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第十六話 電波塔の少女 その⑬ パニック
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「ちょっと! 今の聞いた!」
「聞いた! 何今の!?」
ドーナツ雲の中の町、そこにある中学校の図書室の中で二人向き合っていた一之谷小百合と三原小巻は、目を丸くしながらお互いにそう叫んだ。
「なんか、とてつもなく怖い事を言っている声が聞こえたんだけど」
「聞こえた。撤収とか回収とか、それから消去とか言ってた」
恐る恐る尋ねて来た小巻に、興奮した顔で答える小百合。
「今のも私の耳から聞こえたんだよね」
「うん、そう。小巻ちゃんのその頭の上のスピーカーから」
続けて質問して来る小巻に、小百合は震える手でその頭の上の長い耳の様な物を指差しながらそう答えた。
「ひ~! なんなのよ~! 一体この耳はなんなの~!?」
次の瞬間頭を両手で抱え、上下左右に振りながら地団駄を踏む小巻。
「ちょっと、危ないよ」
それには小百合もその長い耳にぶつかりそうになり、慌てて椅子から立ち上がると、逃げてはそんな言葉を口走った。
しかしそれは無理もない事だという事は小百合にも分かっている。
ある夜突然付いたのか生えたのかしたバーニーガールの様な黒くて長い耳が、翌日には言葉を発したのだ。(実際には双方向の対話という形の言葉ではなく、一方的に声が聞こえて来るやはりスピーカーの様な物みたいなのだが)
頭がおかしくなりそうになっても無理のない程の事だ。
(やはり小巻ちゃんは、可哀想な子なんだ)
今も頭を振り乱して暴れている小巻を少しだけ離れた場所で見ながら、小百合はそう思うと、だから何とかしなければと、小巻を落ち着かせる為に急いで言葉を探しては話しかけた。
「ちょっと待って小巻ちゃん。でもそれってその前にはチャイムの音が聞こえて来たんだよ。だから私はその耳がスピーカーで、何処かと混線してチャイムが放送されたんだって思ったんだ。だからね、今回のも何処かの映画館とか、テレビのドラマとか、はたまたネット配信の放送の何かが混線して入っただけなのかもよ。そうだとすればさっきの怖い声も話も、何かのドラマのワンシーンなのかも知れないし」
「ドラマ? ホントに? 本当にそういう事もあると思う?」
小百合の言葉にピタリと動きを止めた小巻は、藁をも縋る様な表情でそちらを振り向くと尋ねた。
「あると思います!」
だから元気良く、はっきりと答える小百合。
「なーんだ。そういう事もあるんだ。私はてっきりこれは宇宙からの信号か何かで、この世界は何かの実験場で、それが失敗に終ったから残り三日で滅ぼすよとかって報告して来たのかもなんて思っちゃてたよ」
「あはははは、そんな事ある訳ないじゃん。SFじゃあるまいし」
小巻の話に合わせるように笑いながら答える小百合は、しかしその裏で小巻の話に『大いにあり得る』っと、実は恐怖していた。
何故ならば小百合には、昨夜から一つ気になっていた事があったからだ。
つづく
「聞いた! 何今の!?」
ドーナツ雲の中の町、そこにある中学校の図書室の中で二人向き合っていた一之谷小百合と三原小巻は、目を丸くしながらお互いにそう叫んだ。
「なんか、とてつもなく怖い事を言っている声が聞こえたんだけど」
「聞こえた。撤収とか回収とか、それから消去とか言ってた」
恐る恐る尋ねて来た小巻に、興奮した顔で答える小百合。
「今のも私の耳から聞こえたんだよね」
「うん、そう。小巻ちゃんのその頭の上のスピーカーから」
続けて質問して来る小巻に、小百合は震える手でその頭の上の長い耳の様な物を指差しながらそう答えた。
「ひ~! なんなのよ~! 一体この耳はなんなの~!?」
次の瞬間頭を両手で抱え、上下左右に振りながら地団駄を踏む小巻。
「ちょっと、危ないよ」
それには小百合もその長い耳にぶつかりそうになり、慌てて椅子から立ち上がると、逃げてはそんな言葉を口走った。
しかしそれは無理もない事だという事は小百合にも分かっている。
ある夜突然付いたのか生えたのかしたバーニーガールの様な黒くて長い耳が、翌日には言葉を発したのだ。(実際には双方向の対話という形の言葉ではなく、一方的に声が聞こえて来るやはりスピーカーの様な物みたいなのだが)
頭がおかしくなりそうになっても無理のない程の事だ。
(やはり小巻ちゃんは、可哀想な子なんだ)
今も頭を振り乱して暴れている小巻を少しだけ離れた場所で見ながら、小百合はそう思うと、だから何とかしなければと、小巻を落ち着かせる為に急いで言葉を探しては話しかけた。
「ちょっと待って小巻ちゃん。でもそれってその前にはチャイムの音が聞こえて来たんだよ。だから私はその耳がスピーカーで、何処かと混線してチャイムが放送されたんだって思ったんだ。だからね、今回のも何処かの映画館とか、テレビのドラマとか、はたまたネット配信の放送の何かが混線して入っただけなのかもよ。そうだとすればさっきの怖い声も話も、何かのドラマのワンシーンなのかも知れないし」
「ドラマ? ホントに? 本当にそういう事もあると思う?」
小百合の言葉にピタリと動きを止めた小巻は、藁をも縋る様な表情でそちらを振り向くと尋ねた。
「あると思います!」
だから元気良く、はっきりと答える小百合。
「なーんだ。そういう事もあるんだ。私はてっきりこれは宇宙からの信号か何かで、この世界は何かの実験場で、それが失敗に終ったから残り三日で滅ぼすよとかって報告して来たのかもなんて思っちゃてたよ」
「あはははは、そんな事ある訳ないじゃん。SFじゃあるまいし」
小巻の話に合わせるように笑いながら答える小百合は、しかしその裏で小巻の話に『大いにあり得る』っと、実は恐怖していた。
何故ならば小百合には、昨夜から一つ気になっていた事があったからだ。
つづく
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