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ハポンの都編
第32話 ギューズ対ユキヒラ
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「もういい。下がれ。使えない奴らだ」
そう言って、先ほどの首領二人が前に出てきた。
先ほどの背の高い方ではなく、やや小太りのもう一人の方が声をあげる。
「俺の名はギューズ。剣士をやっている。お前らなかなかいい刀を持っているな。それを置いていけば見逃してやってもいいぞ」
なにか先ほどの金品全てに比べて、要求が下がっているような感じがするがユキヒラがそれに同意するはずもない。
「逆だな。俺がお前に勝ったらその刀をもらっていく」
ユキヒラは橋の上でキュリオシティーズと対峙した時と同じことを言っている。それを聞いてギューズは鞘から刀を抜くと、鞘を後ろの集団に投げた。
「まずは一太刀!」
そういってギューズはユキヒラの方へ小走りで進むと、上段に振り被って切りかかった。ユキヒラは魔切丸でこれを受ける。金属のぶつかり合う高い音が辺りにこだまする。ギューズの刀は先ほどの若者たちのなまくら刀とは違い、折れることも刃こぼれすることも無かった。
二人は重ねた刀を共にひいて、数歩下がって距離をおく。そこからは間合いの取り合いだ。数秒の後今度はユキヒラから仕掛ける。鋭い剣戟が二度三度とギューズを襲う。しかしそれはことごとくギューズに刀で受けられてしまった。ユキヒラの攻撃が一息ついたところでギューズが反撃に転じる。今度はユキヒラは刀で受けることは無く、体を動かしてかわしながら後ろに下がった。そうして二人は構えをとって向き合い、また間合いの取り合いになった。
「なかなやるな。剣技で俺と互角に戦うとは大したものだ」
そういってギューズはにやにやとしている。
一方それを離れた所で、コウとクニオ、コルビーの三人は眺めていた。
「あの盗賊はありゃ冒険者だな。しかしユキヒラもなかなか強い。クニオはよくあいつに勝てたな」
コウは気が付いていないが、クニオはコルビーの助けが無ければ負けていた。少々小ずるく勝ったのでここは苦笑いするしかない。
「でも相手は戦闘に特化しているから勝つのは難しいだろうな」
そうコウは続けた。
「今のところ互角に戦っているように見えるけども、なんで勝つのが難しいんだい?」
クニオはコウに聞いて見た。
「純粋に剣だけで戦う冒険者なんていないだろう?」
言われてみればその通りだ。クニオですらあの手この手で勝ちに行く事が多い。あの盗賊の首領が仮に冒険者だとすれば、鍛冶職のユキヒラには剣技以外のところで色々と不利な事もありそうだ。
ギューズはユキヒラと対峙したまま、口で何かをブツブツと唱え始めた。それを隙と捉えてユキヒラはギューズに突きに近い形で切りかかる。ギューズは避けるそぶりを見せず、逆に攻撃を返してきた。そうして二人は相打ちとなった。深くはないものの共に脇腹に傷を負った。しかし次の瞬間ギューズの傷は見る見るうちに塞がっていく。一方ユキヒラは切られた傷口から、服に赤い染みが広がっていった。
「自動回復魔法というやつだな」
ユキヒラは傷口を手で押さえながら、回復魔法を唱える。
「おっと、そうはさせないぜ」
ギューズはユキヒラが呪文詠唱を終える前に、また切りかかってきた。かろうじてその攻撃は避けることができたが、呪文の詠唱は止まってしまった。もう一度ユキヒラが呪文を唱え始めると、またギューズが攻撃を仕掛けてくる。どうも最後まで詠唱できる様な時間はもらえそうにない。
「剣技では互角でも、魔法詠唱のタイミングや使い方に差が出るよね。魔法も戦闘時に使えるものを沢山持っているだろうし。ジョブスキルもあるんだろうな…」
コウの言うとおりだった。その後ユキヒラとギューズは何度も剣を交わしたが、先に負傷してしまったユキヒラの動きは当然鈍くなってしまっていた。ユキヒラが回復魔法の詠唱ができないように、うまいタイミングでギューズは攻撃を続けている。
「加勢いたそうか?」
二人の戦いを見て、グレゴリーはユキヒラに向かって言った。
「いや、お気遣いは御無用に願います」
そう言うユキヒラの目は全く死んではいない。ただ戦いの方は防戦一方で、相手の剣を避けたり受けたりはしているが、傷からの出血量が増えて、更に動きは鈍くなってきている。残された時間は長くはなさそうだ。
それでもギューズの攻撃の間隙をぬって、かろうじて距離をあけて構え直す事が出来た。しかし回復魔法を詠唱しようとすれば、ギューズはまた直ぐに襲い掛かって来るだろう。
「このまま続けたらお前は死ぬぞ。その前に刀を置いて下がるがいい。刀さえもらえればそれ以上深追いはすまい。そのあと回復魔法でもアイテムでも何でも使えばいい」
しかしギューズの言葉にユキヒラがひるむことは無かった。次の瞬間ユキヒラの刀は光り始める。
「ほう、無詠唱で付加魔法か。どうやらそれが得意だったようだな。なぜ今まで使わなかった」
そう言いながらギューズも付加魔法の呪文を唱え始める。ギューズの刀も光を帯びる。
そう言って、先ほどの首領二人が前に出てきた。
先ほどの背の高い方ではなく、やや小太りのもう一人の方が声をあげる。
「俺の名はギューズ。剣士をやっている。お前らなかなかいい刀を持っているな。それを置いていけば見逃してやってもいいぞ」
なにか先ほどの金品全てに比べて、要求が下がっているような感じがするがユキヒラがそれに同意するはずもない。
「逆だな。俺がお前に勝ったらその刀をもらっていく」
ユキヒラは橋の上でキュリオシティーズと対峙した時と同じことを言っている。それを聞いてギューズは鞘から刀を抜くと、鞘を後ろの集団に投げた。
「まずは一太刀!」
そういってギューズはユキヒラの方へ小走りで進むと、上段に振り被って切りかかった。ユキヒラは魔切丸でこれを受ける。金属のぶつかり合う高い音が辺りにこだまする。ギューズの刀は先ほどの若者たちのなまくら刀とは違い、折れることも刃こぼれすることも無かった。
二人は重ねた刀を共にひいて、数歩下がって距離をおく。そこからは間合いの取り合いだ。数秒の後今度はユキヒラから仕掛ける。鋭い剣戟が二度三度とギューズを襲う。しかしそれはことごとくギューズに刀で受けられてしまった。ユキヒラの攻撃が一息ついたところでギューズが反撃に転じる。今度はユキヒラは刀で受けることは無く、体を動かしてかわしながら後ろに下がった。そうして二人は構えをとって向き合い、また間合いの取り合いになった。
「なかなやるな。剣技で俺と互角に戦うとは大したものだ」
そういってギューズはにやにやとしている。
一方それを離れた所で、コウとクニオ、コルビーの三人は眺めていた。
「あの盗賊はありゃ冒険者だな。しかしユキヒラもなかなか強い。クニオはよくあいつに勝てたな」
コウは気が付いていないが、クニオはコルビーの助けが無ければ負けていた。少々小ずるく勝ったのでここは苦笑いするしかない。
「でも相手は戦闘に特化しているから勝つのは難しいだろうな」
そうコウは続けた。
「今のところ互角に戦っているように見えるけども、なんで勝つのが難しいんだい?」
クニオはコウに聞いて見た。
「純粋に剣だけで戦う冒険者なんていないだろう?」
言われてみればその通りだ。クニオですらあの手この手で勝ちに行く事が多い。あの盗賊の首領が仮に冒険者だとすれば、鍛冶職のユキヒラには剣技以外のところで色々と不利な事もありそうだ。
ギューズはユキヒラと対峙したまま、口で何かをブツブツと唱え始めた。それを隙と捉えてユキヒラはギューズに突きに近い形で切りかかる。ギューズは避けるそぶりを見せず、逆に攻撃を返してきた。そうして二人は相打ちとなった。深くはないものの共に脇腹に傷を負った。しかし次の瞬間ギューズの傷は見る見るうちに塞がっていく。一方ユキヒラは切られた傷口から、服に赤い染みが広がっていった。
「自動回復魔法というやつだな」
ユキヒラは傷口を手で押さえながら、回復魔法を唱える。
「おっと、そうはさせないぜ」
ギューズはユキヒラが呪文詠唱を終える前に、また切りかかってきた。かろうじてその攻撃は避けることができたが、呪文の詠唱は止まってしまった。もう一度ユキヒラが呪文を唱え始めると、またギューズが攻撃を仕掛けてくる。どうも最後まで詠唱できる様な時間はもらえそうにない。
「剣技では互角でも、魔法詠唱のタイミングや使い方に差が出るよね。魔法も戦闘時に使えるものを沢山持っているだろうし。ジョブスキルもあるんだろうな…」
コウの言うとおりだった。その後ユキヒラとギューズは何度も剣を交わしたが、先に負傷してしまったユキヒラの動きは当然鈍くなってしまっていた。ユキヒラが回復魔法の詠唱ができないように、うまいタイミングでギューズは攻撃を続けている。
「加勢いたそうか?」
二人の戦いを見て、グレゴリーはユキヒラに向かって言った。
「いや、お気遣いは御無用に願います」
そう言うユキヒラの目は全く死んではいない。ただ戦いの方は防戦一方で、相手の剣を避けたり受けたりはしているが、傷からの出血量が増えて、更に動きは鈍くなってきている。残された時間は長くはなさそうだ。
それでもギューズの攻撃の間隙をぬって、かろうじて距離をあけて構え直す事が出来た。しかし回復魔法を詠唱しようとすれば、ギューズはまた直ぐに襲い掛かって来るだろう。
「このまま続けたらお前は死ぬぞ。その前に刀を置いて下がるがいい。刀さえもらえればそれ以上深追いはすまい。そのあと回復魔法でもアイテムでも何でも使えばいい」
しかしギューズの言葉にユキヒラがひるむことは無かった。次の瞬間ユキヒラの刀は光り始める。
「ほう、無詠唱で付加魔法か。どうやらそれが得意だったようだな。なぜ今まで使わなかった」
そう言いながらギューズも付加魔法の呪文を唱え始める。ギューズの刀も光を帯びる。
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