは分かっているようで、狙ってあざとくふるまうようなこともあった。
見かけに反して面倒見がよく、世間知らず(レオが言ったことだ)の俺に生きる知恵(レオが言ったことだ)を教えてくれた。
魔法薬師ギルドへの登録を勧めてくれたのもレオだった。
登録料は冒険者ギルドより高いが、登録すると魔法薬師専用の商品を購入することができる。特にローブは魔術が施されており、低レベルだが魔法防御、物理防御が付与され、前世で言うところのアウトドアウェアとしても優秀だ。ある程度見栄えもするので公式な場でも身に付けられる。初級魔法薬師用のものは値段もさほど高くない。
「これを購入するためだけにでも、会費を払う価値はあるよ。魔法薬に世話になっていない冒険者はいないからさ、身に付けていると気にしてもらえるし信用もされる。絡まれてるところを助けてもらえたり、店でおまけしてもらったこともある。ツケで買い物をしたい時とか部屋を借りる時とか、着ているのと着ていないのでは相手の態度が全然違うんだぜ。初級魔法薬師なんてそんなに金持ってるイメージはないからそういう意味でも安全だし。たまに魔法薬師を狙って声をかけてくる馬鹿はいるけど」
つまり、ここが前世なら、JKモノ、ナースモノのエロコンテンツのように、魔法薬師モノ的なコンテンツができていたであろう需要があるということらしい。まじか。ナースの亜種扱いか。
「おごりで飯食えたり、情報もらったり、うまくやればいいこともあるけどノア向きじゃないだろうな」
レオはにやにやと笑った。俺は酒場のような場所ではローブは脱いでおくことにした。
そうでなくても冒険者、特に戦闘職は息をするようにセクハラをしてくる。
周りもよほどひどくなければ口出ししない。たいていの場合彼らに悪気もない。いつ死ぬかわかんないんだから、いいこみつけたら声かけないと、そういわれると前世の倫理観で断罪するのもためらわれる。
最終的にはほとんど流れ作業的に軽口でかわすことができるようになった。つまり、慣れた。
なかには暴力に訴えかけてくるやつもいるが、迷宮の縁は治安維持には気を使っている。王国騎士団から何人か派遣されていたし、自警団の質も高い。変な場所に近づかなければそうそう危ない目にあうことはなかった。
俺は抱かれる側としての需要のほうが高いらしいというのは、迷宮の縁に来て数か月のうちには否応なく知ることになった。知りたくなかった。いや、早いうちに知れてよかったか。
レオは人の懐に入り込むのもうまかった。
いつの間にかセシリーとも仲良くなり、時々うちでご飯を食べていくくらいになっていた。
セシリーが料理をする間、レオはよくコリンを抱いていてくれた。
「かわいいな、弟たちを思い出すよ」
レオはコリンの頭の匂いを嗅ぎながらふわりと顔を緩ませた。慣れているのか、彼は俺よりもコリンをあやすのが上手だった。
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