7 / 22
眠るきみに秘密の愛を
しおりを挟む
青い空、白い雲。太陽はそろそろ南へ登りつめる頃。
間違っても狭い教室で授業なんて受けてる天気じゃない。
こんな日は屋上でサボるに限る。
「こんな日はって、てめぇ昨日も一昨日もここでサボってたじゃねぇか」
「ありゃ、見つかった」
ふいにかけられた声に振り向くと、ちょうど階段を上ってきた彼と目があった。
考えていたことが分かるなんて、奴はエスパーだろうか。
「誰がエスパーだ。全部声に出てんだよ」
「あれま」
彼は盛大にため息をついて私の隣にどっかと腰を下ろした。
ガサガサと持っていたコンビニの袋の中から缶コーヒーを二本取り出し、ん、と一本を私に渡してくる。
サンキュ、そう言ってすぐに栓を開け、一気に半分ほど飲みほした。
ミルクも砂糖も入ってない、苦いブラックコーヒー。
さすが、私の趣味が分かっている。
「ちょうど喉乾いてたんだ。ナイスタイミング」
「どうせ口開けて寝てたんだろが」
そんなことまで分かるとは、エスパー恐るべし。
もはやこれはストーカーなんじゃないだろうか?
そこまで考えたところで、違ぇよと軽く頭を小突かれた。
しまった、また口に出していたのか。悪い癖だな、うーん、早目に直そう。
隣で彼がさっきより大きいため息をついた。
「ところで、授業は? まだ4時間目くらいじゃないの?」
「お前……自分だって出てないだろが。それに今はまだ3時間目だっての」
あ、惜しい、そう言って、残りのコーヒーを喉に流し込む。
こんなやり取りももう何回目だろうか。
私のお気に入りサボりスポットには、いつの間にか彼がよく来るようになって、いつの間にかこんなによく喋る仲になって、いつの間にか彼は私の好きなコーヒーを覚えた。
「サボりなんて、君は不良だなぁ」
「……お前には言われたくねぇよ。万年サボり魔」
二人でフェンスにもたれかかって、何も言わずに空を見上げる。
そよそよと秋の風が心地よい。
うとうとと、さっきまで寝ていたはずなのに、また眠くなってきた。コーヒー飲んだのになぁ。
うつらうつら舟を漕いでいると、眠ぃのかと隣の彼。
駄目だ、返事もしたくないほどに眠い。んー、適当に返すと彼は今日何度目かになるため息をついた。
そんなにため息ついたら幸せ逃げていくぞ、そう口に出す余裕もない。
「ほら。風邪引くだろ」
そう言ってかけられたのは、多分、彼の上着。
これを脱いだら君こそもう肌寒いんじゃないのか。
そう思うけどまあいつものことだから気にしないことにした。
目をつぶったまま、彼の腕に寄りかかる。ああ暖かい、快適。うちのベッドより全然……
そこまで思ったところで私の意識は本格的にフェードアウトし始めた。
上から彼が何か言ったような気がするけど、もう聞こえない。
「……おや……す……み……」
それだけつぶやいて私は眠りの淵へと落ちていく。
「……また寝やがった……ったく、人の気も知らないでよぉ」
自分の腕にもたれてすやすやと眠る彼女を見る。
なんとも気持ちよさそうなこの姿は実はほとんど毎週のこと。
この曜日、この時間は、時間割の関係か他のサボり組がいないから、彼女と二人きりになれる。
だから毎週欠かさず、彼女の好きなコーヒーを買って来ているというのに……
「……気づいてねぇんだろうなあ、お前は……」
まあ、今はまだいい。自分にその無防備な姿を見せてくれるだけで、今は、いい。
彼は優しく彼女の髪をなで、栓を開けただけだったコーヒーの一口目を、ようやく飲んだ。
チャイムの音で彼女が目を覚ますまで、あと32分。
『木曜日の3時間目』
(君との、秘密の逢瀬の時間)
間違っても狭い教室で授業なんて受けてる天気じゃない。
こんな日は屋上でサボるに限る。
「こんな日はって、てめぇ昨日も一昨日もここでサボってたじゃねぇか」
「ありゃ、見つかった」
ふいにかけられた声に振り向くと、ちょうど階段を上ってきた彼と目があった。
考えていたことが分かるなんて、奴はエスパーだろうか。
「誰がエスパーだ。全部声に出てんだよ」
「あれま」
彼は盛大にため息をついて私の隣にどっかと腰を下ろした。
ガサガサと持っていたコンビニの袋の中から缶コーヒーを二本取り出し、ん、と一本を私に渡してくる。
サンキュ、そう言ってすぐに栓を開け、一気に半分ほど飲みほした。
ミルクも砂糖も入ってない、苦いブラックコーヒー。
さすが、私の趣味が分かっている。
「ちょうど喉乾いてたんだ。ナイスタイミング」
「どうせ口開けて寝てたんだろが」
そんなことまで分かるとは、エスパー恐るべし。
もはやこれはストーカーなんじゃないだろうか?
そこまで考えたところで、違ぇよと軽く頭を小突かれた。
しまった、また口に出していたのか。悪い癖だな、うーん、早目に直そう。
隣で彼がさっきより大きいため息をついた。
「ところで、授業は? まだ4時間目くらいじゃないの?」
「お前……自分だって出てないだろが。それに今はまだ3時間目だっての」
あ、惜しい、そう言って、残りのコーヒーを喉に流し込む。
こんなやり取りももう何回目だろうか。
私のお気に入りサボりスポットには、いつの間にか彼がよく来るようになって、いつの間にかこんなによく喋る仲になって、いつの間にか彼は私の好きなコーヒーを覚えた。
「サボりなんて、君は不良だなぁ」
「……お前には言われたくねぇよ。万年サボり魔」
二人でフェンスにもたれかかって、何も言わずに空を見上げる。
そよそよと秋の風が心地よい。
うとうとと、さっきまで寝ていたはずなのに、また眠くなってきた。コーヒー飲んだのになぁ。
うつらうつら舟を漕いでいると、眠ぃのかと隣の彼。
駄目だ、返事もしたくないほどに眠い。んー、適当に返すと彼は今日何度目かになるため息をついた。
そんなにため息ついたら幸せ逃げていくぞ、そう口に出す余裕もない。
「ほら。風邪引くだろ」
そう言ってかけられたのは、多分、彼の上着。
これを脱いだら君こそもう肌寒いんじゃないのか。
そう思うけどまあいつものことだから気にしないことにした。
目をつぶったまま、彼の腕に寄りかかる。ああ暖かい、快適。うちのベッドより全然……
そこまで思ったところで私の意識は本格的にフェードアウトし始めた。
上から彼が何か言ったような気がするけど、もう聞こえない。
「……おや……す……み……」
それだけつぶやいて私は眠りの淵へと落ちていく。
「……また寝やがった……ったく、人の気も知らないでよぉ」
自分の腕にもたれてすやすやと眠る彼女を見る。
なんとも気持ちよさそうなこの姿は実はほとんど毎週のこと。
この曜日、この時間は、時間割の関係か他のサボり組がいないから、彼女と二人きりになれる。
だから毎週欠かさず、彼女の好きなコーヒーを買って来ているというのに……
「……気づいてねぇんだろうなあ、お前は……」
まあ、今はまだいい。自分にその無防備な姿を見せてくれるだけで、今は、いい。
彼は優しく彼女の髪をなで、栓を開けただけだったコーヒーの一口目を、ようやく飲んだ。
チャイムの音で彼女が目を覚ますまで、あと32分。
『木曜日の3時間目』
(君との、秘密の逢瀬の時間)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる