幻想彼氏

たいよう一花

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Act 1

33. 真也の欲望と本音

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そっと真也のモノに触れている皓一の手を取り、引き寄せて胸元で包み込みながら、真也は微笑んで言った。

「皓一……いいんだよ、おまえが満足なら、俺もそれでいい」

「そんなこと、ないだろう、真也? 俺……自分が淡泊な方だからって、今までちゃんと、おまえと向き合ってこなかった気がする……。ごめんな、真也。今までの俺を許してくれるなら、ちゃんと言ってくれ……どうしたいのか」

「……俺はな、皓一……実をいうと……」

ごくりと、皓一の喉が鳴る。真剣そのものという恋人の目を見つめ返し、恋人の告白を待った。いつの間にか、覚悟はできていた。真也が望むなら、バックバージンを彼に捧げてもいいと、皓一は決心していたのだ。しかし真也の返答は、皓一の予想を超えていた。

「皓一、俺は、変態、なんだ」

「…………はぁっ?!」

「俺は、変態なんだよ……。皓一、おまえがイッてる顔を見ただけで、美味しいんだ。おまえが絶頂すれば、俺も気持ちいいんだ。あれだ、最高のシンクロ率というやつだ。だからおまえは、何も気にせず俺の愛撫でイキまくればいい。今までと、同じように……」

「ちょっと……待てよ。じゃあ、この間おまえが言っていたあれは……あの言葉の意味は、何だったんだ? おまえ、『俺を受け入れて、一つになってくれ』って、俺に言ったよな? 思わず口をついて出た本音って感じだった。なあ真也、はぐらかしたりしないでくれ。それがどういう意味なのか、本当はおまえがどうしたいのか、俺はちゃんと知りたいんだ」

「やめておけ……。知れば、引き返せなくなる」

「どういう意味だよ?!」

「俺は変態だ、と言っただろう……。俺の性癖を知れば、おまえはきっとドン引きして、俺を、嫌いになる……。そんなことになれば、俺は耐えられない。だから、今のままでいいんだ」

「おい、おいおいおいおい、何だよそれ、5年も付き合ってるのに、そうくるか?! 俺がドン引きするとか、見くびるなよ! 俺を、全然信じてないってことだよな?! ひどいだろおまえ! どうしたいのか言えよ! おまえに我慢させて自分だけ気持ちいいとか、俺は嫌だよ、そんなの!」

真也は目をそらして考え込んでいたが、やがて大きな深呼吸を一つすると、口を開いた。

「………………おまえを」

「うん」

「おまえの手足を、縛りたい」

「!」

「目隠しもしたい」

「!」

「ほら……ドン引きだろ? 安心しろ、何もしない。おまえの嫌がることは、しない。痛いことも苦しいこともしない」

「…………。し、縛るって、どの程度? い、痛くないなら……ちょっとくらいなら、そ、そういうプレイに付き合っても…………いいぞ?」

「…………いや……やめておく。歯止めが、利かなくなりそうだからな」

「……おまえ、ズルいぞ……」

「そうだな、俺はズルい。ひとたび打ち明けてしまえば、おまえは優しいから、俺に気を遣って俺の望みを叶えようとするだろう。それを分かっていて教えた俺は、本当にズルい男だ」

「そこじゃない。おまえ、またはぐらかした。『俺を受け入れて、一つになってくれ』って、言った、おまえのあの言葉の本当の意味を、俺は知りたいと言ったんだ」

真剣な皓一の目を見て、真也は諦めたように白状した。

「皓一、俺は、おまえと番(つがい)になりたい」

「つ、番……?!」

「互いだけを愛する一対のことだ。俺はおまえと、お互いに生涯ただ一人の相手として、結ばれたい。心身ともに繋がって、おまえを独占したいんだ。おまえの中に俺を刻み込んで、匂いをこすりつけ、皓一は俺のものだから誰も手を出すな、と宣言したい」

まだ分からない、という顔をしている皓一に、真也は言った。

「おまえの腹に、俺の性器をぶち込んで、子種を注ぎたい」

「!!」
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