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第二十三話 再会 その③
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「友達だからって…やっぱり関係ないじゃないですか」
遥はまだ美冬を睨み付けていた。
美冬もそんな遥をじっと睨んだ。
ガタッ
それから睨んだまま音を立てて美冬は席を立つ。
「ちょっと、トイレ行って来る」
一転して今度は渡辺の方を向くと、美冬はそう言ってトイレのある方へと向かって歩き出した。
「ちょっと、あの人なんなの?」
美冬が遠ざかり、声が聞こえない位の頃になると、遥は父・渡辺に尋ねた。
「知り合いの娘さんだ」
女子トイレに入ると誰も居なかった。
美冬は半開きになったトイレの前に立ち、それから少しその扉を眺めると、力一杯黒のローファーの靴で扉を蹴った。
ドン!
美冬が蹴った音は女子トイレ中に響き渡り、しかし直ぐに音は小さくなりやがて消える。
「ちくちょう」
更に小声で呟く。
それから美冬は、トイレ中をあちらこちら見回した。
「母さんにはこの前会った」
「知ってる。聞いたから」
渡辺の話に素っ気無く答える遥。
「そうか…」
渡辺は話す事に困り、そのまま少し黙った。
遥はその間スマホで誰かとLINEかツイッターをしている様で、テーブルの上でスマホを指であちらこちら触っていた。
それはもう、渡辺の知らない遥だった。
スマホの話も友達の話も、昨日見たテレビの話でさえも渡辺は知らなかったのだから。
「俺は…」
それから暫くの間を置いて、渡辺は若干声を詰まらせながらも言葉を紡ぎ始める。
遥は相変わらずスマホをいじっていて、聞いてるのか聞いてないのかすら分からない。
「俺は、いつかまたみんなで暮らしたい」
遥の方を見ず下を向きながら、渡辺は精一杯の思いを込めてそれだけを言った。
「それはね。私だってそうなれば良いとは思うけれど」
遥はスマホの手を止めて、話しながら顔を上げ渡辺の方を見た。
視線に気付いた渡辺も顔を上げる。
「さっきも言ったけれど、五年の間で生活のパターンも安定しちゃったの。ママも働いて、そこに生活の一部があるし。私も学校に生活の一部があるし。お父さんが居ない生活が、もう自然になっちゃったの」
遥の話を渡辺は黙って聞いていた。
それからゆっくりと口を開いて、一言だけ尋ねる。
「お母さんも、そう思っているのか?」
「お母さんは分からない。でも、仕事関係の男の人の名前とか三人位は話の中で良く聞くよ。飲み会とかにも行ってるし。住んでいるアパートに連れて来た事はないけれど、帰り遅い日とか…」
遥の話を聞きながら、渡辺はこの前会った時の元妻を思い出していた。
テーブルの真ん中に人差し指で横にスーッと境界線を引いていた事。
『私もね、老後の事考えて、お金貯めなくちゃいけないし』
(五年だ。誰かいてもおかしくない)
渡辺はそう思った。
「分からないけどね。お母さん何にも言わないし」
そう言う遥の声は、もう渡辺には届いていなかった。
「そうか、猫だ。ペットだ」
その頃美冬は、女子トイレの壁紙に描かれた色とりどりの猫の絵を見ながらそう呟いた。
つづく
遥はまだ美冬を睨み付けていた。
美冬もそんな遥をじっと睨んだ。
ガタッ
それから睨んだまま音を立てて美冬は席を立つ。
「ちょっと、トイレ行って来る」
一転して今度は渡辺の方を向くと、美冬はそう言ってトイレのある方へと向かって歩き出した。
「ちょっと、あの人なんなの?」
美冬が遠ざかり、声が聞こえない位の頃になると、遥は父・渡辺に尋ねた。
「知り合いの娘さんだ」
女子トイレに入ると誰も居なかった。
美冬は半開きになったトイレの前に立ち、それから少しその扉を眺めると、力一杯黒のローファーの靴で扉を蹴った。
ドン!
美冬が蹴った音は女子トイレ中に響き渡り、しかし直ぐに音は小さくなりやがて消える。
「ちくちょう」
更に小声で呟く。
それから美冬は、トイレ中をあちらこちら見回した。
「母さんにはこの前会った」
「知ってる。聞いたから」
渡辺の話に素っ気無く答える遥。
「そうか…」
渡辺は話す事に困り、そのまま少し黙った。
遥はその間スマホで誰かとLINEかツイッターをしている様で、テーブルの上でスマホを指であちらこちら触っていた。
それはもう、渡辺の知らない遥だった。
スマホの話も友達の話も、昨日見たテレビの話でさえも渡辺は知らなかったのだから。
「俺は…」
それから暫くの間を置いて、渡辺は若干声を詰まらせながらも言葉を紡ぎ始める。
遥は相変わらずスマホをいじっていて、聞いてるのか聞いてないのかすら分からない。
「俺は、いつかまたみんなで暮らしたい」
遥の方を見ず下を向きながら、渡辺は精一杯の思いを込めてそれだけを言った。
「それはね。私だってそうなれば良いとは思うけれど」
遥はスマホの手を止めて、話しながら顔を上げ渡辺の方を見た。
視線に気付いた渡辺も顔を上げる。
「さっきも言ったけれど、五年の間で生活のパターンも安定しちゃったの。ママも働いて、そこに生活の一部があるし。私も学校に生活の一部があるし。お父さんが居ない生活が、もう自然になっちゃったの」
遥の話を渡辺は黙って聞いていた。
それからゆっくりと口を開いて、一言だけ尋ねる。
「お母さんも、そう思っているのか?」
「お母さんは分からない。でも、仕事関係の男の人の名前とか三人位は話の中で良く聞くよ。飲み会とかにも行ってるし。住んでいるアパートに連れて来た事はないけれど、帰り遅い日とか…」
遥の話を聞きながら、渡辺はこの前会った時の元妻を思い出していた。
テーブルの真ん中に人差し指で横にスーッと境界線を引いていた事。
『私もね、老後の事考えて、お金貯めなくちゃいけないし』
(五年だ。誰かいてもおかしくない)
渡辺はそう思った。
「分からないけどね。お母さん何にも言わないし」
そう言う遥の声は、もう渡辺には届いていなかった。
「そうか、猫だ。ペットだ」
その頃美冬は、女子トイレの壁紙に描かれた色とりどりの猫の絵を見ながらそう呟いた。
つづく
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