白い猫と白い騎士

せんりお

文字の大きさ
上 下
24 / 41

24 声

しおりを挟む
シグさんはものの数分で魔獣たちを倒してしまった。圧倒的な強さに言葉が出ない。倒れた魔獣たちの真ん中に立ち、シグさんはふーと息を吐いている。その様子をレオンさんは冷静に、私は呆然と見ていた。シグさんがこちらを見たことではっと我に帰る。

「無事か?」

「こっちはね。シグは?」

「なんともない。お前こそ怪我は?」

「今の間に治癒魔法で治したよ」

「そうか、さすがだな」

そんな会話を交わしながら歩いてくるシグさんに疲労の色は見えない。ただその目の色はいつもの深い青ではなくて明るい光をたたえている。まるでさっきまとっていた光のようだ。私が目をじっと見ているとすぐにその色は元に戻った。

「それよりシグ、魔の森の中で魔法を使うなんて!何が起こるか!」

「だが仕方がなかった。すぐに出るぞ」

そう言って二人はすぐに動き始めた。私は何も飲み込めないままおいてけぼりだ。

『ちょっ、ちょっと待って!どういうこと?』

わからないことだらけだ。自分が役立たずで嫌になる。

『あぁ、すまん。動きながらでいいか?』

…え?シグさんが答えてくれるその声に重なって別の何か…声が聞こえる?

『わぁ!仲間だ!仲間だよ!』

『えーでもなんで外にいるの?』

『そんなの知らないよ!でも仲間だ!』

やっぱりだ。耳をすますと確かに声が聞こえる。

『誰?誰なの?』

『おい、どうした?』

シグさんが眉を潜めている。シグさんには聞こえていないのか。

『おいでよ!』

『こっちにおいで!』

どこからか私を呼んでいる。なんだか安心する気配もする。

「おい、リツカ!?どこへ行く!」

シグさんが焦って私を呼んでいる。でも…あの声は私を呼んでいる…行かないといけない…
私は引き寄せられるように森の奥へ走り出していた。





ただ声がするほうへ走る。シグさんにちゃんと言わないと、とか奥へ行ってはだめだ、とか頭の奥で考えているのにそれは行動に表せず、走り続けた。
と、突然目の前に光の膜が広がって私は急停止した。無意識に走ってきたけれど魔獣に遭遇することはなくて、そのことに今気づく。 

『来たよ!』

『来たね!』 

『入っておいで!』

入る…この膜の中に?試しに前足でちょんとつついてみると

『うわっ!?』

なんの抵抗もなしに足が通り抜けた。入れてしまったものは仕方がない。私はそのまま体を膜に通した。

しおりを挟む

処理中です...