白い猫と白い騎士

せんりお

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12 念話の会話

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その夜、部屋に帰るとすぐ私は表をシグさんのもとまで引きずっていった。

「お、もう機嫌は直ったのか?」

口角をあげてにやっと笑われる。

「にゃー(そっちこそね!)」

それより、と早速文字を押さえようとしたとき、ふわっと抱き上げられて驚いた。

「にゃっ?」

「質問だろ?」

と、問われて返事つきで尻尾を1度振る。

「ならちょっと待て」

そう言ってそのまま部屋の中央まで連れていかれて、シグさんはソファに座った。私はその向かいの机の上に下ろされる。何がしたいのかわからない私は首を傾げるばかりだ。

「よし、いいか?あの表で1つ1つ文字を
押さえていくのは時間がかかる。そこで、もっといい方法がある。それが念話だ」

「にゃ」

念話?っていうと…テレパシーのようなものなのだろうか。

「これは微量でも魔力があれば、後はセンスさえあればできるものだ。これがあれば言葉が話せなくても頭の中だけで会話ができる。便利だろ?」

「にゃ!」

「やりたいか?」

「にゃー!」

なにそれめっちゃ便利じゃん!そろそろ言葉を話せないのにも嫌気が差してきた頃だ。是非ともそれを使えるようになりたい。

「よし、方法を教えるからよく聞け」

「にゃ!」

「いいか、集中して伝えたいことを、伝えたい相手に頭のなかで言う。これだけだ」

「にゃっ!?」

え、ほんとにそれだけ!?さすがに無理っぽいんですけど…

「イメージ的には相手と自分を一本の糸で繋げるイメージだ」

うーん?なにそれ難しい。

「まず俺がやってみるから」

そう言ってシグさんは黙り込んだ。と、頭の中で声が響いた。

『リツカ、聞こえるか?』

直接脳内に聞こえるような声が初めての感覚で、驚いて声をあげる。

『その分だと聞こえてるみたいだな』
「とまあこんな感じだ。最初は目を合わせながらやるとやりやすい」
『ほらやってみろ』

交互に切り替えながら喋るシグさんに
頭が混乱してくる。私はやけくそでやってみることにした。シグさんの青い目をぐっと睨み付けるように見て、集中する。が、何も起きない。

「どうしても伝えたいことを考えると最初は繋がりやすいそうだ」

どうしても伝えたいこと…?うーん、そうだな…
尻尾を掴むな尻尾を掴むな尻尾を掴むな!!

「聞こえないな」

シグさんは前でにやにや笑っている。

「お前もしかしてセンスないのか?」

からかう口調で言われてムカッとする。私だって頑張ったらできるはず!…はず…

「まあいいさ、そんなにすぐには出来ないだろう。そのうち出来ればいい。とりあえず俺は夕飯作るからまた後でやるぞ」

そう言ってシグさんはキッチンに向かってしまった。
くっそー、悔しい。早くシグさんと自由に話せるようになりたい。聞きたいこととかたくさんあるのに… 
もしかしたら出来るかも、と集中はしたままにしておく。だけどこれが結構疲れる。一本の糸一本の糸……そういや今日の晩ごはん何かなー

「猫が好きな魚」

突然シグさんが振り向いて言った。びっくりした!なんでわかったの?もしかしてテレパシー、いや、これまじでテレパシー…

「お前今出来てたぞ」

シグさんが珍しく微笑みながら言う。まだ信じられない私はもう一度やってみる。

『シグさん聞こえてますか?』

『あぁ、聞こえてる』

『ほんとに?やった!』

どうやら本当に成功したみたいだ。私は嬉しさを我慢できずにシグさんの近くまで走って言って、尻尾をぱたぱた降った。

『私話せてますか?』

『あぁ。1度繋がると次からはそこまで意
識する必要はなくなる。これで普段から会話できるだろ』

『よかったー!』

シグさんが興奮する私を宥めるかのようにぐりぐりと撫でてくれた。

「にしても、初めての念話の内容が夕飯の話か。なんというか…」

くくっと堪えきれないという風に肩を震わせて笑うシグさんに私は恥ずかしくなって猫パンチを一発かまして、ソファに退散した。

『いてっ!お前夕飯抜くぞ!』

と念話で文句を言ってくるシグさんを私は完全にスルーしてソファに丸まった。






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