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休息と仕事
【昼】新人さん
しおりを挟む「今日から二人、新しくウチで働くことになった。モエとウミだ。みんな、よろしくな」
今日のシフトが終わって、仕事から上がる時、ラストのメンバーは店長から二人の男の子を紹介された。
「……よろしくお願いします」
モエ、と呼ばれた男の子は、眼鏡をかけていて華奢な身体付きだった。
僕達に華奢、などと言う言葉は変かもしれないが、それがピッタリに思える。
栗色でサラサラした髪の毛に、色は白く、喋り方も『優等生的』といった感じた。黒板と教科書や、実験器具に白衣が似合いそうである。少し影がありそうな、真面目な男の子に見える。
左の二の腕を、右腕で掴んでいた。緊張しているのだろうか。心なしか、表情も固く小さく震えているようにも見える。初めての場所、みんなこうなるだろう。
「よ、よろしくお願いします!」
ウミ、と呼ばれた男の子は、日に焼けていて健康的だ。短髪がよく似合う。
モエと比べると、『外で元気に遊ぶ男の子』といったイメージが見受けられた。少々小柄だが、こそから成長したら逞しい男性になるかもしれない。
ワタワタしているように見えるのは、それも初めての場所だからだろうか。言葉を発した後に、まるでロボットのように九十度腰から頭を下げ、戻る姿にも、緊張の色が見られた。
「よろしくお願いします! 僕の名前はアヤです!」
緊張する二人に、笑顔で応えた。他のみんなも、挨拶をする。
しかし、もうお店も終わって、片付けも完了している。まさかこの段階で、紹介されるとは思っていなかった。
それに、店長は『今日から』と言っていた。
「昼はもう終わったからな。二人には、この後の夜のシフトに入って貰う。誰も知らないより、顔を知っている人間を少しでも作っておいた方が良いと思ってな」
『夜のシフト』と言う言葉に、二人がピクッと反応する。恐らく、それが何を意味するのかもう知っているのだろう。
「二人一度は珍しいからな。それに、タイプが全く異なる二人とは。前々から大々的に客には宣伝はしてあるし、今日は入りも多いだろう。アヤ、悪いがこの後黒服を頼む。その代わり、明日は休んでくれ」
「分かりました」
キャストが黒服をすることは少ない。だが、今回のように客の入りが見込める場合は手が回らず、僕達が手伝うこともあった。
基本的には、ドリンクやフードの給仕。……あとは、正直、あまりやりたくない。コスプレ服やオモチャの貸与、個室への案内など、プレイに関する内容は、本来の黒服が行う。
「俺はコイツらに説明をして準備をさせる。アヤも、経験したことないだろう? 見ておけ」
「……はい」
今日の夜行われるのは、二人の【歓迎会】だ。
僕はやった記憶がない。初めての仕事は昼間のカフェだったし、だからきっと、その時にはなかったものだと思う。
「じゃあ、頼んだ。行くぞ、モエ、ウミ」
「「は、はい!」」
二人は声を揃えて返事した。そして、店長の後について店を後にする。
「……いってらっしゃい。また、後で」
僕は小さく呟くと、黒服の仕事をすべく、着替えへと向かった。
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