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<叶さんとの八年>
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学校が終わってすぐに、唯一知ってる会社の前で待った。
母さんが経営してるフランチャイズ店の本社前。二時間も経った頃、ようやく、懐かしい姿を見つけた。
(母さん)
携帯にさえ出てくれないぐらいだ。
そっけない態度を取られる覚悟はしてた。
もうここに来ちゃ駄目よってたしなめられる覚悟もしてた。
それでも、どうしても話がしたかった。
母さんはオレが声をかける前に、走りだした。
会社の前に停車してた車に向かって。
運転席には知らない男の人が座ってた。
助手席には小さな女の子がいて、窓から身を乗り出して、言った。
『ママ、お帰りなさい!』
『ただいまー! 迎えにきてくれてありがとうね! 今日は京香ちゃんの好きなものいーっぱい作るからね!』
母さんは、オレがもう何年も見たことが無い、嬉しそうな笑顔を顔に浮かべてた。
『――――――!!!』
声をかける事もできずに、そこから逃げて闇雲に走り出した。
なにがショックだったのか自分でもわからない。
母さんに新しい家族ができていたこと?
楽しそうに笑っていたこと?
わからないまま走って、離婚したと告げられた日から一度も掛けたことがなかった父さんの携帯に電話を繋いだ。
五回のコール音の後、通話が繋がった。
父さん。
そうオレが言うよりも早く。
『はい、えまちゃんのパパの携帯です!』
幼い女の子の、元気な声が響いた。
おそるおそる掛けた相手を確かめる。
携帯に表示されているのは、間違いなく、父さんの番号だった。
父さんにも、新しい家庭があった。
オレだけが一人だった。
結論を言うと、二人は、何年も前からそれぞれ不倫してた。
母さんと一緒に居た女の子は相手の男の連れ子だったものの、父さんの携帯に出た男の子は、なんと、父さんの子どもだった。
当時五歳。父さんはオレが十歳の頃に、よその女に子どもを産ませていたのだ。
腹違いの妹がいたことさえ知らなかった。
両親はそれぞれ、新しい家族と幸せに暮らしているのに、オレは一人ぼっち。
なんだかもう無性に世の中がどうでも良くなって、陸橋の上に立って下を流れる車を見下ろした。
両親が離婚した後、オレは、家族で暮らしていたマンションから、一部屋しかないアパートに引っ越した。
本音をいうと、父さんと母さんの思い出がいっぱいあるマンションから引っ越したくなかった。
嫌だってお願いしたけど、話を聞いてもらえるはずも無く。
マンションは月に数十万も家賃がかかる。今のアパートなら月三万円だ。
いらない子が一人で住むマンションに大金を払えないのは当然だ。
無駄に大きかった冷蔵庫、洗濯機、照明、棚、ベッド、とにかく何もかも全部、サイズが合わなかったのでリサイクルショップに売って家具を買いなおした。
何の思い出も無い、知らない家具に囲まれた一人ぼっちの家に帰る気にはなれなかった。
ぼーっと立ってると、軽く肩を叩かれた。
やっぱりぼんやり振り返る。
眼鏡を掛けたスーツ姿の男の人が居た。
「どうしたんだこんな時間に。まだ中学生ぐらいだろう? 親が心配するぞ」
「……」
親はいません。口を開くのが億劫だった。
母さんが経営してるフランチャイズ店の本社前。二時間も経った頃、ようやく、懐かしい姿を見つけた。
(母さん)
携帯にさえ出てくれないぐらいだ。
そっけない態度を取られる覚悟はしてた。
もうここに来ちゃ駄目よってたしなめられる覚悟もしてた。
それでも、どうしても話がしたかった。
母さんはオレが声をかける前に、走りだした。
会社の前に停車してた車に向かって。
運転席には知らない男の人が座ってた。
助手席には小さな女の子がいて、窓から身を乗り出して、言った。
『ママ、お帰りなさい!』
『ただいまー! 迎えにきてくれてありがとうね! 今日は京香ちゃんの好きなものいーっぱい作るからね!』
母さんは、オレがもう何年も見たことが無い、嬉しそうな笑顔を顔に浮かべてた。
『――――――!!!』
声をかける事もできずに、そこから逃げて闇雲に走り出した。
なにがショックだったのか自分でもわからない。
母さんに新しい家族ができていたこと?
楽しそうに笑っていたこと?
わからないまま走って、離婚したと告げられた日から一度も掛けたことがなかった父さんの携帯に電話を繋いだ。
五回のコール音の後、通話が繋がった。
父さん。
そうオレが言うよりも早く。
『はい、えまちゃんのパパの携帯です!』
幼い女の子の、元気な声が響いた。
おそるおそる掛けた相手を確かめる。
携帯に表示されているのは、間違いなく、父さんの番号だった。
父さんにも、新しい家庭があった。
オレだけが一人だった。
結論を言うと、二人は、何年も前からそれぞれ不倫してた。
母さんと一緒に居た女の子は相手の男の連れ子だったものの、父さんの携帯に出た男の子は、なんと、父さんの子どもだった。
当時五歳。父さんはオレが十歳の頃に、よその女に子どもを産ませていたのだ。
腹違いの妹がいたことさえ知らなかった。
両親はそれぞれ、新しい家族と幸せに暮らしているのに、オレは一人ぼっち。
なんだかもう無性に世の中がどうでも良くなって、陸橋の上に立って下を流れる車を見下ろした。
両親が離婚した後、オレは、家族で暮らしていたマンションから、一部屋しかないアパートに引っ越した。
本音をいうと、父さんと母さんの思い出がいっぱいあるマンションから引っ越したくなかった。
嫌だってお願いしたけど、話を聞いてもらえるはずも無く。
マンションは月に数十万も家賃がかかる。今のアパートなら月三万円だ。
いらない子が一人で住むマンションに大金を払えないのは当然だ。
無駄に大きかった冷蔵庫、洗濯機、照明、棚、ベッド、とにかく何もかも全部、サイズが合わなかったのでリサイクルショップに売って家具を買いなおした。
何の思い出も無い、知らない家具に囲まれた一人ぼっちの家に帰る気にはなれなかった。
ぼーっと立ってると、軽く肩を叩かれた。
やっぱりぼんやり振り返る。
眼鏡を掛けたスーツ姿の男の人が居た。
「どうしたんだこんな時間に。まだ中学生ぐらいだろう? 親が心配するぞ」
「……」
親はいません。口を開くのが億劫だった。
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