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第三合
第28話
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「ヒカリン、帰りにラーメンいこーずえ」
下校時刻、教室の出入り口で熊野がいつもの如く俺の首を絞め誘ってくる。
「ラーメンか。久しぶりにいいな。どこよ?」
「別に決めてない。二郎でも天一でも」
「天をつかんとする大盛りの野菜マシマシ、ドロドロこってりと半チャーハン替え玉三連撃。どちらも捨てがたいな」
「どっちにする?」
「んー……悪い、やっぱ今日はやめとくわ」
「またかよー。最近なんか付き合い悪くね?」
「すまん、また今度な」
自炊をやり始めてからこんなやり取りがだんだん増えてくるようになっていた。
前は帰りによく寄り道したものだが、いまやまっすぐ家だ。
これじゃまるで子供が生まれた途端に子煩悩になるという父親みたいだな、と自嘲してしまう。
奇妙なもので家庭料理が美味しいと外食に行こうという気はあまり起こらないようになった。
もちろん我慢しているところもあるし、たまに禁断症状が出ることもある。
ついつい行ってしまうことだってある。
でも病的に依存していた頃に比べればかなりの進歩だと思う。
それにいいこともあった。
体が軽くなってしつこかった吹き出物が治ったことだ。ここのところずっと体調がいい。
前の状態が普通だと思っていたがこうなると相当よくなかったんだなと遅れて自覚する。
自炊の成果は佐久名の発言からも窺える。
「ひかり、最近なんか変わったね」
「付き合い悪くなったって?」
「そうじゃなくて、顔がしゅっとしてかっこよくなった。昔みたい」
「そうかな。気のせいじゃないか?」
「あの子のおかげかな」
「あの子?」
「ほら自称座敷童ちゃん」
「まさか」
そんなわけでぴりかとの同棲からはや一ヵ月が経とうとしていた。
小さな事件や苦労は絶えないがなんとかやれている。
父は相変わらず転勤族で家にいないので朝食が済むと俺は高校へ、ぴりかは留守番。
昼食はお互い手作り弁当。無論だが惣菜も冷凍食品も使っていない。
夕食は一緒に食べ、同じベッドで寝る。
暇があれば小町先生宅を訪ね料理を教えてもらっている。
俺の一日は今日もそんな感じで過ぎていく。
下校時刻、教室の出入り口で熊野がいつもの如く俺の首を絞め誘ってくる。
「ラーメンか。久しぶりにいいな。どこよ?」
「別に決めてない。二郎でも天一でも」
「天をつかんとする大盛りの野菜マシマシ、ドロドロこってりと半チャーハン替え玉三連撃。どちらも捨てがたいな」
「どっちにする?」
「んー……悪い、やっぱ今日はやめとくわ」
「またかよー。最近なんか付き合い悪くね?」
「すまん、また今度な」
自炊をやり始めてからこんなやり取りがだんだん増えてくるようになっていた。
前は帰りによく寄り道したものだが、いまやまっすぐ家だ。
これじゃまるで子供が生まれた途端に子煩悩になるという父親みたいだな、と自嘲してしまう。
奇妙なもので家庭料理が美味しいと外食に行こうという気はあまり起こらないようになった。
もちろん我慢しているところもあるし、たまに禁断症状が出ることもある。
ついつい行ってしまうことだってある。
でも病的に依存していた頃に比べればかなりの進歩だと思う。
それにいいこともあった。
体が軽くなってしつこかった吹き出物が治ったことだ。ここのところずっと体調がいい。
前の状態が普通だと思っていたがこうなると相当よくなかったんだなと遅れて自覚する。
自炊の成果は佐久名の発言からも窺える。
「ひかり、最近なんか変わったね」
「付き合い悪くなったって?」
「そうじゃなくて、顔がしゅっとしてかっこよくなった。昔みたい」
「そうかな。気のせいじゃないか?」
「あの子のおかげかな」
「あの子?」
「ほら自称座敷童ちゃん」
「まさか」
そんなわけでぴりかとの同棲からはや一ヵ月が経とうとしていた。
小さな事件や苦労は絶えないがなんとかやれている。
父は相変わらず転勤族で家にいないので朝食が済むと俺は高校へ、ぴりかは留守番。
昼食はお互い手作り弁当。無論だが惣菜も冷凍食品も使っていない。
夕食は一緒に食べ、同じベッドで寝る。
暇があれば小町先生宅を訪ね料理を教えてもらっている。
俺の一日は今日もそんな感じで過ぎていく。
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