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3章

救う者たち

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 「これから向かう先は此処よ」


 そう言ってフローラが示したのは、王都からかなり離れた場所にある一つの森。
 その森の名を見て、誰もが驚いた。

 なにせその森の名前は『封印の森』
 名前の通り、その森は封印された森……言わば立ち入り禁止とされた森である。

 そしてこの森は宮廷専属魔導師団の管理下に置かれている為、エミルの許可さえ降りれば立ち入る事が出来る訳で……。


 「お兄様の研究によると、ここには魔文の呪いの発症の原因と似たような魔力を見つけたらしいの。けど…」


 「三年前から急にその魔力を感じなくなった」


 そう言ってルツが見せたのは、一枚の地図。
 どうやらそれは封印の森の地図らしい。


 「森の最深部には一つの遺跡がある事が分かっていた。そしてその中にその魔力の存在を察知していた。けど、立ち入り禁止で中の調査は出来てない。つまり未知の場所なんだ」


 ルツはエミルへと目配せをする。

 そうすれば、エミルは肩を落とす。


 封印の森は遥か昔から立ち入る事さえも禁止されていた場所。
 そしてそこを宮廷専属魔導師団の団長として管理して来た訳だが……。


 (正直、森については分かってない事だらけなんだよなぁ)


 何故立ち入り禁止されているのか。
 それをエミルでさえも詳しくは知らない。
 教えられていないのだ。


 (……危険な場所の可能性は十分にあるが)


 エミルはベッドに横になるアンジェを見つめた。


 アンジェは大切な部下の妻だ。
 そして何より同じ病を患った者同士、やはり気になるし、完治して欲しいと心から思う。


 「エミル。森へ入る事、許可してくれる?」


 「……分かりました。ですが、条件が有ります」


 「何?」


  「森の中がどうなっているのか、管理していた私でも分かりません。つまり、危険な場所である可能性が十分にあります。ですので、森へ行くのは私とルーン、リア、リディスのみで向かいます」


 「今自分で危険と言っておきながら四人で行く気なのっ!?」


 「ルーンには悪いですが、これは私的な調査です。魔導師団全体を動かす訳には行きません。それに、少ない方が効率的だ」


 魔導師団だって決して暇ではない。
 皆が与えられた職務を日々全うしている。
 その為、急に人を借り出すことなんて出来ないのだ。

 そして何より……エミルには少人数での行動が効率的なのだ。


 「…そう。でも、この調査には私も同行するわ」


 「フローラ様…。私の話、聞いてました?」


 「聞いてたわよ。けど、案内係って必要じゃない? それに……私だって生半可な気持ちじゃない。自分の身は自分で守るわ。だから……お願い、私も連れてって」


 そう言ってフローラがエミルへと頭を深々と下げた。

 エミルは困ったように頭をガシガシと掻きむしると…


 「エミル団長。俺からも頼みます」


 そう言って頭を下げたのはカインだった。


 まさかのカインの行動にフローラは驚いた。
 そしてそれは、この場にいる誰もが同じだった。


 「……お前、王女様を危険な目に合わせたいの?」


 「違う。ただ、任せて欲しいと思ったんだ。フローラ様の護衛は俺がする。だから、フローラ様の同行を許して欲しい」


 「……お前、怪我はいいのか」


 「剣は振れないが、魔法は日々鍛えてきている。問題は無い」


 エミルは肩を竦めた。
 昔からだが、本当にカインという男はフローラを大切に思っているのだと伝わってくる。

 見せ付けられた……。
 なんて思いながら、エミルは苦笑を浮かべた。


 「出発は明日の早朝にしましょう。それまでに魔文の呪いについて分かっている事を話すわ」


 フローラの指示に、皆が大きく頷いて見せた。


 
 
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