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出会い編
第6話 エルフの風水師
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「私は風水師のコウ。水でも風でも光でも、周囲の環境は何でも読み取れる」
「いや、いくら風水師でもそんな話は聞いたことが無いですぞ」
そうグレゴリーは言った。
彼女が嘘を言っているようにも見えないのでクニオは冷静に返した。
「地中温度は通常その土地の平均気温と同じくらいです。このあたりの緯度だと16か7度ぐらいでしょうか。100m深くなるごとに2~3度程度上がっていくので、深さ1000mだと水温は45度前後ではないでしょうか。温泉としては丁度いいぐらいかもしれないですね」
「なんでそんなこと知ってるの?温泉研究家?」
コウはクニオの方を見てそう尋ねた。
「私は建築士のクニオと言います。職業柄周辺環境の変化に関してはある程度の知識を持っています。今は冒険者をしていて、これから魔王城を見学に行くところです」
「なかなかツッコミどころ満載の自己紹介ね。大体建築士って冒険者のジョブじゃないでしょう?…ま、それはいいとして流石に1000mの深さは掘りようもないでしょう?半径1000mくらいの大穴を空ければ到達できるかもだけど、温泉としては使えなくなりそうだし。折角の源泉なのに勿体ないなと思っていたところ」とコウは言った。
「最高位の魔導士が使う土魔法でも半径1000mの穴をあける事など不可能でしょう。物理的にも1000m掘るにはどれぐらいの労力がかかることか…」
グレゴリーの言う事がこの世界では正しい。
しかしクニオはちょっと考えてから言った。
「でもグレゴリーは土魔法を使えるよね。…コウさんも1000m下の水脈を感知できるほどの魔力量をもっている…で、あれば掘れるかもしれませんよ。」
「プランニングですな」
グレゴリーは言った。
「ちょっとお二人の肩に手をのせさせていただきます」
グレゴリーは慣れたものでどうぞと肩を差し出すが、コウは怪訝そうな顔でクニオを見ている。しかし敵意と他意は無さそうだと肩をクニオの方へ向けた。二人の身長差はなかなかのもので、二人の肩に手をのせたクニオはどこかの彫刻作品の様なポーズになった。
「コウさん、水脈を感知してみてください。グレゴリーはコウさんの魔力も使って土魔法をお願いします。半径1000mは必要ないです。太すぎると自噴しないかもしれないので穴の径はこぶし程度で行きます。大きさと方角の細かいコントロールは、コウさんの感知をもとに私の方で組み上げます。また、あけた穴が塞がらないように、地中の石灰成分と水分を使って硬化させます」
コウは半信半疑ながら言われるままに水脈を感知し、隠ぺいすることなく魔力を開放した。その魔力量が莫大なものであろうことは、感知能力のないクニオにもわかった。ただ、プランニングはスキルや魔力の組み合わせを計画をするだけなので絶対量はあまり関係ない。グレゴリーが土魔法を放って程なくすると、地面に空いた穴からは温泉が噴き出してきた。
「いい温度ですね。ちょっと熱いかな?ついでにお湯を貯める浴槽も作ってしまいましょう。それはグレゴリーと私の二人でできると思います」
そういってクニオは先ほどの地中に掘った穴を固めたのと同じ理屈で、グレゴリーの土魔法で湯だまりの為の穴を設け、穴の露出面を硬質化した。
「面白いスキルね。初めて見た」
コウは驚くというよりは、何か喜んでいる感じだ。
温泉は段々と溜まり始めたが、程なくして周囲に地鳴りが響き渡った。
「ワームが来たみたいね。昔ここが温泉村だった時は魔物が近づいてこなかったけど、多分泉質に魔物が嫌がる何かしらの成分が含まれているんでしょう。潰してしまおうという事かもしれないけども、折角掘ったものにそんなことはさせない」
そういってコウは風を呼び体を浮かせると、地中を移動して近づいて来るワームの上に高速で移動した。ワームが移動したであろうその跡は地表に小山となって表れている。ちょっと冗談の様な大きさだ。移動が止まったと思った次の瞬間、突然にワームが地中から飛び出してきた。やはり物凄い大きさだ。この大きさであれば数回往復しただけで小さな町など消し飛んでしまうだろう。それが縦方向に体の全てを現すぐらいの高さまで地上に飛び出したのだ。まるで大きな塔が空中に浮いているようだ。
コウは両手を広げ、空気を呼び込む。彼女の周辺には円形の歪んだ空間がいくつも現れた。
とてつもない数と大きさだ。
「こんな魔力量は見たことが無い」
グレゴリーはそう呟いてコウの姿を凝視している。クニオには他者の魔力量を推し量ることはできないが、先ほどの土魔法を助けてもらった魔力量の比ではないのだろう。グレゴリーの表情がその桁違いの力を物語っていた。
空気の密度を圧縮しているのか、逆に真空にしているのかそれとも両方なのか。コウのまわりのその円盤は彼女の手の動きに従い、地面から飛び出たワームに四方八方から襲い掛かった。あれほど巨大であったワームはナマコの様に縦横無尽にスライスされ、更には細かい肉片になって血とともに地上に降り注ぐ。と、地上に落ちる前に地面付近にあった大きなレンズ状の空気の塊がそれを受け止める。空気の塊に触れたとたん、肉片は内側に吸い込まれていく。あらかたの肉片が吸い込まれたところで、空気の塊は収縮し小さな球状になって遥か彼方に飛んで行った。
「これは風水師の所業ではないだろう…」
グレゴリーが呟いた。
グレゴリーとクニオの前に舞い戻ったコウの手にはワームの肉片があった。
「折角の温泉が血で汚れたら興ざめだからね。あとこいつの肉は焼いて食うと結構いけるんだよ。ひとっぷろ浴びたらこいつを肴に一杯やろう」
この金髪のエルフは見た目に合わずにおっさんの様な事を言うなと二人は思ったが、怒らせるとまずそうなので口に出すのをやめておいた。
「いや、いくら風水師でもそんな話は聞いたことが無いですぞ」
そうグレゴリーは言った。
彼女が嘘を言っているようにも見えないのでクニオは冷静に返した。
「地中温度は通常その土地の平均気温と同じくらいです。このあたりの緯度だと16か7度ぐらいでしょうか。100m深くなるごとに2~3度程度上がっていくので、深さ1000mだと水温は45度前後ではないでしょうか。温泉としては丁度いいぐらいかもしれないですね」
「なんでそんなこと知ってるの?温泉研究家?」
コウはクニオの方を見てそう尋ねた。
「私は建築士のクニオと言います。職業柄周辺環境の変化に関してはある程度の知識を持っています。今は冒険者をしていて、これから魔王城を見学に行くところです」
「なかなかツッコミどころ満載の自己紹介ね。大体建築士って冒険者のジョブじゃないでしょう?…ま、それはいいとして流石に1000mの深さは掘りようもないでしょう?半径1000mくらいの大穴を空ければ到達できるかもだけど、温泉としては使えなくなりそうだし。折角の源泉なのに勿体ないなと思っていたところ」とコウは言った。
「最高位の魔導士が使う土魔法でも半径1000mの穴をあける事など不可能でしょう。物理的にも1000m掘るにはどれぐらいの労力がかかることか…」
グレゴリーの言う事がこの世界では正しい。
しかしクニオはちょっと考えてから言った。
「でもグレゴリーは土魔法を使えるよね。…コウさんも1000m下の水脈を感知できるほどの魔力量をもっている…で、あれば掘れるかもしれませんよ。」
「プランニングですな」
グレゴリーは言った。
「ちょっとお二人の肩に手をのせさせていただきます」
グレゴリーは慣れたものでどうぞと肩を差し出すが、コウは怪訝そうな顔でクニオを見ている。しかし敵意と他意は無さそうだと肩をクニオの方へ向けた。二人の身長差はなかなかのもので、二人の肩に手をのせたクニオはどこかの彫刻作品の様なポーズになった。
「コウさん、水脈を感知してみてください。グレゴリーはコウさんの魔力も使って土魔法をお願いします。半径1000mは必要ないです。太すぎると自噴しないかもしれないので穴の径はこぶし程度で行きます。大きさと方角の細かいコントロールは、コウさんの感知をもとに私の方で組み上げます。また、あけた穴が塞がらないように、地中の石灰成分と水分を使って硬化させます」
コウは半信半疑ながら言われるままに水脈を感知し、隠ぺいすることなく魔力を開放した。その魔力量が莫大なものであろうことは、感知能力のないクニオにもわかった。ただ、プランニングはスキルや魔力の組み合わせを計画をするだけなので絶対量はあまり関係ない。グレゴリーが土魔法を放って程なくすると、地面に空いた穴からは温泉が噴き出してきた。
「いい温度ですね。ちょっと熱いかな?ついでにお湯を貯める浴槽も作ってしまいましょう。それはグレゴリーと私の二人でできると思います」
そういってクニオは先ほどの地中に掘った穴を固めたのと同じ理屈で、グレゴリーの土魔法で湯だまりの為の穴を設け、穴の露出面を硬質化した。
「面白いスキルね。初めて見た」
コウは驚くというよりは、何か喜んでいる感じだ。
温泉は段々と溜まり始めたが、程なくして周囲に地鳴りが響き渡った。
「ワームが来たみたいね。昔ここが温泉村だった時は魔物が近づいてこなかったけど、多分泉質に魔物が嫌がる何かしらの成分が含まれているんでしょう。潰してしまおうという事かもしれないけども、折角掘ったものにそんなことはさせない」
そういってコウは風を呼び体を浮かせると、地中を移動して近づいて来るワームの上に高速で移動した。ワームが移動したであろうその跡は地表に小山となって表れている。ちょっと冗談の様な大きさだ。移動が止まったと思った次の瞬間、突然にワームが地中から飛び出してきた。やはり物凄い大きさだ。この大きさであれば数回往復しただけで小さな町など消し飛んでしまうだろう。それが縦方向に体の全てを現すぐらいの高さまで地上に飛び出したのだ。まるで大きな塔が空中に浮いているようだ。
コウは両手を広げ、空気を呼び込む。彼女の周辺には円形の歪んだ空間がいくつも現れた。
とてつもない数と大きさだ。
「こんな魔力量は見たことが無い」
グレゴリーはそう呟いてコウの姿を凝視している。クニオには他者の魔力量を推し量ることはできないが、先ほどの土魔法を助けてもらった魔力量の比ではないのだろう。グレゴリーの表情がその桁違いの力を物語っていた。
空気の密度を圧縮しているのか、逆に真空にしているのかそれとも両方なのか。コウのまわりのその円盤は彼女の手の動きに従い、地面から飛び出たワームに四方八方から襲い掛かった。あれほど巨大であったワームはナマコの様に縦横無尽にスライスされ、更には細かい肉片になって血とともに地上に降り注ぐ。と、地上に落ちる前に地面付近にあった大きなレンズ状の空気の塊がそれを受け止める。空気の塊に触れたとたん、肉片は内側に吸い込まれていく。あらかたの肉片が吸い込まれたところで、空気の塊は収縮し小さな球状になって遥か彼方に飛んで行った。
「これは風水師の所業ではないだろう…」
グレゴリーが呟いた。
グレゴリーとクニオの前に舞い戻ったコウの手にはワームの肉片があった。
「折角の温泉が血で汚れたら興ざめだからね。あとこいつの肉は焼いて食うと結構いけるんだよ。ひとっぷろ浴びたらこいつを肴に一杯やろう」
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