君が見た春を

稲佐オサム

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第三幕:社会人編 ― 選ぶ道と、残る想い

9章 春の遠く、冬の近く

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大学卒業から2年。
中谷澪は、都内の出版社で文芸編集者として働いていた。

地味な服装に薄いメイク、職場では「静かだけど丁寧な人」と思われている。

かつてのように人目を避けることはなくなったが、胸の奥にある”本当の自分”を見せることは、まだ少し怖かった。

仕事に追われ、校了前の深夜。
ふとした瞬間、スマホに届いたひとつのメッセージを見つける。

《君は、まだ書いてる? ―佐久間ハルキ》

大学以来、疎遠になっていた彼の名前が、心の深くをノックした。
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