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ぽ
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人が初めて憧れたもの、何があるだろうか。
お母さんの笑顔、それとも心強いお父さんの存在かな。でも、お母さんが、お父さんがいない人だってたくさんいる。
君が初めて憧れた物って何だろう。
あの眼差しかな、希望に満ちているこの満天の夜空かな。
海と山、どっちが好きですか。そう聞かれても、
俺は、どちらでもない。両方とも好きでも嫌いでもない。どちらかというと、海かもしれない。
最初から興味なんて無い。
一言で済む話。それが不思議と心強い。
心にある、大きなクローゼット。一番上を開けると、心地よい笑い声。
「先生、お腹痛いんでトイレ行ってきていいですか?」
「ああ、分かった」
俺はトイレに向かってのそのそと、一秒でも時間潰すために歩く。
体育館中に響く、ロイター板を踏み切る音。その回数を数えるのかの様に、タイマーの時間も一刻と過ぎていく。
「跳び箱嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ」
心の中で授業の度に言葉を募らせる。
お腹を抱えてゆぅぅぅっくりとなぞるように目的地のトイレに向かう。
クソゥ、やはり、トイレに着いてしまった。
押して、扉を開けて、個室に入る。
お腹が痛いなんて嘘。俺は跳び箱が世界で七番目に嫌いだ。
跳ぶことに意味なんてないと思っている。
こんな自分に共感してくれますか。
個室にこもり、換気扇の音が脳内を旋回する。
特にやることが無く、申し訳ない気持ちで一杯だったのでトイレットペーパーの先端をを三角に折る。
タイマーが残り二十分の合図を鳴らしトイレまで響いてきたので、さすがにと思い、個室を出ていく。そして、手を丁重に洗いオレンジ色のハンカチで手を完全に乾燥するまで拭き取る。
重い足取りで、跳び箱を目指す。
何の偶然か校長先生がこの授業を見に来ていていて、端っこに居座っていると先生の方から話しかけてきた。
「いやぁ、皆うまいね。台上前転とかできたらもう本当凄すぎだよ」
適当に相槌と心ない返事を返す。
「君は、跳ばないの?」
「自分は、跳ばないです」
「じゃあ、頑張れ」
「はい」
校長先生が体育の先生に「では」と挨拶し、帰って行く。
もしかしたら、初めて校長先生と話したかもな~、と気付いたのは次の授業の国語になってからだった。
結局、跳べなかった。後悔に苛まれ、気持ち低い声で物語を音読する。
自分が変われるのは自分の中にある全ての本気を出したとき。誰よりもその言葉の意味を知っているはずなのに、変われない。
明日も、いつもどうりか。
そりゃそうか、だよな。
これはある動画投稿サイトに実際に投稿させられていたもの。
題名は、山に潜む未確認生物。
その動画に、二つの黒い影。こちらに気付いたのか未確認生物が森の中に消えていく。
動画はそこで終わり、以降そのチャンネルからは何も発信されていない。
別にこの動画から有名になったわけではない。今でも胡散臭いとコメント欄に呟かれている曖昧なもの。
この動画から人生が変わる。なんてことは無い。はずだったのに、彼は、憧れてしまった。
「おい、ありゃニンゲンかぁ。遂に見つかってしまったじゃねぇか」
森の奥へ奥へと駆けながら、問う。
「そうね、アナタが、へましたせいでね」
私は、冷徹に切り崩す。
「おいおい、チョイと言葉が辛くねぇかぁ。オイラのメンタルがぁ」
私は、事の重大性を理解していない彼を見て、立ち止まり、
「あのねぇ、だいたいアナタがあんなに山を下るからでしょう」
「私達は見つかったら、終わり、なの。分かってるでしょ?」
彼はばつが悪そうに、顔を赤らめ、指で頭を掻く。
「スマン、気をつける」
巨体に見合わない小さな声で、ボソッと絞り出す。
「じゃ、行くわよ」
私は、森の最深部を目指し駆ける。ニンゲンが決してたどり着けないくらいの奥の深いところへ。
お母さんの笑顔、それとも心強いお父さんの存在かな。でも、お母さんが、お父さんがいない人だってたくさんいる。
君が初めて憧れた物って何だろう。
あの眼差しかな、希望に満ちているこの満天の夜空かな。
海と山、どっちが好きですか。そう聞かれても、
俺は、どちらでもない。両方とも好きでも嫌いでもない。どちらかというと、海かもしれない。
最初から興味なんて無い。
一言で済む話。それが不思議と心強い。
心にある、大きなクローゼット。一番上を開けると、心地よい笑い声。
「先生、お腹痛いんでトイレ行ってきていいですか?」
「ああ、分かった」
俺はトイレに向かってのそのそと、一秒でも時間潰すために歩く。
体育館中に響く、ロイター板を踏み切る音。その回数を数えるのかの様に、タイマーの時間も一刻と過ぎていく。
「跳び箱嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ」
心の中で授業の度に言葉を募らせる。
お腹を抱えてゆぅぅぅっくりとなぞるように目的地のトイレに向かう。
クソゥ、やはり、トイレに着いてしまった。
押して、扉を開けて、個室に入る。
お腹が痛いなんて嘘。俺は跳び箱が世界で七番目に嫌いだ。
跳ぶことに意味なんてないと思っている。
こんな自分に共感してくれますか。
個室にこもり、換気扇の音が脳内を旋回する。
特にやることが無く、申し訳ない気持ちで一杯だったのでトイレットペーパーの先端をを三角に折る。
タイマーが残り二十分の合図を鳴らしトイレまで響いてきたので、さすがにと思い、個室を出ていく。そして、手を丁重に洗いオレンジ色のハンカチで手を完全に乾燥するまで拭き取る。
重い足取りで、跳び箱を目指す。
何の偶然か校長先生がこの授業を見に来ていていて、端っこに居座っていると先生の方から話しかけてきた。
「いやぁ、皆うまいね。台上前転とかできたらもう本当凄すぎだよ」
適当に相槌と心ない返事を返す。
「君は、跳ばないの?」
「自分は、跳ばないです」
「じゃあ、頑張れ」
「はい」
校長先生が体育の先生に「では」と挨拶し、帰って行く。
もしかしたら、初めて校長先生と話したかもな~、と気付いたのは次の授業の国語になってからだった。
結局、跳べなかった。後悔に苛まれ、気持ち低い声で物語を音読する。
自分が変われるのは自分の中にある全ての本気を出したとき。誰よりもその言葉の意味を知っているはずなのに、変われない。
明日も、いつもどうりか。
そりゃそうか、だよな。
これはある動画投稿サイトに実際に投稿させられていたもの。
題名は、山に潜む未確認生物。
その動画に、二つの黒い影。こちらに気付いたのか未確認生物が森の中に消えていく。
動画はそこで終わり、以降そのチャンネルからは何も発信されていない。
別にこの動画から有名になったわけではない。今でも胡散臭いとコメント欄に呟かれている曖昧なもの。
この動画から人生が変わる。なんてことは無い。はずだったのに、彼は、憧れてしまった。
「おい、ありゃニンゲンかぁ。遂に見つかってしまったじゃねぇか」
森の奥へ奥へと駆けながら、問う。
「そうね、アナタが、へましたせいでね」
私は、冷徹に切り崩す。
「おいおい、チョイと言葉が辛くねぇかぁ。オイラのメンタルがぁ」
私は、事の重大性を理解していない彼を見て、立ち止まり、
「あのねぇ、だいたいアナタがあんなに山を下るからでしょう」
「私達は見つかったら、終わり、なの。分かってるでしょ?」
彼はばつが悪そうに、顔を赤らめ、指で頭を掻く。
「スマン、気をつける」
巨体に見合わない小さな声で、ボソッと絞り出す。
「じゃ、行くわよ」
私は、森の最深部を目指し駆ける。ニンゲンが決してたどり着けないくらいの奥の深いところへ。
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