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08-4. 笑顔で食事を共にできる相手 4
「先程も言ったが、これは大変美味しい食品だ。安心してくれ、俺の味覚は人間とほぼ同じだ」
そう前置きを言ったのち、オークはおもむろに食レポを始めた。
「ユキナのこの食品は、柔らかく舌触りの良い生地で固められているため、上等な菓子のようだな。老若男女、誰が食べても気に入るのではないかと思う。三種類の味のうち、林檎と、初めて食べるバナナ?という果実の入ったものは、ほどよい甘さが心地よかったし、食べ終わるのが残念なくらいだった。次に食べたアーモンドは、非常に香ばしく魅力的な味わいだったし、このチョコ味については、濃厚な甘さにめまいすら覚えるほどで、この世にこんなうまいものがあったのかと、驚くほどだ」
ユキナは望んでいた答えを得たことはもちろんのこと、オークに気に入ってもらえたのが嬉しくて、うんうんと頷きながら追加を取り出してオークの前に置いた。そしてハッとして顔を曇らせる。食品を扱う者として、いつも気にかけていた重要な事柄を。
「あの、すみません、再確認するの忘れてました。アレルギーとか、大丈夫ですかね? 今まで何か食べて、体調不良とかになったことは……」
「いや、腹を壊したり不調になったことは一度もないな。俺はすこぶる丈夫な性質でな。しかも俺の鑑定魔法は高レベルで、毒成分などについても警告表示してくれる。しかし先程の鑑定結果では、そのような表示はなかった。だから何も心配は要らない。すまん、最初に言っておくべきだった」
ユキナはホッとして、「じゃあ、他の味も試してみます?」と別の味を取り出そうとしたが、オークがそれを制した。
「ユキナ、俺への恩義を感じて、無理をしているのではないか? アーモンドという木の実は、王侯貴族しか食べられぬ高級品。チョコ味の原料は、カカオという稀少(きしょう)な種子だろう? 一部の裕福な暮らしをする人間だけが贅沢(ぜいたく)な飲み物として味わうことが許されると、聞いたことがある。もちろん、俺も口にしたのは初めてだ。それらはニホンとかいうおまえの故郷でも、貴重な高級品なのでは? ハッ……もしやおまえは、実は王族か貴族だったのか?」
「いや、その……バリバリ庶民です。それらは、俺の国では一般庶民が普通に食べてます」
「なんと! おまえの故郷は、それほどに豊かな国なのか。身に着けている服も、並の仕立てとは思えんし……」
「いや、これ実は、吊るしの安物です。俺、貧乏人なんで……」
「その精巧な仕立物が、安物? にわかには信じられんが……」
「とにかく、あの、遠慮はいりません。その、詳しく話せませんが、在庫が尽きることは、多分、ないので……。いや……待て……そういえば……」
ユキナは思い出した。コピースキルの使用は気力を消費する、ということに。もし回復スピードが遅ければ量産は難しいということになるし、考えている商売にも難が出る。
ユキナはさっそくステータスを表示して、残り3になっていた気力がどの程度回復しているか調べてみたところ――。
「あ! 全回復してる、やった! 結構、すぐ回復するんですね、気力って」
「回復速度は状況によるが……。ああ、いや、これにはなんと、素晴らしい付随効果が……」
オークは栄養食品を見ながら何か言いかけていたが、ハッと顔を上げて、窓の外に視線を移した。
「誰か来る。恐らくチサ村長と思われる。あと十分ほどでこの小屋に着くだろう。彼女は森のそばにあるレザン村の、村長だ。賢く温情に満ちた人物で、この木こり小屋も彼女が村人を説得してくれたおかげで、借りることができた。チサ村長にユキナを紹介してもいいか?」
「あ、はい、よろしくお願いします」
素直にそう答えたユキナは、オークが何か考え込んでいるのを感じ、不安げに尋ねた。
「あ、あの……もしかして余所者(よそもの)である俺の存在、オークさんのご迷惑じゃ……」
「ああ、いや、迷惑ではない。それを言うなら俺の方が、おまえの不利益に繋がるのではないかと、心配していたところだ。それから……ユキナ、昨日も言ったが……ノルシャル神の会話については、一切触れない方がよいだろう。こういう場合、身元確認のためにステータスを開示することになるのだが、おまえのステータスにある『女神ノルの幸運』については、詳しく言及しない方がよい。難儀していたところ、いつの間にか授かったということにしてはどうだろうか。慈悲深いノルシャル神は、気に入った人間に有用なスキルを授けることがあると、言われているしな」
「そうなんですね。わかりました」
ユキナは頷くと、やや緊張して身だしなみを整えた。
そう前置きを言ったのち、オークはおもむろに食レポを始めた。
「ユキナのこの食品は、柔らかく舌触りの良い生地で固められているため、上等な菓子のようだな。老若男女、誰が食べても気に入るのではないかと思う。三種類の味のうち、林檎と、初めて食べるバナナ?という果実の入ったものは、ほどよい甘さが心地よかったし、食べ終わるのが残念なくらいだった。次に食べたアーモンドは、非常に香ばしく魅力的な味わいだったし、このチョコ味については、濃厚な甘さにめまいすら覚えるほどで、この世にこんなうまいものがあったのかと、驚くほどだ」
ユキナは望んでいた答えを得たことはもちろんのこと、オークに気に入ってもらえたのが嬉しくて、うんうんと頷きながら追加を取り出してオークの前に置いた。そしてハッとして顔を曇らせる。食品を扱う者として、いつも気にかけていた重要な事柄を。
「あの、すみません、再確認するの忘れてました。アレルギーとか、大丈夫ですかね? 今まで何か食べて、体調不良とかになったことは……」
「いや、腹を壊したり不調になったことは一度もないな。俺はすこぶる丈夫な性質でな。しかも俺の鑑定魔法は高レベルで、毒成分などについても警告表示してくれる。しかし先程の鑑定結果では、そのような表示はなかった。だから何も心配は要らない。すまん、最初に言っておくべきだった」
ユキナはホッとして、「じゃあ、他の味も試してみます?」と別の味を取り出そうとしたが、オークがそれを制した。
「ユキナ、俺への恩義を感じて、無理をしているのではないか? アーモンドという木の実は、王侯貴族しか食べられぬ高級品。チョコ味の原料は、カカオという稀少(きしょう)な種子だろう? 一部の裕福な暮らしをする人間だけが贅沢(ぜいたく)な飲み物として味わうことが許されると、聞いたことがある。もちろん、俺も口にしたのは初めてだ。それらはニホンとかいうおまえの故郷でも、貴重な高級品なのでは? ハッ……もしやおまえは、実は王族か貴族だったのか?」
「いや、その……バリバリ庶民です。それらは、俺の国では一般庶民が普通に食べてます」
「なんと! おまえの故郷は、それほどに豊かな国なのか。身に着けている服も、並の仕立てとは思えんし……」
「いや、これ実は、吊るしの安物です。俺、貧乏人なんで……」
「その精巧な仕立物が、安物? にわかには信じられんが……」
「とにかく、あの、遠慮はいりません。その、詳しく話せませんが、在庫が尽きることは、多分、ないので……。いや……待て……そういえば……」
ユキナは思い出した。コピースキルの使用は気力を消費する、ということに。もし回復スピードが遅ければ量産は難しいということになるし、考えている商売にも難が出る。
ユキナはさっそくステータスを表示して、残り3になっていた気力がどの程度回復しているか調べてみたところ――。
「あ! 全回復してる、やった! 結構、すぐ回復するんですね、気力って」
「回復速度は状況によるが……。ああ、いや、これにはなんと、素晴らしい付随効果が……」
オークは栄養食品を見ながら何か言いかけていたが、ハッと顔を上げて、窓の外に視線を移した。
「誰か来る。恐らくチサ村長と思われる。あと十分ほどでこの小屋に着くだろう。彼女は森のそばにあるレザン村の、村長だ。賢く温情に満ちた人物で、この木こり小屋も彼女が村人を説得してくれたおかげで、借りることができた。チサ村長にユキナを紹介してもいいか?」
「あ、はい、よろしくお願いします」
素直にそう答えたユキナは、オークが何か考え込んでいるのを感じ、不安げに尋ねた。
「あ、あの……もしかして余所者(よそもの)である俺の存在、オークさんのご迷惑じゃ……」
「ああ、いや、迷惑ではない。それを言うなら俺の方が、おまえの不利益に繋がるのではないかと、心配していたところだ。それから……ユキナ、昨日も言ったが……ノルシャル神の会話については、一切触れない方がよいだろう。こういう場合、身元確認のためにステータスを開示することになるのだが、おまえのステータスにある『女神ノルの幸運』については、詳しく言及しない方がよい。難儀していたところ、いつの間にか授かったということにしてはどうだろうか。慈悲深いノルシャル神は、気に入った人間に有用なスキルを授けることがあると、言われているしな」
「そうなんですね。わかりました」
ユキナは頷くと、やや緊張して身だしなみを整えた。
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