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2 奈月side
場違いにも程がある。
パーティー会場に足を踏み入れた時の俺の最初の感想だ。
華やかなドレスをまとったきれーな女の人。仕立てのいいスーツやジャケットのイケメンたち。
ドレスコードがあるから、と言われて「そんないい服を持っていない」と言えば嬉々とした涼に二時間に渡って着せ変えられた末に決められた今日のスーツはグレーで細身のシルエット。ネクタイには差し色で濃い赤。
涼に言わせれば「奈月の可愛さと美しさを存分に引き出す出来!俺の最高傑作!」だそうだ。俺に言わせれば「服に着られている凡人」になる。
こいつの目ちょっとおかしいんじゃないの、と心配になって「病院いけば?」と言うと真顔で「この子無自覚だ。俺が守らねば。」と呟いていた。わけわからん。
その上髪型までいじられて俺は片側だけ編み込みのアシンメトリーにされた。涼は「やばい、完璧だ。俺はなんてものを作ってしまったんだ」と、一人で悶えていた。俺としてはちょっとチャラくないか?と鏡を見て思ったが。
パーティー会場に入るや否や涼は
「じゃあ俺番探しのためにいろんな人と話してくるから!奈月も楽しんで!」
と去っていってしまった。
お前、俺を守るんじゃなかったのかよ!俺はお前以外にここに知り合いいないんだけど!っていうか俺を連れてきた意味は⁉と思うも、涼は既にいない。
友人の自由人っぷりにはぁーっと深いため息をついて俺は早々に壁の花となることにした。
(なるべく目立たずに過ごして、ちょっとしたら涼に声をかけて帰ろう。)
そう思って、大人しくしていたのに、
しばらくすると
「ねえ、君どこの子?初めて見た。」
知らない男に声をかけられた。
「友達に連れてこられたんですよ。もう帰るんで。」
「えーもう帰るの?もうちょっと俺と喋らない?」
なんだこいつめんどくせぇな、と思ってろくに顔を見ていなかった男をちゃんと見てみる。アルファだろう男の顔は回りと比べてとても整っている。でも涼ほどじゃないな。なんかチャラいし。と内心失礼な感想を抱く。
その間に男が
「ねぇーちょっとあっちいかない?」
と腰に手を添えてきた。
うわっ最悪!俺を口説くとか暇人かよ!しつっこいな!
男の手をぱしっと振り払って
「友人を探すので失礼します。」
と振り切った。
その場から反対側へ移動する。
男はそれ以上踏み込んではこない様子でほっと息をつく。
なんか飲み物をと思ってきょろきょろしていると
「君きれいだねー。」という話す声が聞こえる。
こっちでもナンパかよ。声のかけ方下手くそかよ。絡まれてるやつかわいそー。
「聞いてる?君だよそのグレーのスーツの」
へぇー、グレーのスーツ…って俺か!
ぱっと声の方向を向くと今度は爽やか系イケメンがこっちを向いて微笑んでいた。爽やかの癖にお前もかよ!とげんなりする。ほっといてくれなさそうだったので仕方なく返事をした。
「俺に何の用ですか?」
いかにもめんどくさい、という風に聞こえるように言うと
「冷たいなー。」
と爽やかがへらへら笑った。いや、へらへらしてる時点でこいつは爽やかじゃないか。
「君すごく綺麗だよねー。体つきもエロいし。」
だめだ、こいつ変態だわ。俺やばいかもしんない。
「は?頭大丈夫ですかね?いや、大丈夫じゃないですね、確実に。」
「言うねー君。いいよ、俺強気な子好きだよ。」
この変態イケメン、変態な上に嫌味も通じないのか!このままじゃ俺やばい!本格的に逃げる道を探し始める。
「それに、君すごくいい匂いがする。」
逃げ腰になっていた俺の腕を突然掴んだ変態イケメンに引き寄せられて俺はバランスを崩した。
「うわっ!?」
体勢を崩した先には変態イケメンの胸があった。俺はそこにぽすっと入ってしまった。変態イケメンがすんっと俺の首筋に顔を近づけて匂いをかぐ。
「うん、やっぱいい匂い。誘われてるみたい。」
なんかやばいことを言われている気がするが俺はそれどころではなかった。
変態イケメンは仮にもアルファなのでその胸に飛び込んでしまってはフェロモンの濃い匂いがする。それは全然いい匂いではなくて俺のオメガとしての本能が恐怖を感じた。
やばいやばいやばいっ!こいつの匂い気持ち悪い!怖い!パニックを起こしそうになる俺にまったく気づかずに変態イケメンはあろうことか俺を抱き締めようとしてくる。
俺は必死に抵抗して胸をどんっ!と突き飛ばしてなんとか男から離れることに成功した。気持ち悪さのダメージがでかすぎてふらふらとよろける俺に懲りずに手を伸ばしてくる。ほんっとにやばい、逃げないと…!と再びパニックに陥りかけた時、会場の扉の一つがぱっと開いた。
その瞬間今度はいい匂いが流れ込んできた。柑橘系に少し甘さが混じった匂い。もっと嗅いでみたい、無意識にそう思った瞬間、体が突然熱をもった。どくんっと心臓が跳ねる。なんだこれっ、体が熱い…っ?
「っ君ヒートだったの?すごいフェロモンだ」
あぁ、そうだ。この感覚はヒートだ。でも俺のヒートのサイクルはまだのはず。なんで今っ…?体の奥が疼き始める。やばい、こんなとこでヒートになんかなったら確実に襲われる!
回りはアルファばかりだ。しかもパーティーのため普段なら抑制剤を入れてある鞄を持っていない。とりあえずなんとかしてここから出ようとするも熱く疼く体からは力が抜けてよろよろと座り込んでしまう。
もうだめだ…、理性が呑まれるっ…。霞む視界の中にまっすぐこちらに向かってくる人が見えた。その人が向かってくる程自分を反応させる匂いが濃くなる。
ふと俺の脳裏に涼の言葉がよみがえった。
『運命の番は出会った瞬間にわかる。なぜならお互いに反応せずにはいられないから。』
まさか…こいつが…俺の…運命の番なのか?
俺の目の前で足を止めてかがみこむ男。男が動くたびに匂いが動く。ふっと俺の頬に向かって手が伸ばされた。触れられた頬が熱い。何よりも頬に触れられただけなのに気持ちいいと感じてしまった。
男の顔を見ようと顔を上げようとした時、体が男の腕に抱き込まれた。香りがいっそう濃くなって、体が敏感になる。自分のスーツが肌にすれるだけでももう辛い。強すぎる自分をおかしくする香りの中で俺はすぅっと意識を手放した。
パーティー会場に足を踏み入れた時の俺の最初の感想だ。
華やかなドレスをまとったきれーな女の人。仕立てのいいスーツやジャケットのイケメンたち。
ドレスコードがあるから、と言われて「そんないい服を持っていない」と言えば嬉々とした涼に二時間に渡って着せ変えられた末に決められた今日のスーツはグレーで細身のシルエット。ネクタイには差し色で濃い赤。
涼に言わせれば「奈月の可愛さと美しさを存分に引き出す出来!俺の最高傑作!」だそうだ。俺に言わせれば「服に着られている凡人」になる。
こいつの目ちょっとおかしいんじゃないの、と心配になって「病院いけば?」と言うと真顔で「この子無自覚だ。俺が守らねば。」と呟いていた。わけわからん。
その上髪型までいじられて俺は片側だけ編み込みのアシンメトリーにされた。涼は「やばい、完璧だ。俺はなんてものを作ってしまったんだ」と、一人で悶えていた。俺としてはちょっとチャラくないか?と鏡を見て思ったが。
パーティー会場に入るや否や涼は
「じゃあ俺番探しのためにいろんな人と話してくるから!奈月も楽しんで!」
と去っていってしまった。
お前、俺を守るんじゃなかったのかよ!俺はお前以外にここに知り合いいないんだけど!っていうか俺を連れてきた意味は⁉と思うも、涼は既にいない。
友人の自由人っぷりにはぁーっと深いため息をついて俺は早々に壁の花となることにした。
(なるべく目立たずに過ごして、ちょっとしたら涼に声をかけて帰ろう。)
そう思って、大人しくしていたのに、
しばらくすると
「ねえ、君どこの子?初めて見た。」
知らない男に声をかけられた。
「友達に連れてこられたんですよ。もう帰るんで。」
「えーもう帰るの?もうちょっと俺と喋らない?」
なんだこいつめんどくせぇな、と思ってろくに顔を見ていなかった男をちゃんと見てみる。アルファだろう男の顔は回りと比べてとても整っている。でも涼ほどじゃないな。なんかチャラいし。と内心失礼な感想を抱く。
その間に男が
「ねぇーちょっとあっちいかない?」
と腰に手を添えてきた。
うわっ最悪!俺を口説くとか暇人かよ!しつっこいな!
男の手をぱしっと振り払って
「友人を探すので失礼します。」
と振り切った。
その場から反対側へ移動する。
男はそれ以上踏み込んではこない様子でほっと息をつく。
なんか飲み物をと思ってきょろきょろしていると
「君きれいだねー。」という話す声が聞こえる。
こっちでもナンパかよ。声のかけ方下手くそかよ。絡まれてるやつかわいそー。
「聞いてる?君だよそのグレーのスーツの」
へぇー、グレーのスーツ…って俺か!
ぱっと声の方向を向くと今度は爽やか系イケメンがこっちを向いて微笑んでいた。爽やかの癖にお前もかよ!とげんなりする。ほっといてくれなさそうだったので仕方なく返事をした。
「俺に何の用ですか?」
いかにもめんどくさい、という風に聞こえるように言うと
「冷たいなー。」
と爽やかがへらへら笑った。いや、へらへらしてる時点でこいつは爽やかじゃないか。
「君すごく綺麗だよねー。体つきもエロいし。」
だめだ、こいつ変態だわ。俺やばいかもしんない。
「は?頭大丈夫ですかね?いや、大丈夫じゃないですね、確実に。」
「言うねー君。いいよ、俺強気な子好きだよ。」
この変態イケメン、変態な上に嫌味も通じないのか!このままじゃ俺やばい!本格的に逃げる道を探し始める。
「それに、君すごくいい匂いがする。」
逃げ腰になっていた俺の腕を突然掴んだ変態イケメンに引き寄せられて俺はバランスを崩した。
「うわっ!?」
体勢を崩した先には変態イケメンの胸があった。俺はそこにぽすっと入ってしまった。変態イケメンがすんっと俺の首筋に顔を近づけて匂いをかぐ。
「うん、やっぱいい匂い。誘われてるみたい。」
なんかやばいことを言われている気がするが俺はそれどころではなかった。
変態イケメンは仮にもアルファなのでその胸に飛び込んでしまってはフェロモンの濃い匂いがする。それは全然いい匂いではなくて俺のオメガとしての本能が恐怖を感じた。
やばいやばいやばいっ!こいつの匂い気持ち悪い!怖い!パニックを起こしそうになる俺にまったく気づかずに変態イケメンはあろうことか俺を抱き締めようとしてくる。
俺は必死に抵抗して胸をどんっ!と突き飛ばしてなんとか男から離れることに成功した。気持ち悪さのダメージがでかすぎてふらふらとよろける俺に懲りずに手を伸ばしてくる。ほんっとにやばい、逃げないと…!と再びパニックに陥りかけた時、会場の扉の一つがぱっと開いた。
その瞬間今度はいい匂いが流れ込んできた。柑橘系に少し甘さが混じった匂い。もっと嗅いでみたい、無意識にそう思った瞬間、体が突然熱をもった。どくんっと心臓が跳ねる。なんだこれっ、体が熱い…っ?
「っ君ヒートだったの?すごいフェロモンだ」
あぁ、そうだ。この感覚はヒートだ。でも俺のヒートのサイクルはまだのはず。なんで今っ…?体の奥が疼き始める。やばい、こんなとこでヒートになんかなったら確実に襲われる!
回りはアルファばかりだ。しかもパーティーのため普段なら抑制剤を入れてある鞄を持っていない。とりあえずなんとかしてここから出ようとするも熱く疼く体からは力が抜けてよろよろと座り込んでしまう。
もうだめだ…、理性が呑まれるっ…。霞む視界の中にまっすぐこちらに向かってくる人が見えた。その人が向かってくる程自分を反応させる匂いが濃くなる。
ふと俺の脳裏に涼の言葉がよみがえった。
『運命の番は出会った瞬間にわかる。なぜならお互いに反応せずにはいられないから。』
まさか…こいつが…俺の…運命の番なのか?
俺の目の前で足を止めてかがみこむ男。男が動くたびに匂いが動く。ふっと俺の頬に向かって手が伸ばされた。触れられた頬が熱い。何よりも頬に触れられただけなのに気持ちいいと感じてしまった。
男の顔を見ようと顔を上げようとした時、体が男の腕に抱き込まれた。香りがいっそう濃くなって、体が敏感になる。自分のスーツが肌にすれるだけでももう辛い。強すぎる自分をおかしくする香りの中で俺はすぅっと意識を手放した。
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