余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人

文字の大きさ
11 / 93
1章

相応しい人

しおりを挟む

 
 今日の午前中は休暇と言うことで、二人は少しの間、話をする事にした。


 「えっと……旦那様は、深く魔法を探求されていますが、一体どの様な事を行われているんですか?」


 ルーンと言えばかなりの魔法馬鹿だと噂されているし、何より本人も自称するくらいだ。
 アンジェは魔法が使えないが、知識だけならかなり豊富だ。是非ともルーンの話を聞きたかった。

 興味津々な眼差しに、ルーンは微笑む。


 「私は魔物の調査をしているんです。最近、魔物が集落を襲い、壊滅される事件が後を絶ちません。昔から良くあった事件ですが、ここ最近は特に酷い。私は、そんな魔物達からこの世界を守りたいと考えているんです」


 ルーンの穏やかな笑みが、一瞬酷く冷たいものへと変わった様な気がした。
 彼の抱く未来の世界。
 それにアンジェは息を飲んだ。

 前々から魔物の大群によって集落が襲われる事件が度々あった。けれど、その事件は徐々に少なくなりつつあったのだが、ここ最近になって突然また魔物の襲撃が多発する様になったのだ。

 イリスもまた魔物の大群によって故郷を失った一人である。
 魔物の大群の襲撃に、たくさんの村と人々の命が失われた。

 そしてそれは確か……


 「私の家族もまた、魔物の出撃で命を失いました」


 ルーンの言葉にアンジェは小さく頷く。
 ルーンの両親、そしてまだ当時十歳だったルーンの妹のルチアは両親と共にとある集落に仕事へお向かった。
 運が悪かったのか、それとも神様によって定められていた運命だったのか、仕事先の集落が魔物に襲われてしまった。
 出撃を受けた後の集落は酷い有様だったと聞く。
 残っていたのは崩れ落ちた建物や壊れた農具ばかりで、人間の姿は何処にも無かったとか。


 「だから私は魔物からこの世界を守りたい、そう考える様になりました。だから、私はまだ魔法を極めなければならないのです」


 ルーンの言葉にアンジェはただ頷くことしか出来なかった。
 そして同時に、形だけではあるが、自分はルーンの妻には相応しくない。そんな思いが心の奥底に一つの灯火の様に姿を現せた。

 


▢◇◇▢▢▢◇◇◇◇◇◇




 昼過ぎになった頃、リディスがやって来た。
 アンジェは何処か上の空の様子。


 「え、ついに公爵に会ったのか?」


 「うん。今日突然ね」


 「ふーん。で、感想は?」


 「色々話したよ。で、私なりに思うところがあった」


 「思うところ?」


 「うん、まぁそれは良いの。あ、そう言えば公爵は、私が十八になった時に妻として扱うって言ってたかな」


 アンジェの言葉にリディスは目を大きく見開いた。
 そして突然、勢いよく立ち上がり声を上げた。


 「お前、それで良いって承諾したのかっ!?」


 あまりにも大きな声だったので、アンジェは圧倒される。だから、頷くことしか出来なかった。
 一方、リディスは表情を歪めさせた。
 だから一瞬、泣いているのかと勘違いしてしまいそうになった。


 「ルーン公爵が私が十八になるまで待ってるのって、つまり今の私は恋愛対象には入らないからでしょ? なら仕方ないよ。それに、十八になる前に捨てられるに決まってるし。まぁ、私は公爵には相応しくないって心底思ったしね」


 「捨てるって……。ルーン公爵は良い人って有名じゃん。それに相応しくないってどういうこと?」


 「確かに本当に良い人だよ。けど、運命って突然やって来るってレベッカさんの作品でヒロインが言ってたの。私も確かにって思わず賛同しちゃったの。これはね、公爵、私。そしてリディスにだって言えることだよ。誰だって運命の人がる。だから、私は公爵の運命の人じゃないって思ったの。だから私は相応しくないってこと」


 ルーンには叶えたい夢がある。
 その夢はあまりにも偉大で、素晴らしい夢だと思う。
 そんな夢を抱くルーンには、あまりにも自分は不釣り合いだとアンジェは思ったのだ。

 妻とは夫を支える何よりも強い味方だとアンジェは思っている。
 けれど、アンジェは魔法が使えない。そして余命宣告まで受けてしまっている。
 そんな自分がルーンを支える事なんて出切っこない。


 だからアンジェは決めた。


 「旦那様に相応しい人を私が見つけるっ!」


 アンジェの言葉にリディスは目を見開いた。
 そして「はぁ!?」と声を荒らげた。

 ルーンに相応しい人。
 その理想は、アンジェの大好きな姉のリアである。
 なにせ、リアは性格、容姿、技能、人脈と言う四つの点で全て完璧だ。
 しかし、リアには実はもう想い人がいる。勿論、両親はそれを知らない。
 だから、リアの様な(アンジェからしたらリアを超える人は居ない)女性を探そうと心に決めた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです

ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

処理中です...