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妄想編
37話【conference in Hukuoka (day 1)】西園寺 すみれ:レストラン (藍原編)
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金曜日の仕事のあと、夕方の飛行機で西園寺先生と博多に向かった。
博多といえば、ラーメン! 今夜はラーメンを食べるわよっ! ……と、意気込んでいたのに。
「藍原さん、42階のフレンチ、行くわよ」
西園寺先生に、無理やりホテルの展望レストランへ連れていかれた。とほほ。
「先生、こういうときはやっぱり市内に繰り出して屋台ラーメンじゃないんですか?」
「何いってるの。ラーメンなんて食べたらニンニク臭くなるでしょ!」
「別にいいじゃないですか、誰に迷惑かけるでもなし」
「ニンニク臭かったら、誰もキスしてくれないわよ」
「……先生、誰かとキスする予定あるんですか」
うそ、学会で男を連れ込むって、本気だったんだ? うーん、ついていけない……。
仕方ない、上司命令なので一緒にフレンチを食べる。西園寺先生は和風美人だし、背も高くてスタイルがいいから、スーツなんて着てホテルを歩いてたりしたら、けっこう人目を引く。……ひょっとしたら、フレンチレストランでも、連れ込めそうな男の人を物色してるのかもしれない。そんなことを思いながらあたりを見回すと……。あれ、あの男の人、見覚えあるぞ。確か、外科の……。
「……あれ、西先生ですよね?」
ふたつ隣のテーブルに座ってる。 女性同伴だけど、誰だろう? 病院では見かけたことのない顔だけど……。
「そうね。西、循環器外科だから、今回の学会に来てるんじゃない?」
そうか、心不全学会だもんね。いても不思議ではない。……て、あれ、西、って呼び捨て?
「先生、知り合いですか? 後輩?」
「ん、大学の同期」
「えっ、そうだったんですか!」
「そう。……何あのカタブツ、あたしとはヤらなかったくせに、あんなきれいな子と食事なんかしちゃって」
「え?」
ちょっと、気になるワードがありましたけど。
「学生時代、あたしが誘って落ちなかった男はあいつだけよ。まったく、思い出してもムカムカするわ」
西先生、寡黙であまり笑わない印象だけど、イメージどおり真面目なのね。なぜだか、ちょっとうれしい。
「見てよあの上半身。スーツ着てるとわかりにくいけど、筋肉のつき方が、最高なのよ。主張しすぎず、でも腹筋割れ間違いなし。卒業してから20年近く経ってるのに変わらないあの体型、あっぱれだわ」
「やっぱりそうですよね!? あの筋肉、絶妙ですよね。前に一度だけ、オペ着で歩いてるとこ見たんです。白衣のときは気づかなかったけど、半袖になると、腕の太さも、胸板も、最高で――」
……はっ! やばい、うっかり同志を得たとばかりに筋肉ネタに食いついちゃったわ! 案の定、西園寺先生の目が光る。
「……藍原さん、あなた、ああいうの好みなの?」
「あっ、えっと、かっこいいとは思います、純粋に、ハイ」
「……あなた、わかりやすいわね」
「え、何がですか」
べ、別に、西先生が好きだとか思ってもないし、そもそもどんな人なのかも知らないし、いったい何がわかったんだろう? 西園寺先生に見つめられると、脳内が丸裸にされてるみたいで落ち着かない。今は妄想だってしてなかったし、顔に出るものは何もないはず……!
西園寺先生はにやりと笑った。
「あら、自分で気づいてないの? まあいいわ、別に。そろそろ行くわよ、藍原さん」
さっと立ち上がる西園寺先生にあわててついていく。西園寺先生は、西先生のテーブルの横で立ち止まった。
「お久しぶり、西」
西先生が顔をあげる。
「ああ、西園寺か。おまえも学会か?」
「そう、この子の付き添い。藍原先生」
「あ、藍原です」
頭を下げつつ、西先生の向かいにいる女性をチラ見する。……歳は30代中盤くらいかな、黒い髪をストレートに伸ばした、清楚系美人。西園寺先生を若くして、毒と性欲を抜いたら、こんな感じかな。
西園寺先生が、西先生の肩にさりげなく手を置く。
「そちらのお嬢さんと、お泊まり?」
西先生が声を出して笑った。
「はは、違うよ、泊まるのは俺だけ。医局費で学会に来て女と泊まったらまずいだろう」
うわ、今、なぜだかドキッとした。西先生が笑ったのも初めて見たし、何より、西先生の口から女性の話が出るのが、すごく意外で、何か……何だろう……西園寺先生が落としたかったの、わかる気がしちゃった。いや、そもそもあたしだって、西先生であれやこれや妄想済みだし……そう、あのクールな雰囲気と、筋肉美が、とにかく妄想欲を掻き立てるのよね……!
部屋に戻ったあとも、西先生とあの清楚系美人のことが気になって仕方がない。……やっぱり、彼女なのかな? あのソフトマッチョな胸に抱かれて……きれいな顔を歪ませて、喘ぐのかな……。『ここがいいんだろう、花子?』『あっ、ダメよ……克彦さん……』『いいじゃないか、乱れる君が見たい……』『ああ、そこはダメ……ッ、お、お願い……!』『ダメじゃないだろう? 君のここは、早く俺が欲しいといっている。悪い子だね、清純そうな顔をしてダメといいながら、下の口は俺を誘ってこんなにも蜜を溢れさせている……ほら、聞こえるだろう?』『あああっ、か、克彦さん……っ、そんな、だめ、お、おかしくなっちゃう……!』『そう、そうやって、乱れて俺を求めてみろ。その美しい顔を快楽で歪ませて、いやらしい唇で、何が欲しいのかいってみろ……!』『んああっ、あっ、だめ、も、お願い、克彦さん……か、克彦さんが……ほしいの……っ!』『……ふっ、いやらしい女だ……。おまえが欲しいのは、これか……!?』『ああああっ、そう、そうよっ、ああ、すごく熱くて、大きくて……っ、克彦さんっ、もっと……もっと突いて。激しく突いて……!』『ふふ、おまえの下の口が、俺を咥え込んでヒクヒクと喜んでいるぞ。おとなしい顔をしたこの淫乱め!』『ああっ、いいっ、もっと!! 克彦さん!』『くっ……花子……ッ! なんて締まりだ……おまえってやつは……最高に美しく、いやらしいメス犬だっっ!』『克彦さん!』『花子ッ!』『克彦さんっ!!』『花子ッッ!!』……とかって、もう、激しく乱れちゃうのかな!? うひゃあ、ドキドキしちゃう。
ああ、いけないわ、明日は朝から口頭発表なのよ! 早く寝ないと! ……それにしても。やっぱり、無口な男は想像力を掻き立てるわよね……。ギャップ萌えで魅力3割増しってとこかしら。……西園寺先生、博多くんだりで西先生にリベンジマッチ仕掛けないといいけど……。
博多といえば、ラーメン! 今夜はラーメンを食べるわよっ! ……と、意気込んでいたのに。
「藍原さん、42階のフレンチ、行くわよ」
西園寺先生に、無理やりホテルの展望レストランへ連れていかれた。とほほ。
「先生、こういうときはやっぱり市内に繰り出して屋台ラーメンじゃないんですか?」
「何いってるの。ラーメンなんて食べたらニンニク臭くなるでしょ!」
「別にいいじゃないですか、誰に迷惑かけるでもなし」
「ニンニク臭かったら、誰もキスしてくれないわよ」
「……先生、誰かとキスする予定あるんですか」
うそ、学会で男を連れ込むって、本気だったんだ? うーん、ついていけない……。
仕方ない、上司命令なので一緒にフレンチを食べる。西園寺先生は和風美人だし、背も高くてスタイルがいいから、スーツなんて着てホテルを歩いてたりしたら、けっこう人目を引く。……ひょっとしたら、フレンチレストランでも、連れ込めそうな男の人を物色してるのかもしれない。そんなことを思いながらあたりを見回すと……。あれ、あの男の人、見覚えあるぞ。確か、外科の……。
「……あれ、西先生ですよね?」
ふたつ隣のテーブルに座ってる。 女性同伴だけど、誰だろう? 病院では見かけたことのない顔だけど……。
「そうね。西、循環器外科だから、今回の学会に来てるんじゃない?」
そうか、心不全学会だもんね。いても不思議ではない。……て、あれ、西、って呼び捨て?
「先生、知り合いですか? 後輩?」
「ん、大学の同期」
「えっ、そうだったんですか!」
「そう。……何あのカタブツ、あたしとはヤらなかったくせに、あんなきれいな子と食事なんかしちゃって」
「え?」
ちょっと、気になるワードがありましたけど。
「学生時代、あたしが誘って落ちなかった男はあいつだけよ。まったく、思い出してもムカムカするわ」
西先生、寡黙であまり笑わない印象だけど、イメージどおり真面目なのね。なぜだか、ちょっとうれしい。
「見てよあの上半身。スーツ着てるとわかりにくいけど、筋肉のつき方が、最高なのよ。主張しすぎず、でも腹筋割れ間違いなし。卒業してから20年近く経ってるのに変わらないあの体型、あっぱれだわ」
「やっぱりそうですよね!? あの筋肉、絶妙ですよね。前に一度だけ、オペ着で歩いてるとこ見たんです。白衣のときは気づかなかったけど、半袖になると、腕の太さも、胸板も、最高で――」
……はっ! やばい、うっかり同志を得たとばかりに筋肉ネタに食いついちゃったわ! 案の定、西園寺先生の目が光る。
「……藍原さん、あなた、ああいうの好みなの?」
「あっ、えっと、かっこいいとは思います、純粋に、ハイ」
「……あなた、わかりやすいわね」
「え、何がですか」
べ、別に、西先生が好きだとか思ってもないし、そもそもどんな人なのかも知らないし、いったい何がわかったんだろう? 西園寺先生に見つめられると、脳内が丸裸にされてるみたいで落ち着かない。今は妄想だってしてなかったし、顔に出るものは何もないはず……!
西園寺先生はにやりと笑った。
「あら、自分で気づいてないの? まあいいわ、別に。そろそろ行くわよ、藍原さん」
さっと立ち上がる西園寺先生にあわててついていく。西園寺先生は、西先生のテーブルの横で立ち止まった。
「お久しぶり、西」
西先生が顔をあげる。
「ああ、西園寺か。おまえも学会か?」
「そう、この子の付き添い。藍原先生」
「あ、藍原です」
頭を下げつつ、西先生の向かいにいる女性をチラ見する。……歳は30代中盤くらいかな、黒い髪をストレートに伸ばした、清楚系美人。西園寺先生を若くして、毒と性欲を抜いたら、こんな感じかな。
西園寺先生が、西先生の肩にさりげなく手を置く。
「そちらのお嬢さんと、お泊まり?」
西先生が声を出して笑った。
「はは、違うよ、泊まるのは俺だけ。医局費で学会に来て女と泊まったらまずいだろう」
うわ、今、なぜだかドキッとした。西先生が笑ったのも初めて見たし、何より、西先生の口から女性の話が出るのが、すごく意外で、何か……何だろう……西園寺先生が落としたかったの、わかる気がしちゃった。いや、そもそもあたしだって、西先生であれやこれや妄想済みだし……そう、あのクールな雰囲気と、筋肉美が、とにかく妄想欲を掻き立てるのよね……!
部屋に戻ったあとも、西先生とあの清楚系美人のことが気になって仕方がない。……やっぱり、彼女なのかな? あのソフトマッチョな胸に抱かれて……きれいな顔を歪ませて、喘ぐのかな……。『ここがいいんだろう、花子?』『あっ、ダメよ……克彦さん……』『いいじゃないか、乱れる君が見たい……』『ああ、そこはダメ……ッ、お、お願い……!』『ダメじゃないだろう? 君のここは、早く俺が欲しいといっている。悪い子だね、清純そうな顔をしてダメといいながら、下の口は俺を誘ってこんなにも蜜を溢れさせている……ほら、聞こえるだろう?』『あああっ、か、克彦さん……っ、そんな、だめ、お、おかしくなっちゃう……!』『そう、そうやって、乱れて俺を求めてみろ。その美しい顔を快楽で歪ませて、いやらしい唇で、何が欲しいのかいってみろ……!』『んああっ、あっ、だめ、も、お願い、克彦さん……か、克彦さんが……ほしいの……っ!』『……ふっ、いやらしい女だ……。おまえが欲しいのは、これか……!?』『ああああっ、そう、そうよっ、ああ、すごく熱くて、大きくて……っ、克彦さんっ、もっと……もっと突いて。激しく突いて……!』『ふふ、おまえの下の口が、俺を咥え込んでヒクヒクと喜んでいるぞ。おとなしい顔をしたこの淫乱め!』『ああっ、いいっ、もっと!! 克彦さん!』『くっ……花子……ッ! なんて締まりだ……おまえってやつは……最高に美しく、いやらしいメス犬だっっ!』『克彦さん!』『花子ッ!』『克彦さんっ!!』『花子ッッ!!』……とかって、もう、激しく乱れちゃうのかな!? うひゃあ、ドキドキしちゃう。
ああ、いけないわ、明日は朝から口頭発表なのよ! 早く寝ないと! ……それにしても。やっぱり、無口な男は想像力を掻き立てるわよね……。ギャップ萌えで魅力3割増しってとこかしら。……西園寺先生、博多くんだりで西先生にリベンジマッチ仕掛けないといいけど……。
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