余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人

文字の大きさ
89 / 93
3章

封印

しおりを挟む


 泣いて村へ駆けていくハルを追ってユアも走る。


 ハルに拒絶された事のショックは大きい。
 心に大きな傷を勿論負った。
 けど、それでも今は走り去っていく小さな後ろ姿が心配で、ユアはその後を追った。


 「……きゃっ!」


 そして遂にユアが恐れていたことが今起こってしまった。

 ハルが躓いてしまったのだ。
 よく転んで泣くハルの姿をよく見てきたユアだからこそ、何とかハルを受け止めようと腕を伸ばすが……。


 「おっと。大丈夫かな、お嬢さん」


 何者かがハルの体を受け止めた。


 ユアはその瞬間、安堵した。

 しかし、安堵出来る瞬間など本当は存在していなかった。

 突然突きつけられる剣の先。
 ユアは戸惑いで、ただその剣を向けてくる人物を見つめることしか出来なかった。


 「………この森に突然巨大な魔力を察知し駆け付けて来たが……その正体はお前か、この化け物めっ!」


 「巨大な魔力? 化け物……? なんですかそれ……」


 訳が分からず、更にユアの頭は混乱する。

 しかし、剣と言う危ない武器を持った人物にハルを任せてはいられない。

 そう思い、ユアが歩を進めれば


 「やだ、来ないでっ!!」


 「…っ! は、ハル…どうして?」


 またもやハルに拒絶された。
 あまりにも悲しくて、ユアの瞳には涙が溜まり始める。

 ハルを助けてくれた人物……灰色の鎧に身を包んだその男は、ギロリとユアを睨みつける。
 その視線に、ユアは首を横に振る。


 「違います、僕はハルの……妹をただ…!」


 「化け物の分際で人の言葉を話すとは……。気味が悪いな」


 「待ってください、僕は……!」


 そうユアが声を上げようとした時だった。
 茂みの奥から男と同じ鎧に身を包んだ人間たちが続々と姿を現し始める。

 そして一斉に鞘から剣を抜き、ユアへと向けられた。


 もう何が何だか………ユアはさっぱり理解出来なくなっていた。



 それからユアがハッキリと覚えているのは、暗い檻の中に閉じ込められ、ただ絶望に暮れる日々を送った事だ。


 なぜ自分がこんな目に…?
 大切な妹を助けたくて無我夢中だっただけなのに……。


 檻の中に閉じ込められてどれぐらいの月日が流れたのだろう。気が付けば真っ暗な暗闇から、太陽の光が眩しい地上にいた。


 「………ここ、どこですか」


 足枷と手枷をされ身動きが出来ない状態のユア。
 そんな彼の前には、あの時森で出会った男の姿。

 虚ろな瞳をしたユアに、彼は静かに話を始めた。


 「君には今から生贄となってもらう」


 「………は?」


 生贄

 意味が分からず、ユアは目を見開いた。

 ずっと長い間檻の中に監禁されていた事もあり覚醒しきってなかった頭が、その言葉で徐々に覚醒し始める。


 そして漸く言葉の意味を理解したその時、目の前に広がる光景に……ユアは驚愕した。


 「………何で皆、ボクのことそんな目で見てるの?」


 気づけば数十人の鎧を身にまとった軍団に囲まれていたユア。
 そして、ユアの事を冷酷な瞳で見つめていたのは、村の仲間達と母親とハルだった。


 そして彼等は口を揃えて言葉を紡ぎ始める。


 「こんな化け物が村に潜んでいたとは…!」


 「あぁ……。平和のためにどうか今すぐこの村から出て行っておくれ」


 耳を………塞ぎたかった。
 次々ユアへと向けられる、心の無い言葉の数々。胸が苦しくて、張り裂けそうだった。


 そんな中、母親と目が合った。
 けれども母親は、ユアをただ睨み付けて…


 「あんた何か、産まなければ良かった。いいえ、あんた何か家の子じゃない…! さっさと村から出て行って…!!」


 母親にも拒絶された瞬間だった。


 それから檻の中にまた入れられ、ユアはとある場所へと運ばれる事となった。

 もう……生きている心地なんてしなかった。


 しかし


 「少年には悪いとは思うが……まさかあーも簡単に信じ込むとはな」


 「ホントだよ。ただ最近魔物の被害が多発してるからその抑制の為に利用するだけだってのにな」


 「確かに通常の人間よりも遥かに数値の高い魔力を持ってるが、それで化け物呼ばわりとは………。ってそう敢えて呼んで信じ込ませたのは俺たちだけどな!」


 そう言って高笑いをする鎧の男たち。


 ユアは唇を噛み締めた。
 抵抗しようと試みた。
 しかし、手枷と足枷にどうやら魔法を無効化する効果がある様で魔法が使えない。

 
 痛々しい視線が注がれる中、ふとユアはとある人物と目が合った。


 「…………ミルキー」


 唯一無二の親友。
 そんな彼へ静かにユアは手を伸ばす。


 けれどもミルキーは、そっとユアから視線を逸らし、両親と共に家へと帰って行ってしまった。


 「…………誰も、もう居ないんだ」


 母親も妹も、そして親友も……皆、ユアの前から居なくなってしまった。




 それから数時間後、ユアは森の奥の遺跡に封印された。
 凶暴な魔物たちと共に。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末

コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。 平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。 そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。 厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。 アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。 お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。 番外編始めました。 世界観は緩めです。 ご都合主義な所があります。 誤字脱字は随時修正していきます。

邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです

ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

処理中です...