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2章
秘密の薔薇園
しおりを挟む空がオレンジ色に染まった頃、アンジェはとある場所へと訪れていた。
そこは真っ赤な薔薇が咲き誇る薔薇園。
薔薇が美しく咲き誇る薔薇園には、誰の姿も無い。
アンジェが薔薇のアーチを進んでいくと、東屋を見つけた。
そしてそこには一人佇むある人物の姿があった。
その人物はアンジェに気が付くと、ニコリと微笑んだ。
「やっほー! アンジェ」
「団長様。お久しぶりです」
その人物とは、宮廷専属魔導師団団長のエミルであった。
「団長様なんて、そんな堅苦しい名前で呼ばなくていいよ。何ならエミルって呼んでもいいよ?」
「では団長様で」
アンジェの返答に残念だ、と笑って返すエミル。
しかし、それは本心なのかは分からない。
アンジェがエミルと出会ったのは二日前のお昼休憩で食堂ある。
あの会話の二日後にこうして薔薇園にアンジェが足を運んだという事は、かなり切羽詰まった状況なのかもしれない。
そうエミルは思った。
「まぁ、立ち話もなんだ。座りなよ」
エミルはそう言うと、アンジェを椅子へと勧めた。
アンジェは椅子に腰掛ける。
向かい合うようにして座る二人。
気まずさにアンジェは視線をさ迷わせた。
「単刀直入に聞くね。アンジェの中に居るのって魔文の呪い?」
「そう思った理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「理由。そんなに決まってるじゃん。オレが宮廷専属魔導師の団長で、超すごい魔導師様だからだよ」
そう言ってニッと白い歯を見せるエミル。
ルーンが褒める程の魔法の腕前を持つ彼なら確かに有り得そうではあるが、あまりにも極端過ぎて逆に信じ難い。
アンジェはエミルを怪訝そうに見つめる。
そんな瞳にエミルは笑う。
「いいね! その瞳! 凄く冷たくてゾクゾクするっ! 最高っ!」
「あ、ありがとうございます? 」
「まぁ、さっきの理由は嘘だけどね!」
「……旦那様に団長様に嘘をつかれましたと報告しておきます」
「うわ、それだけは辞めて! あいつ、本当にアンジェの為だったら何でもしそうで下手したら容赦なくオレにだって攻撃してくるあら本当に辞めて!!」
「辞めて欲しいのなら本当の理由を話してくださいませんか?」
「そだね。暗くなる前に帰さないとルーンがうるさいだろうし」
エミルはそう言うと、ちょっとごめんね、と一言謝罪の言葉を入れる。
一体何故エミルが謝るのか不思議に思っていた次の瞬間。
「え、ちょ、団長様っ!?」
突然エミルは椅子から立ち上がるとアンジェの白く細い手を優さしく握った。
そしてその指にはめられた指輪を人差し指でつつくと、呟いた。
「この魔法道具を見た時ピンと来た。オレも一時期身に付けてた事があるから。それと…」
エミルの言葉にアンジェが目を見開かせる。
確かに彼は今指輪を見て『身につけたことがある』と確かにそう言ったのだ。
エミルは小さく微笑むと手を離す。
そして自身の服の襟を掴み、右へと引っ張った。
そうすれば鎖骨が露になって……
「それって…!?」
アンジェは更に目を見開いた。
エミルの鎖骨から下の部分に伸びる見覚えのある禍々しい文様。
とは言っても、それは跡だけである。
肌にしっかりと残された一見傷跡のように見受けられるそれは、正しく魔文の呪いの文様だった。
「オレも昔は魔文の呪いを患ってた事があるんだよね。それも十歳ぐらいの時に発病してさ。まぁ、今は完治したけど」
「その年齢で発病して完治出来るもの何ですか?」
アンジェの問にエミルはぱちくりと瞬きをする。
その瞳には少しの驚きが浮かんでいる。
一方のアンジェもまた驚きを隠せずにいた。
なにせ魔文の呪いを幼い子供が発病すれば命が助かった試しは無い。
十の時に発病していたら尚更だ。
(マモンは私が発病した時に目覚めたみたいだからマモンか団長様の病気を治した様には思えない。だけど、治療法は見つかっていない不治の病だし…一体どうやって完治したの?)
アンジェが頭を悩ませていると
「オレが十一の時に、一人の旅人に会ったんだ。そいつの名前はミルキー。そいつはオレの魔法の師であり、魔文の呪いを治してくれた医者でもある」
ミルキー
その名前にアンジェは驚いた。
なにせその名は、アンジェの専属医師の名前と全く同じだったのだから。
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